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エルフの国②
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「エルメス様、魔族について教えてもらえますか?」
慎重になるのもいいが、この世界の脅威をちゃんと知っておかないとな。
エルメス様は椅子に腰掛け、俺もテーブルを挟み正面に座る。
本当は横に座りたい。
「少し長くなるがいいか?
実は魔族についてはまだまだ謎が多い。
これから話す事は憶測も含むぞ。
まず、魔族の本拠地は海の向こうの大陸にある。
その大陸には魔界と繋がる場所があり、そこから悪魔が現世にやってくるでは、と言われておる。
それらの悪魔が、他の大陸に潜入するというのはよくある話だ。
だが、この大陸への大規模な侵攻となると三百年は無い」
悪魔、怖いな。
エルメス様があのマズい紅茶で一息入れる。
「侵攻が無いとはいえ、嘆かわしい事だが魔族による被害を聞かない日は無い。
むしろ近年、特に増えてきていると報告が上がっておる。
いよいよ魔族が攻めてくるのかと、私は感じているのだ。
魔王や魔王に近い悪魔達の力は強大で、奴らの大陸は、私の【千里眼】でも深くは探れぬ。
私に出来るのは、精々この大陸を見守る事ぐらいなのだ」
魔王の存在。
海を向こうに魔界の門がある大陸。
強い悪魔がこの大陸に潜んでいる。
なんか嫌だなぁ。
出来れば会いたくない。
「なるほど、ありがとうございます。
ちなみにちょっと話は変わりますが、エルメス様が着ているその衣装ってどうされたんですか?
他の皆さんとは、全然違うデザインですが」
そう、この和装が違和感半端無くて、気になって気になって仕方がなかった。
「これか?
これはその昔、勇者から寄贈されたものだ。
此度人間がここに来たということで久々に着てみたのだ。
これは人間の正装なのであろう?」
ん?そうなの?
この世界に来て、村しか見てないから何とも言えないが、和装に近いデザインは見たことがない。
しかし、また勇者か。
勇者中心で話が進むのがいちいち気に触るなぁ。
「まぁよい。
お主を呼んだのは、頼みたい事があるからだ。
この世界で何をするのかは、お主の自由であるが、勇者ともし会うことがあれば、これを渡してくれぬか?」
そう言ってエルメス様は球体の石を渡してきた。
「これは?」
「先程、お主が倒したゴーレムの核と同じ宝玉だ。
ここへ転移できる魔力の込められた魔玉じゃな。
それがあればいつでもここに来る事ができる」
「なるほど、じゃあこれは一緒に来ている彼女に渡しておきますね。
彼女は勇者を探しているんで、彼女の方が適任でしょう」
「できれば神の加護があるお主に頼みたいのだがなぁ、無理強いは出来んしのう。
どうしても駄目か?」
なんか困らせているみたいだが、面倒はごめんだ。
だが待てよ。
エルメス様や他のエルフの美女達に会う大義名分にもなるなぁ。
どうしようか思案していると、不意にエルメス様が俺の手を握って懇願しだした。
「お願いだ」
綺麗で華奢なすべすべの手で、俺の手を優しく包み込み、青く澄んだ綺麗な瞳で真っ直ぐ俺を見つめる。
顔が熱い。
これがハイエルフなのか!
「いいでしょう!分かりました」
はっ!
つい折れてしまった。
ま、いいか。
「じ、じゃあ、俺からもお願いいいですか?」
「ふむ、なんだ?申してみよ」
「エルメス様と、も、もっと仲良くなりたいんですけどっ」
やべっ!つい言ってしまった。
目を見開いて驚いているエルメス様に、そっと手を離されてしまう。
「それは種族間の交流を言っておるのか?
それとも異性間の交配の事を言っておるのか?」
「え?あ、まぁ、交配を前提とした交流と申しますか。
やっぱり、色々マズいですか?」
そう言うと佇まいを直し、ゆっくりとエルメス様が口を開く。
「生物学的には何ら支障は無い。
ハーフエルフがいるように、エルフと人間の交配は可能である。
フフフ、いや、すまぬ。
そういう話をしてきた人間は、お主で二人目での。
一人目は三百年前の勇者だ。
私の気を惹こうとして、この服などを贈ってきたな。
魔族討伐に行ったきり、戻っては来なかったがな」
昔を思い出すように、遠い目をするエルメスを見て、何となく苛つく。
勇者に対する嫉妬だろうか。
おっと、様を付け忘れた。
こんな無茶苦茶な事を言っているのに、真摯に対応してくれるのは、人間と感性がズレているからだろうか。
「テツオは私を何歳だと思う?
とうに二千は超えている。
私は、人間とは全く違う時の流れを生きてきたのだ。
百歳やそこらの若いエルフとは違う」
「私は気にしませんよ?
二千年くらい。
逆に二千年磨き上げたその美貌に、興味が膨れ上がりました」
「嬉しい事を言うではないか。
人間であれば何世代も遥か昔の婆だと言うのに」
「私がそこを気にしなければ問題ないですよね?
男女が仲良くなるのに他に何か障害がありますか?」
「英雄色を好むとは人間の作った言葉であるが、なるほどお主もそういった類の一人か。
ふむ、私が欲しければ勇者に出したのと同じ条件を出そう。
魔族討伐じゃ」
魔族討伐……、それ勇者の役目だろ?
「魔族のいる大陸に行け、と?」
「そこまで求めたりせん。
私の【千里眼】はこの大陸しか見渡せぬ。
この北の大国に潜んでおる悪魔を討伐して欲しい。
それは人に化けて、貴族を唆し、人を攫い、色々と悪さをしておるようだ。
その中には、我らの同胞も含まれているようでな。
助けてやりたいのだ」
「なるほど。
その悪魔を倒せば達成ですか?
勇者も同じ様な任務を?」
「勇者にも魔族討伐を頼んでおったが、そのうち戦争が始まり、私にこの大陸の守護を頼むと、海を渡っていってそれきり帰ってこなかった」
「ん?となるとエルメス様と勇者との関係は?」
「手を繋いだこともない。
私より使命を選んだのだ、あやつは。
それゆえ、テツオには無事戻ってきて欲しいものだ」
そうか、勇者とエルメス様の間には肉体関係は無かったのだな。
セーフ!
とはいえ、今回はちょっとクリアまで時間かかりそうだな。
魔族討伐て。
序盤でいきなりハードル上がり過ぎじゃない?
「悪魔ってどれくらい強いんです?
私でも勝てますか?
エルメス様は私を【千里眼】で視てますし、ある程度強さは分かってますよね?」
「うぅむ、上位の悪魔は大抵狡猾で凶悪だ。
真っ向勝負してくるとは限らんし、怪しい術も使う。
それでも、テツオのレベルが上がればなんとかなるかもしれん」
えー、そんな強いの?
一気に不安になってきたなぁ。
「ちなみに私とエルメス様だとどちらが強いですか?」
「そうだなぁ。
このエルフの領域であれば、我らハイエルフは精霊の恩恵によって不老不死であり、精霊の力も使えるからな。
私に勝つ事は出来ないだろう。
倒すには骨が折れるぞ?」
「な、なるほど」
やっぱり不老不死なのか、羨ましい。
「そうだな、一度手合わせしてみるか?」
エルエス様はニコッと微笑んだ。
慎重になるのもいいが、この世界の脅威をちゃんと知っておかないとな。
エルメス様は椅子に腰掛け、俺もテーブルを挟み正面に座る。
本当は横に座りたい。
「少し長くなるがいいか?
実は魔族についてはまだまだ謎が多い。
これから話す事は憶測も含むぞ。
まず、魔族の本拠地は海の向こうの大陸にある。
その大陸には魔界と繋がる場所があり、そこから悪魔が現世にやってくるでは、と言われておる。
それらの悪魔が、他の大陸に潜入するというのはよくある話だ。
だが、この大陸への大規模な侵攻となると三百年は無い」
悪魔、怖いな。
エルメス様があのマズい紅茶で一息入れる。
「侵攻が無いとはいえ、嘆かわしい事だが魔族による被害を聞かない日は無い。
むしろ近年、特に増えてきていると報告が上がっておる。
いよいよ魔族が攻めてくるのかと、私は感じているのだ。
魔王や魔王に近い悪魔達の力は強大で、奴らの大陸は、私の【千里眼】でも深くは探れぬ。
私に出来るのは、精々この大陸を見守る事ぐらいなのだ」
魔王の存在。
海を向こうに魔界の門がある大陸。
強い悪魔がこの大陸に潜んでいる。
なんか嫌だなぁ。
出来れば会いたくない。
「なるほど、ありがとうございます。
ちなみにちょっと話は変わりますが、エルメス様が着ているその衣装ってどうされたんですか?
他の皆さんとは、全然違うデザインですが」
そう、この和装が違和感半端無くて、気になって気になって仕方がなかった。
「これか?
これはその昔、勇者から寄贈されたものだ。
此度人間がここに来たということで久々に着てみたのだ。
これは人間の正装なのであろう?」
ん?そうなの?
この世界に来て、村しか見てないから何とも言えないが、和装に近いデザインは見たことがない。
しかし、また勇者か。
勇者中心で話が進むのがいちいち気に触るなぁ。
「まぁよい。
お主を呼んだのは、頼みたい事があるからだ。
この世界で何をするのかは、お主の自由であるが、勇者ともし会うことがあれば、これを渡してくれぬか?」
そう言ってエルメス様は球体の石を渡してきた。
「これは?」
「先程、お主が倒したゴーレムの核と同じ宝玉だ。
ここへ転移できる魔力の込められた魔玉じゃな。
それがあればいつでもここに来る事ができる」
「なるほど、じゃあこれは一緒に来ている彼女に渡しておきますね。
彼女は勇者を探しているんで、彼女の方が適任でしょう」
「できれば神の加護があるお主に頼みたいのだがなぁ、無理強いは出来んしのう。
どうしても駄目か?」
なんか困らせているみたいだが、面倒はごめんだ。
だが待てよ。
エルメス様や他のエルフの美女達に会う大義名分にもなるなぁ。
どうしようか思案していると、不意にエルメス様が俺の手を握って懇願しだした。
「お願いだ」
綺麗で華奢なすべすべの手で、俺の手を優しく包み込み、青く澄んだ綺麗な瞳で真っ直ぐ俺を見つめる。
顔が熱い。
これがハイエルフなのか!
「いいでしょう!分かりました」
はっ!
つい折れてしまった。
ま、いいか。
「じ、じゃあ、俺からもお願いいいですか?」
「ふむ、なんだ?申してみよ」
「エルメス様と、も、もっと仲良くなりたいんですけどっ」
やべっ!つい言ってしまった。
目を見開いて驚いているエルメス様に、そっと手を離されてしまう。
「それは種族間の交流を言っておるのか?
それとも異性間の交配の事を言っておるのか?」
「え?あ、まぁ、交配を前提とした交流と申しますか。
やっぱり、色々マズいですか?」
そう言うと佇まいを直し、ゆっくりとエルメス様が口を開く。
「生物学的には何ら支障は無い。
ハーフエルフがいるように、エルフと人間の交配は可能である。
フフフ、いや、すまぬ。
そういう話をしてきた人間は、お主で二人目での。
一人目は三百年前の勇者だ。
私の気を惹こうとして、この服などを贈ってきたな。
魔族討伐に行ったきり、戻っては来なかったがな」
昔を思い出すように、遠い目をするエルメスを見て、何となく苛つく。
勇者に対する嫉妬だろうか。
おっと、様を付け忘れた。
こんな無茶苦茶な事を言っているのに、真摯に対応してくれるのは、人間と感性がズレているからだろうか。
「テツオは私を何歳だと思う?
とうに二千は超えている。
私は、人間とは全く違う時の流れを生きてきたのだ。
百歳やそこらの若いエルフとは違う」
「私は気にしませんよ?
二千年くらい。
逆に二千年磨き上げたその美貌に、興味が膨れ上がりました」
「嬉しい事を言うではないか。
人間であれば何世代も遥か昔の婆だと言うのに」
「私がそこを気にしなければ問題ないですよね?
男女が仲良くなるのに他に何か障害がありますか?」
「英雄色を好むとは人間の作った言葉であるが、なるほどお主もそういった類の一人か。
ふむ、私が欲しければ勇者に出したのと同じ条件を出そう。
魔族討伐じゃ」
魔族討伐……、それ勇者の役目だろ?
「魔族のいる大陸に行け、と?」
「そこまで求めたりせん。
私の【千里眼】はこの大陸しか見渡せぬ。
この北の大国に潜んでおる悪魔を討伐して欲しい。
それは人に化けて、貴族を唆し、人を攫い、色々と悪さをしておるようだ。
その中には、我らの同胞も含まれているようでな。
助けてやりたいのだ」
「なるほど。
その悪魔を倒せば達成ですか?
勇者も同じ様な任務を?」
「勇者にも魔族討伐を頼んでおったが、そのうち戦争が始まり、私にこの大陸の守護を頼むと、海を渡っていってそれきり帰ってこなかった」
「ん?となるとエルメス様と勇者との関係は?」
「手を繋いだこともない。
私より使命を選んだのだ、あやつは。
それゆえ、テツオには無事戻ってきて欲しいものだ」
そうか、勇者とエルメス様の間には肉体関係は無かったのだな。
セーフ!
とはいえ、今回はちょっとクリアまで時間かかりそうだな。
魔族討伐て。
序盤でいきなりハードル上がり過ぎじゃない?
「悪魔ってどれくらい強いんです?
私でも勝てますか?
エルメス様は私を【千里眼】で視てますし、ある程度強さは分かってますよね?」
「うぅむ、上位の悪魔は大抵狡猾で凶悪だ。
真っ向勝負してくるとは限らんし、怪しい術も使う。
それでも、テツオのレベルが上がればなんとかなるかもしれん」
えー、そんな強いの?
一気に不安になってきたなぁ。
「ちなみに私とエルメス様だとどちらが強いですか?」
「そうだなぁ。
このエルフの領域であれば、我らハイエルフは精霊の恩恵によって不老不死であり、精霊の力も使えるからな。
私に勝つ事は出来ないだろう。
倒すには骨が折れるぞ?」
「な、なるほど」
やっぱり不老不死なのか、羨ましい。
「そうだな、一度手合わせしてみるか?」
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