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アマンダ

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「テツオ様、またお会い出来て光栄ですわ」

 今夜のアマンダは前回見た時より、かなりセクシーな衣装だった。

 タイトな黒いドレスは、細い身体のラインをこれでもかと強調している。

 ただでさえ面積の少ないドレスなのに、身体を覆っている部分が透ける素材で出来ていて、谷間は盛り上がって丸見えだし、角度によっては下着が見えてしまいそうだ。

 アデリッサより濃い目の赤い髪の毛は、腰まで伸びていて、その黒いドレスによく映える。

「今夜はその……とても綺麗です」

 隣に座るアマンダをまじまじと眺めながら、しょうもない感想を述べる。

「そんなに見つめられると恥ずかしいですわ。
 でも、テツオ様の為に新調したドレスなので、お褒めの言葉を頂き嬉しいです」

 しなを作って脚をくねらせる。
 動作の全てが上品なエロチシズムを醸し出し、それに惹きつけられる。

「……俺の為?」

「はい。
 テツオ様はブレイダン様の頼みを、見返りも求めず叶えて下さりました。
 そして店を、私達を、救って下さったのです。
 テツオ様が居なければ、私や妹は今頃、奴隷となってどこかに売られていたかもしれません」

 確かにエリックはまだ狙っている女がいると言っていた。
 あいつやっぱ死罪だわ。
 この姉妹に手を出そうものなら、理性保てる自信がない。

 アマンダがぐいっと俺の手を両手で包み込み、自分の胸元に引き寄せる。
 あ、手に当たったよ?アマンダさん。

「とても、怖かったんです……」

 …………そう、だよな。

 ブレイダンがいたとしても、貴族に逆らえる範囲には限りがある。
 ましてや戦闘力皆無の一般女性では、貴族に暴れられたら恐怖でしかないだろう。

「もう大丈夫ですよ」

「はい!」

 アマンダの顔から不安が消え、笑顔で返事をする。
 アマンダの所作は演技ではなく、男社会を生き抜く為のスキルなのだろう。
 この厳しい世界を生きる為に、人は色んな力を身に付けるしかないのだ。

「さあ、今日はしっかりとおもてなしさせていただきますね。
 とてもいいお酒をご用意致しました」

 サルサーレ三百年とかいう高級ワインの栓が開けられる。
 ボワっと芳醇な香りが広がる。
 味はよく分からないが、飲みやすいから多分美味しいのだろう。
 二日寝てないからか、酔いの回るのが早い気がする。

 なんか、最近酒ばっかり飲んでないか?
 にも関わらず短時間で三本も開けてしまった。
 一本幾らするんだろうか?

 いや、俺は貴族だぞ!ガハハ!
 金は幾らでもあるわい!

 気が付いたらアマンダの脚に手を乗せていた。
 えっ?えっ?

「うわっ!わっ!わわわわー!」

 凄い速度で手を離し、勢い余って椅子から転げ落ちる俺。
 アマンダが、あらあら、と穏やかな笑顔で手を差し伸べてくれた。

「すいません、酔ってますよね俺。
 とんだ粗相を」

「いいのですよ?
 今日はお礼なのですから。
 私なんかで良ければテツオ様の望むように」

 ドキッとするなぁ、その台詞。
 ホントにいいの?
 さ、触ってみたい。
 酔ってるせいにしたら何でも許されちゃうかな?

 アマンダの髪を撫でてみる。
 手入れが行き届いてサラサラの髪の毛だ。
 頭小さいな。

「あら?
 嬉しいですわ。
 甘えてしまいたくなります」

 アマンダもワインを結構飲んだようで、陶器の様に透き通った顔が赤くなっている。
 濡れた唇がとてもセクシーだ。
 思い切ってアマンダの肩に手を回し引き寄せる。

「アマンダに甘えてほしいな」

 あっ、と甘い吐息が俺の喉元にかかる。
 うわ、肩ほっそ!身体軽っ!
 力入れたら折れちゃいそう。
 でも、柔けぇ。

【魅了】魔法じゃないのになんだこれ?
 クラクラと脳内が揺さぶられる。

 髪の毛と香水のいい匂いがするし、すべすべの肌に、上から眺める胸の谷間から続く細い腰と美しい脚の稜線は、正に前人未踏の霊峰デカス。
 理性というピッケルが次々と抜け落ちていく。
 今までどれだけの男達が滑落していったのだろうか?

「いつもはうまく躱すのですけど、今夜くらいは私もいい思いしてもいいですよね?」

 いい思い?
 俺に寄り添うのがご褒美だと言ってくれるのか?

「上手いなぁ、アマンダは。
 こうやって男を手玉に取るんだね。
 俺なんて慣れてないからコロリと騙されちゃうよー」

 アマンダはフフフと微笑すると、俺の耳元で囁く。

「私、こう見えて経験ないんですのよ?」

 落雷。

 何が起こったのか分からないほどの衝撃が頭から足のつま先へ突き抜けていった。
 マ、マジすか?
 本当に初めてだとしたら化け物でっせ、あんた。
 本当に前人未踏だったとでもいうのか……

「ホント……なの?」

「あまり虐めないでください……」

 もう我慢できない。触りたい。
 恐る恐る盛り上がった胸の谷間を人差し指で押してみる。
 それをただ黙って見ているアマンダ。

 ムニュ。

「…………ぁん」

 噴火。

 脳天からズガンと血液が沸騰したかのように熱い火山岩が噴き上がる感覚。
 淫魔サキュバスの色気を超える人間が存在するだなんて。
 理性のピッケルなど溶岩流の前では、ただただ無意味。

 手の平で霊峰を思いきり揉みしだきたい。
 ハイエルフに匹敵するその綺麗な顔を舐め回したい。
 アマンダの最初の踏破者となりたい。

「キスしていい?」

 アマンダの細い顎を掴み、クイッと上げる。

「ここじゃ恥ずかしいですわ。
 続きはこの後、お部屋で致しましょう。
 お待ちしておりますね」

 スッと俺から身体を離すアマンダ。
 そのまま立ち上がってお辞儀をし、ボックス席から立ち去った。

 ホワイトアウト。

 俺の胸に微かに残ったアマンダの温もりが次第と冷めていき、まるで心にポッカリと穴が空いたような喪失感がなんとも切ない。

 前世でスナックやキャバクラというものに行った記憶は無いが、もし行ってたとしたら簡単にのめり込み、ケツの毛まで毟り取られていた事だろう。
 それくらいアマンダとの時間は楽しかった。


 ふぅ…………


 えっ……?


 この状態でどちらか一人だけを選べって言うの?

 二人と過ごしてみてハッキリと再確認できたが、やはりどちらもS級美女。


 どちらかだけって酷過ぎる。

 ブレイダンさん、貴方……鬼だよ。

 う、うわぁああああん


 ———————



 苦悩を乗り越えて姉妹の一人を選び、それを従業員に伝え、先に個室に入って待つ。

 個室には高級絨毯が敷かれ、一際大きな本革のソファに大理石の様なテーブル。
 黒い壁には魔石灯が薄っすらと灯っている。
 俗に言うVIPルーム。

 ソファはベッドの様に広く、男性客の創造力を掻き立てるには十分だ。
 今までここに入った男性客は、押し倒せると思い、その気になって金を撒き散らかしてきたのだろう。
 ここが、底なし沼とも知らず。

 ズズ……と分厚い重めの扉が開く。

 そこに現れたのは……






 …………ナティアラだ。

 悩んだ末に俺は、ナティアラを選んだ。

 彼女はその大きな瞳で、俺を睨んだままツカツカと歩み寄る。

「なんで俺を選んだんだよ!」

 怒られてる?
 なんで?
 どっちか選ぶルールやん。

「何でって言われても、俺が一緒に過ごしたいのはお前だからだ」

 真っ直ぐ来るなら、俺も真っ直ぐ返すだけだ。
 ナティアラはびっくりして後退り、そのまま後ろを向く。
 そんな意外そうな顔しないでもいいでしょうよ。
 というか、とりあえず椅子に座ろうよ。
 座って話したらいいやん。

「最後の歌の意味が聞きたいんだったな」

 ナティアラが俺に背中を向けたまま尋ねる。
 飲み過ぎのせいで酔ってて忘れかけてたが、確かにそうだった。
 歌の意味が知りたい。
 いや、歌った訳が知りたい。
 それより、後ろ姿たまらんな。
 腰は細いし、肩から肩甲骨のライン、脚の後ろ、全部いい。

「いや、聞かなくても分かるよ」

「な、なんだって?」

 驚いてまた俺に向き直る。
 クルクルと忙しい奴だな。

 最初の曲では、父が亡くなった後、姉妹がいかに大変だったかとか、全部の曲について俺の頭に浮かんだ情景や、その時のナティアラの感情を感じたまま伝えた。
 そして、歌詞だけじゃ全然読み取れないけど、お前が歌うと頭に全部浮かんだんだ。
 そう興奮気味に話していると、突然、ナティアラの目から涙がスッと溢れ落ちた。

「何で分かるんだよ?」

「え?」

「何で全部分かるんだよ!」

 思いをぶつけるナティアラ。
 ぐすっ、ぐすっと流れる涙を両手で拭っている。
 ど、どうしたんだ?
 オロオロしちゃってどうしていいか分からない。
 分からないが放ってはおけない。

 とりあえず肩に手を乗せようか?
 背中をさする?抱きしめる?
 行き先不明の手を差し伸べると、それに気付いたナティアラが、俺に突進気味に抱きついてくる。

 酔っぱらい相手にそれは良くない。
 バランスを崩して、ソファの上に二人で倒れこむ。
 流石は高級なソファ。
 全く衝撃は無い。
 抱きしめた体勢で暫し時を過ごす。

 起き上がったナティアラの最後の涙が俺の頬を濡らした。
 ナティアラはもう泣くのを止めた。

「ブレイダンが俺達にお前の事ばかり話すんだよ。
 あの方は凄い。あの方なら守ってくれる。あの方が、あの方がって、正直うるさかった。
 でも、やっと分かった」

 ナティアラが俺にキスをする。
 柔らかな唇が一瞬触れる程度の……

「お前、凄い奴だ」

 そう言って俺に抱きついた。

「最後の歌の意味が分かるんなら、俺はもう何も言わない。
 だって、もうテツオには伝わってるんだろ?」

 ナティアラは最後のラブソングで、俺に新しい世界を見せてほしい、愛して欲しいと歌った。
 それなら、俺のする事は一つしかない。

 激しくキスをし、ドレスを脱がした。
 たまにチラリと俺を見るその目は、妖艶でドキッとさせられる。
 やはりこの姉妹には、男を魅了する素質があるのだろう。
 顔は似てないが、アマンダと同じ赤い髪を撫でながら話しかける。

「お前の望み通り新しい世界を見せてやる。
 お前は俺の女だ」

 俺の硬くなったマイクを歌姫に優しくプレゼント。
 細い手足が快楽に打ち震えた。
 悪いな、酔ってるせいかちょっと凶暴性が増してるんだ。
 もちろん、処女だったから【回復】は掛けておく。

「つぅ」

 ナティナラが痛みに顔を歪ませた。
 彼女の手の平サイズのおっぱいに噛み付いて歯型を付けたからだ。
 俺のモンだ、という証明を残す。
 すると、ナティアラがお返しとばかりに、俺の肩にガブリと噛み付いた。
 痛い。
 ふざけてるのかやたらと噛んでくるから、身体を引き離して膝の上に座らせる。
 エッチの途中なのに、自由奔放な歌姫だな、ホント。 

「俺達姉妹は、母親が違うんだ。
 でも、仲は良かった。
 親父は、子供にだけはとても優しかったんだ。
 でも、俺はもっと愛されたかったんだと思う」

 それは歌を聴いて知っている。
 だが、知らない歴史を教えてくれた。
 アマンダの母親は、アマンダが二歳の時に魔物に殺されたらしい。
 ナティアラの母親は娼館の女だった。
 その娼婦の仕事を見て、二人は育った。
 だからといって、この子達が歪む必要は全くない。

「今日からナティアラは俺の女だ。
 俺の為に、親父の話し方はもう止めろ。
 少しずつでいいから女らしくするんだ」

「うん、分かった。
 でも、アマンダみたいのは絶対無理だよ?」

 娼婦を母親に持ち、娼婦になりたくない想いから、親父の真似をするようになったのだ。
 男は娼婦になれないから。

「ナティアラの出来る範囲でいいからな。
 さぁ、続きをしよう。
 我慢の限界だ」

「うん」

 再びナティアラのあそこに、俺のロックな部分をロールする。
 こんな可愛い声聞いた事がない。
 色んな声が聞きたくてマイクパフォーマンスかましまくる。

 五感全てが大満足だ。

 うん。

 歌姫ナティアラを選んで本当に良かった。
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