上 下
5 / 10

はじめての異世界と妖精

しおりを挟む
「起きて。起きて。ねぇ、ねぇ、起きて。」

「愛しい子。」

「もう大丈夫だよ。」

「私たちが守ってあげるから。」

「もう誰にもあなたを否定させないから。」


  
 人にしては高い声。決してうるさいわけでない。母親に当たる人のような金切り声ではない。 
 
 わたしを大切に思ってくれるものたちの声。

 あぁ、わたしはこの感情を求めていた。






 目が覚めるとそこかしこにいたのは、色とりどりの小さな手のひらサイズの羽がはえている小人たち。そして、つぶらな瞳を持つ動物たちがわたしを心配そうに見つめている。

「あなた達は誰なの?」

 一人の小人が前にすすみでて、わたしの右頬に触れる。暖かな、お日様のにおいがする。まるで、小さなお日様みたい。

「私たちは、精霊と呼ばれる存在。森羅万象と共に存在し続けるもの。これからはあなたを守る庇護者にして、保護者よ!」

 小さなからだで、精一杯胸をそらして、えっへん、と言わんばかりのその様子がとても愛らしく、ついついその頭を撫でてしまった。

 精霊は嬉しそうに目を細目、その感触を享受していた。

「ここは女神セレナーデ様が管理する世界、ジャポネアよ。あなたが今までいた世界とは違う世界。あなたの世界の言葉で言うところの、異世界ね!」

 異世界。そんな場所が存在するんだ。わたしにとって、家の外全てが異世界だった。ネズミーランドに行った日も。でも、まさか本当に異世界に来てしまうなんて思わなかった。

 不思議と今までいた世界に帰りたいとは思わなかった。あの世界に未練などりんごひとかけら分も存在しないのだから。

「わたしはどうすればいいの。わたしこの世界に知り合いなんていないよ。」

「大丈夫よ。あなたが心配する必要はないわ。あなたはすべてによって守られているの。そう、運命からもね!」

 ウィンクをぱちりとしながら、わたしに優しく語り聞かせてくれる。

 そうか、もう何も耐える必要もないんだ。

 心なしか体が軽い。すべてから解放されたような気がする。 

 わたしは今まで何もなかった。私の心はかたくなで、すぐにはほぐれはしない。石のような心。

 この世界でわたしは何か手に入れられるだろうか?
 誰かがわたしを愛していると行ってくれるだろうか?
 愛し合える人に出会えるだろうか?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

美醜逆転世界でお姫様は超絶美形な従者に目を付ける

朝比奈
恋愛
ある世界に『ティーラン』と言う、まだ、歴史の浅い小さな王国がありました。『ティーラン王国』には、王子様とお姫様がいました。 お姫様の名前はアリス・ラメ・ティーラン 絶世の美女を母に持つ、母親にの美しいお姫様でした。彼女は小国の姫でありながら多くの国の王子様や貴族様から求婚を受けていました。けれども、彼女は20歳になった今、婚約者もいない。浮いた話一つ無い、お姫様でした。 「ねぇ、ルイ。 私と駆け落ちしましょう?」 「えっ!? ええぇぇえええ!!!」 この話はそんなお姫様と従者である─ ルイ・ブリースの恋のお話。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

身分差婚~あなたの妻になれないはずだった~

椿蛍
恋愛
「息子と別れていただけないかしら?」 私を脅して、別れを決断させた彼の両親。 彼は高級住宅地『都久山』で王子様と呼ばれる存在。 私とは住む世界が違った…… 別れを命じられ、私の恋が終わった。 叶わない身分差の恋だったはずが―― ※R-15くらいなので※マークはありません。 ※視点切り替えあり。 ※2日間は1日3回更新、3日目から1日2回更新となります。

処理中です...