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第四章 ハンカチ屋の様子見
10.意外な一面
しおりを挟む「さて。ちょっと話すか。お前、この後予定なんかないよな?ずいぶん走り回ってたみたいじゃねえか」
くっ。恥ずかしいけど、私の服は汗と涙でぐしゃぐしゃだ。バレバレだったか。
「魔石、あれだろ。同じクラスの、ピンクの髪か金髪からもらったろ」
ぴく。なんで?なんで二人のこと知ってるの?
「……多分こうやって話せるのは最後だから言うが、俺は最初から、お前を監視兼、護衛してた」
「監視と、護衛?でも、薪が……」
ふっ、と、またダルクさんは笑った。
その顔は、ちょっと優しいと思うくらいだ。あんなに嫌なやつなのに。
「なんかお前見てるといらいらしてよ。反抗させたかったんだよ。一つケンカでもして、仲直りしたら警戒も薄れるし護衛しやすいだろ?子供とは思えねぇお前の態度で、失敗続きだったが」
ぽん、と、頭に手を置かれる。
あ、なんだろう。こういうの、すごく、久しぶりだ。
「ごめんな。怖かったろ。よく考えたら、家に一人きりだったもんな。他のやつみたいに、素直になれねぇんだよな」
がしがしがし。頭を撫でられる。三つ編みの髪がほぐれてぼさぼさになる。でも、気にならない。
「お前の父ちゃんは、カーライル伯爵家当主の、バートラムってやつだ。本当の俺の雇い主はそいつなんだよ」
伯爵家。ええと、ロザリーは公爵令嬢だから、それよりは下か。まあ、上の貴族ほどお家争いを怖がって、庶子なんか作らないからね。ぎりぎり本当っぽい。
「ちょうどお前の年の子供が欲しくなったらしい。多分貴族の学校で何かやらせる気だろうな。気をつけろ。政変がらみだぞ」
ん?わかんないことが出てきたぞ。
「政変って、なに?」
「お前本当に学校でぼんやり過ごしてたのな。
身近に怪しいやつ、何人もいたろうに。……まぁ、子供だしな」
ぽんぽん。頭をまた、撫でられる。
「今の王は、玉座に座らないって話、知ってるか?」
こくり。頷く。ロザリーも読んでた英雄譚だ。
「その英雄は、国の基礎を守る精霊を、鎮めたらしい。戦ったとかそんなかっこいい話じゃなくてよ。
ただ話して、意気投合して、説得した。それだけだ。 まあ、強くねぇと精霊となんかしゃべれねぇけどな」
ほえ。そうなんだ。なんか龍とかと戦ったのかと思ってた。
「王家は、代々精霊と話ができる血筋だから王家でいられた。だが、今の王にはなぜかそれができない。この国のどこかに隠れてる英雄か、王弟が代行しているらしいな」
こくこく。頷く。
そう、それでこのゲームの世界の題名に、隠された王国って、ついてるんだ。それは突き止めてた。
「大丈夫か?ちゃんと話、ついてきてんのか?
……ははっ、大丈夫か。あれだけ用心深いんだもんな。頭はいいよな」
ふっと、笑って、ダルクさんは続ける。
「最近になって、精霊は誰の呼びかけにも応えなくなった。王弟すらダメらしい。
だから、王位を他の王の血族に譲るべきだ、という一派がいる。それがお前の父ちゃんがいる一派だ。お前のクラスの金髪ちゃんとは、逆の派閥だな」
政変。ロザリーと、逆。つまりは。
「お前はあの金髪ちゃんと戦うことになるが、もう避けられねぇ。お前、昔からとっくに、父ちゃんの手中にいるからな」
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