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アルラウネ②

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 ご褒美タイムがやってきた!

 まず真っ先に向かったのは、人ならざる者が棲まう巨城、デカス城。
 はやる気持ちを抑えつつ、入城してすぐさま地下施設へと駆け降りた。

 デカス山の天然洞窟を元に造った地下施設は、規格外の体格を誇る竜種ですら楽々格納できる巨大空間が広がり、使い魔達の指定帰還スポットとなっていた。
 ここは、使い魔達が過ごしやすいよう、洞窟の状態をなるべく維持したまま残してある。

 天井を見上げると、岩壁に何本も突き刺さっている宿り木で眠っていたハーピー達が、主人の帰還に喜び、鳴きながら飛び回り始めた。

「まだ、こいつらが残っているだけマシか」

 次々と舞い降り、絡み付ついてくるハーピー達を追い払い、更に先へ急いだ。
 岩壁に複数設置してあるガルヴォルン製の大きい扉の中でも、一番豪華な装飾が施された扉を勢いよく開け放つ。

 砂浜にビーチ。青い空に澄み切った海。そして、辺り一面には水平線がつづいている。
 それは、とても洞窟内とは思えない光景だ。
 端的に表すとすれば、そこは島国のリゾート地というのが適切だろう。
 実際には、海と幻覚する人工プールがあるだけなのだが。そして、お洒落な水上コテージがある。
 ここは、気に入った女型使い魔専用の指定帰還スポットで、プライベートルームだった。

 テツオは【探知魔法】で反応のあった水上コテージのひとつへ【転移】。
 間取りは、桟橋からリビングに続き、寝室があるだけの簡素な作り。
 設計者の思いにより、余分なスペースを極力排除した結果だ。
 さて、反応の主は、天蓋付きベッドの上で呑気に寝転がっていた。
 テツオは、寝室入り口の白い木柱をコンコンと叩く。

「待たせたな、アルラウネ」

 アルラウネはこちらに気付いた途端、烈火の如く怒りだした。

「ニンゲンめっ!よくもこんな場所に!森へ帰セッ!」

「おいおい、それが命の恩人にとる態度か?
 あのままだったら、お前は竜に殺されていたんだぞ」

 実際、殺されてたし。

「それが運命なら受け入れるだけダッ!」

 アルラウネが手を伸ばすと、硬質化した木の実が弾丸のように発射される。
 だが、テツオは一切避けない。そもそも避ける必要が無いのだ。
 結局のところ、木の実はその場でパラパラと床に落下した。

「お前は俺のモノになった。その運命を受け入れろ」

「そんな!何で攻撃が当たらなイ?」

「お前自ら外したんだ。
 使い魔は契約により、主人を攻撃する事が出来ない」

「待テ!何で服を脱グ?」

 テツオは全裸になり、ゆっくりとベッドへ向かう。

「まだ気付いていないのか?お前はもう俺を受け入れる準備が出来ているんだ」

「嘘ダ!」

「と言いつつも、お前はずっと俺の股間から目が離せない。そして…………」

 アルラウネは胸の辺りを人差し指で軽く押されると、そのままベッドへ包まれるように倒れ込んだ。

「お前は、一体いつから、自分が全裸じゃないと、錯覚していた?」

「えっ?」

 アルラウネはテツオから目を離し、自分の身体へ恐る恐る視線を落とした。
 そして、剥き出しになった胸を見て、大きく目を見開いた。
 花弁や蔓、蔦といった服を構成していた植物が、いつの間にかシーツ上に散らばり、まるで美術品のようにベッドを彩っている。

「何デッ?」

「お前の本能が、寵愛を受けようと勝手に身体が反応してるんだ。つまり、お前は何も拒めない」

 テツオは、抵抗できない全裸のアルラウネの上に勝ち誇るように跨った。
 アルラウネは険しい顔をしているが、身動きが全く取れない。

 ニンゲンが、今まさに動けない自分へキスをしようと、ゆっくりと近付いてくる。
 捕食対象のニンゲンなんかに支配される憤りと屈辱。

「うぐぐーッ!」

「グヒグヒ、可愛らしい唇ゲットだじょー」

「んんーッ!」

 ところが、人間の唇が触れた途端、身体の中に何かが流れ込んできた。
 それは、濃厚で芳醇な魔力だった。
 全身が高揚し、幸福に包み込まれる。
 死と隣り合わせの森では感じる事の無い絶対的な安心感。
 騙されてはいけない。これは、使い魔に落ちた者への呪縛なのだ。

「フヘヘ、トロンとした顔しやがって。キス一発で落ちてるじゃねぇかよ!」

 人間がいやらしく笑いながら、私の胸を揉んでいる。
 最低で最悪だ。
 それなのに、私の意思と関係なく、全身が喜んでいる。
 全て、まやかしに過ぎない。
 どんどん身体が麻痺していく。私がよく使う麻薬植物の効果と同じだ。

「もうビチャビチャじゃねーか。いくらなんでも感じ過ぎだろ?イヒヒ、もう挿れちまうか」

 挿れてもらえる!嬉しい!
 違う!挿れては駄目だ!
 欲しい!離れたく無い!
 違う違う!

「酸があるから、危なイ!」

 私は何を心配していル?

「うへへ、大丈夫、大丈夫」

 人間は、何の遠慮もなく私の脚を広げ、何の抵抗も無く私の膣内へ挿入した。

「ああアーーッ!」

 気持ちいい!凄い!これはもう無理だ!
 抗えるワケない!逆らえるワケない!
 キスとは比べ物にならないほど、強烈な魔力が身体を突き抜ける。
 コレを知ってしまったら、もう…………離れられないぃ。

 気がつくと、ご主人様から離れたくない一心で必死にしがみ付いていた。
 私の股から大量の液体が漏れ出している。
 ああ、私の酸がご主人様を傷つけてしまったかもしれない。
 恐る恐るご主人様の下半身を見ると、硬度と速度を維持したまま私の中を出たり入ったりしていた。
 無事どころの話では無い。元気いっぱいだ。

「うはぁ、気っ持ちえぇ。これが、アルラウネのカラダかぁ」

「ご主人様、大丈夫なノ?……ですカ?」

「うひひ、当たり前さね。使い魔は主人を決して傷付ける事は出来んのよぉ。
 つまり、酸は出ない。
 それより、やっとご主人様と認めたようだな。よし、褒美をやろう!
 気をしっかりもてよ、ピストン三倍だぁー」

 いきなりとてつもない速度で、腰を振り出すご主人様。
 まるでおもちゃのように私の身体を激しく乱暴に揺さぶり、最後は腰を奥までねじ込んで、爆発したかと思う程、勢いよく大量に射精した。
 その一撃で頭の中が真っ白になった。


 ————夢を見ている。

 そこは森の奥底。
 邪悪な大樹の片隅に、ただの花の精だった頃の私がいた。
 森の全てが、悪魔に呪われてしまった。
 日の光は決して届かず、このままではいずれ私は消え去ってしまう。
 嘆き、怯える事しか出来ない無力な存在。
 底なしの闇の中、死臭漂う残滓を養分にして生き延び、いつしか血肉を喰らう妖魔アルラウネと変わり果てていた。
 年月を経て、ついに森を駆け巡るようになり、久方振りに再開した賢者ドルイド様が、強くなった私を見て嘆く。
 救ってやれず済まない、と。
 意味が分からない。
 私は、あの暗闇から生き延びてこれたのに。
 この森の中では、悪魔にさえ逆らわなければ、消される事は無い。

 ————救う?

 強い光に照らされている。
 眩しくて、暖かくて、すっごく気持ちがいい。
 私は日の光が大好きだ。
 少女が宙を舞い、日の光を全身に浴び、楽しくて笑っている。
 少女は、花の精だった頃の私。闇に堕ちる前の私。
 ようやく、気付いた。
 私は、…………助けて欲しかった。
 ドルイド様、私は、救って欲しかったんです。

「おいおい、またロリになっちまったぞ!おい!コラ!」

 ————頬を叩かれ、私は目が覚めた。

「中の蔓がいい具合に絡み付いてよぉ、気持ち良かったのによぉ」

「あ、あっ、アッ、あフッ」

 どうやら、意識を失っていたらしい。
 その間もずっとご主人様は、私を抱いてくれていた。
 大量の魔力が注がれ、私の身体は蕩けに蕩けている。
 不意に、目から何かが流れ落ちた。
 それは、花の精だった頃の私ならよく知っているモノ。
 とても熱いその液体は、何故なのか流れ続けて止まる気配がない。

「うおっ、何で泣くんだよ。強く叩き過ぎたか?それとも、急に身体が縮んだから、俺のが太過ぎて痛いのか?」

「これが私、花の精アルラウネの本当の姿なノ」

「知ってんよ、前に見せただろ。頭おかしくなったんか?
 んな事より俺ん中で、ロリ適正が目覚めてきたんかもしれん。貧乳にめっちゃムラムラしてきた」

 暗闇から私を救ってくれたご主人様。

「年齢不詳の妖魔といえ、大人びてるといえ、見た目完全に小学生やん。いうて小五くらいか?金髪ティーンモデルやん。こんなんええんか?ええんか!犯しまくりやぞ!オッ?出し入れしまくりやぞ!オッ?」

 私の全てを受け入れてくれたご主人様。

「あぁ、上がってきた。よしフィニッシュ、イクぞ」

 身体が小さいから、ご主人様にすっぽり包まれている感覚。
 何かぶつぶつと言いながら、性器を色んな角度から捩じ込むご主人様。
 快楽に何度も気を失いそうになりながら、最後の魔力を全身で受け止めた。
 ドルイド様、私もう幸せ過ぎるよぉ。

 ご主人様は、私をベッドに投げ捨て、プールサイドの椅子に寝転がり、酒とかいう飲み物を飲みながら、また何か独り言をぶつぶつ呟いている。

「パツキンなのに毛先ピンクとかギャルっぽいし、身体もエロいし、よく見たら結構整った顔やし、しかも、ロリ系と切り替え自由やし、香草、麻薬と植物系全般活用可能やし、コレ、大当たり引いたかもな。
 ん?お前、何、顔赤くしちゃってんの?」

「生まれてから、褒められた事なんて一度も無かったかラ」

「そうか、これから色々経験したらいい。でも、この城には、お前以外にハーピーしかいないんだよなぁ。
 余った魔力でガチャでもしとくか。
 よし、場所を替えるぞ」

 ガチャとは何だろうか?
 ご主人様の【転移】により、どこか広い空間へやってきた。
 全裸だった私は急ぎ、植物装衣を身に纏う。

 ご主人様が、どこからか禍々しい魔玉を取り出し、なんの躊躇なくソレに魔力を込め始めた。
 瞬く間に、ご主人様の周囲をドス黒い闇が取り囲んでいく。
 人間がここまで邪悪な魔力に耐えられるなど聞いた事がない。
 なんて危険な行為だ。
 すると、闇に取り込まれ黒い靄と化したご主人様がこちらへ振り向き、不気味に笑い出した。目が赤く光っている。
 もしかして、ご主人様は人間じゃない?

「まさか!そんな事が?しかし、だとしたら?いや、間違いない。フハ、フハハハハ!」

 宙に浮かび上がった魔法陣が回転しだす。
 閃光が迸ると、光の向こうに複数の黒い影が浮かんでいた。

「まさか、再び会えるとは、な」

 召喚魔法陣より、インキュバスが三体、サキュバス一体、リリム一体が出現した。
 え?人間って、一瞬で悪魔五体を召喚できるものなの?

「お兄ちゃーん!また会えたねぇー」
「坊や、嬉しいわぁ」
「まさか、ご主人様に再びご召喚頂けるとは」

 あられもない格好をした淫魔サキュバス夢魔リリムが、ご主人様へ一直線に飛び付いた。
 インキュバス三体は地に降り立ち、片膝を着いて平伏している。
 形はどうあれ、悪魔達はご主人様に絶対の忠誠を誓っているようだ。

「死んだ筈のお前達を、再び召喚出来たのは想定外だった。
 まさか、名前を付ける事にそんな効果があったとはな」

「えー、そうだったんだぁ。アタシはミルク」
「ワタシはプリンよねぇ」
「我々は、レッド、ブルー、グリーンが名前だったのですね」

「ハッハッハ、インキュバスにまで、名付けたつもりは無かったんだがな。
 ともかく、お前達にはまた役に立ってもらうぞ」

「恐れ多く」
「はぁい、またいっぱい可愛がってね」
「次は死なせないでよぉ、坊や」

 ご主人様が再び目を不気味に光らせて笑いだした。
 凄まじい魔力が私の身体を震えさえる。
 正直、怖い。
 危険地帯デッドゾーンで生き延びた私に、匹敵する力を持つ悪魔を多数従え、それでもまだ魔力を無尽蔵に残しているなんて、まるでその昔、森を蹂躙した魔王のようだ。
 私は、とんでもない人間の使い魔になってしまったのかもしれない。
 だからといって、今更森へ戻る事は出来ない。
 私は既に、身も心も全てご主人様のモノなのだ。

「…………ご主人様、私にも名前を付けて下さイ」

 私は頭を下げ、ご主人様に懇願した。
 しばらく反応が無かったので、恐る恐る見上げると、彼は平伏す私をじっくり眺めながら、ニヤニヤしているではないか。
 そして、みるみるうちに股間が膨らんでいった。
 半裸に近い格好をしている私の、特に露出した箇所に、ご主人様の熱い視線を感じる。
 ようやく、気付いてしまった。
 花が甘い蜜を出して虫を誘うように、私の本質は、人間を誘惑するようにできている。
 自分自身、気付かないうちに、ご主人様の気を惹こうとしていたのだ。
 これが、アルラウネの性。

「あら、この子、いいの持ってるじゃなぁい。すっごくいい匂い」
「本当だぁ、男を虜にする芳香と蜜ってヤバぁ」

「よし、いいだろう。お前の名前を考えるから場所を変えるぞ」

「えー、待ってぇ兄ちゃあん。アタシ達も連れてってよぉ」
「坊や、淫魔サキュバス夢魔リリム技能スキルに、この子の素質も加えたら、すっごいエッチになりそうよ?」

「ふむぅ。魅力的な提案だな。
 よし、四人でエッチしながら名前を決めようか」

 その後、水上コテージへ移動してからの記憶が一切無い。
 それでも、ベッド上でまだ気絶しているプリンとミルクが、全身ずぶ濡れになっているので、ここで何があったのかはハッキリと分かる。
 私自身も、下半身がガクガクで、身体に力が入らない。
 ふと、影に気付いて上を見上げると、ご主人様が宙に浮いていた。

「起きたかね」

 返事をしようとすると、口の中が何かの液体でいっぱいになっていた。

「喜べ。三体計十五発の荒業を乗り越え、お前の名はついに決定した。植物系、いや、スイーツ系使い魔に相応しいその名前は……」

 私はゴクリと口の中にたっぷりあった液体を飲み込んだ。

「苺ちゃんだ」

 私の名前はイチゴ。
 名付けられた瞬間、私の身体の芯が燃えるように熱くなった。ご主人様から魔力が耐えず流れてくる感覚がハッキリと分かる。
 決して逃れられない絶対的支配に入ったという事だ。
 でも、それが堪らなく嬉しい。
 嬉しい!嬉しい!
 怖い事なんて何も無い!

「何故こいつらが、未だ気絶状態から目覚めないか分かるか?」

「ふぇ?」

「つまりは、そういう事だ」

 ご主人様のあそこが、再び私の中にほんの少し入っただけなのに、私は激しく絶頂してしまった。
 瞬時に身体が理解する。
 ご主人様との魔力パスがより密接に繋がった為、感度が異常な程、高まっているのだと。

「ウハハ、この反応を見るのが楽しいんだよ」

 気が遠くなり気絶するまでの間、ご主人様は楽しそうに笑い続けていた。
 ご主人様は、きっと人の姿をした魔王に違いない…………
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