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しおりを挟む王太子の「私が、りんに口説かれるのか?」とか、「私を攻略? 家にでも攻め入られるのか」とかムーアさんが言ってて、一つ一つ丁寧に突っ込みをいれたくなったけど、忙しいのでここはスルーしておく。
それにしても、ここが異世界でゲームになっていて内容が未来だってことについてはツッコミなしなのかぁ。それともそこまで理解が追い付いていないってことかな。ははは。
ここまで聞いてみて思ったことは、人物設定はほとんど一緒みたいだけど、それだけっぽいって事だった。だから話半分に聞いておく。半分は信じてるからお話に乗っておこう。それで大丈夫だ、きっと。
「んでもさ、そんなぬるゲーなら別に悪役令嬢だって別に問題ないんじゃないの?」
紅茶のお替りを勝手に注ぎながら、エリゼさんを見ると、顔というか耳も首も真っ赤だった。おー、これはあれだね、ラブだね。
「あー。大丈夫だよ。私、王太子様のこと守備範囲外だから! 完全アウトオブ眼中☆」
きらりんとエフェクト掛かってるイメージでね! 親指を立てて保証してあげるよ。
「私が、守備範囲外…?」
おい、そこでなぜ落ち込んでみせる王太子。婚約者が可哀想だろ。それともあれかな、女の子はみんな自分に夢中だって思ってるとか? それとも脳天チョップとか足蹴にされた衝撃で、新しい世界に目覚めちゃったとか? 怖っ。
「ていうかさ。今の私には、ムーアさんだって、ウィリアム君だってお断りですよ。
私はその攻略対象の誰も攻略するつもりなんてないです。
なんでそんな碌に知りもしない男を追いかけなくちゃいけないのさ」
恋愛するなら、ちゃんと尊敬できる人がいい。傍にいて、嬉しくなるような人。
なんてね。
「あの、でも。実は未確認情報ではあるんですけど… 雑誌に、気になるスチルが載っていたことがあるんです。
誰も攻略できないと、船に乗せられてどこかに連れて行かれちゃうっぽいんです。あの、外国に」
それはあれかな。夜の街を彷徨っていると人攫いにさらわれていく系っぽいやつ? っそれも怖っ。それは嫌だけど、でもさ。
「恋より先に、私は私が自慢できる人間になりたい」
今みたいなお手伝いじゃなくて、自分で仕事をして、きちんとした収入を得て、自分の力で部屋を借りて暮らせるようになるんだ。それができてからじゃないと恋とか浮かれたことを考える気にならないもん。
ムーアさんがこっちを見て微笑んでる。やっぱり自分で稼いでいる人なら通じるよね、この気持ち。
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