33 / 110
第二章 悪役令嬢視点 断罪は終わらない
12.帰り道の異変
しおりを挟む
そうして、店を出てしばらく。
ロダンさんとディアスさんが、私のお店での接客について、あれこれ話していた。うわ、恥ずかしい。
居酒屋の改革も、進んでいるらしい。
カウンター席を遠くに設けることで、一人でごはんを食べにくるお客さんも、居心地は改善したみたいだ。
酔い加減を見て、店員が水を差し出すサービスも始めたらしい。
私の手から離れたからね。この世界に対応できるお店になっていくだろう。
ほんと、異世界知識チートする才能は、私にはなかったみたいだ。
肩の力が抜ける。
最近は、家に帰るまで体力がなくなることはあまりなくなった。
何かコツを掴んでから、少しだけ体が楽になったんだ。そのかわりに、家に帰るとなぜか魔力が切れている。魔法使ってないのに。なんで。
ふぅ、と、ため息をつく私を、エリサさんがそっと撫でてくれた。
優しいひと。私、こんなひとになりたいな。
馬車は、ゆっくりと走っていく。
細い路地から、大通りに出ようとした時だった。
がたんと、急に馬車が止まる。
え、なに。何か道に障害物?
「ロザリーちゃん、私から離れないで」
エリサさんが、そっと馬車の後ろの窓を覗く。ディアスさんは、前の方を覗いていた。
「……予想より数が多いな。馬車は捨てた方がいい」
「そうね。前方を切り抜けましょうか」
「ああ、後ろは頼む」
え?え?なに?
「あの……お二方、いかがなさいましたかな?」
「ロダン殿、御者の方に戦闘経験は」
「元冒険者ですから、それなりには。しかし今は武器も持っておりません。……まさか」
ロダンさんが青くなる。
「ええ。数は前方八、後方五。馬車に立て籠もれる人数ではありません。道は開きますのでご安心を。一気に出ます」
そう言うが早いか、ディアスさんはバンと激しい音で馬車の戸を開け、外に躍り出た。がきぃん、ざしゅっ、と、なにかの、おとが、ひびく。
「さあ早く!ロダン、ロザリー、出るわよ!」
エリサさんが、普段とは雰囲気の随分違う張りのある声を上げた。
私たちは、エリサさんに馬車から引きずり降ろされるように降りた。足がすくんで動けなかったからだ。
見ると。
ディアスさんが、前方の敵を殆ど屠っていた。
黒いフードを被り、布で口を隠した男たちが、たくさん転がっていた。
死んではいない、と思うけど、生臭い血の匂いが辺りに充満している。吐きそうになった。
「その娘をよこせぇ!」
後ろから声がする。
ぞっとした。狙いは、私か。
ロダンさんとディアスさんが、私のお店での接客について、あれこれ話していた。うわ、恥ずかしい。
居酒屋の改革も、進んでいるらしい。
カウンター席を遠くに設けることで、一人でごはんを食べにくるお客さんも、居心地は改善したみたいだ。
酔い加減を見て、店員が水を差し出すサービスも始めたらしい。
私の手から離れたからね。この世界に対応できるお店になっていくだろう。
ほんと、異世界知識チートする才能は、私にはなかったみたいだ。
肩の力が抜ける。
最近は、家に帰るまで体力がなくなることはあまりなくなった。
何かコツを掴んでから、少しだけ体が楽になったんだ。そのかわりに、家に帰るとなぜか魔力が切れている。魔法使ってないのに。なんで。
ふぅ、と、ため息をつく私を、エリサさんがそっと撫でてくれた。
優しいひと。私、こんなひとになりたいな。
馬車は、ゆっくりと走っていく。
細い路地から、大通りに出ようとした時だった。
がたんと、急に馬車が止まる。
え、なに。何か道に障害物?
「ロザリーちゃん、私から離れないで」
エリサさんが、そっと馬車の後ろの窓を覗く。ディアスさんは、前の方を覗いていた。
「……予想より数が多いな。馬車は捨てた方がいい」
「そうね。前方を切り抜けましょうか」
「ああ、後ろは頼む」
え?え?なに?
「あの……お二方、いかがなさいましたかな?」
「ロダン殿、御者の方に戦闘経験は」
「元冒険者ですから、それなりには。しかし今は武器も持っておりません。……まさか」
ロダンさんが青くなる。
「ええ。数は前方八、後方五。馬車に立て籠もれる人数ではありません。道は開きますのでご安心を。一気に出ます」
そう言うが早いか、ディアスさんはバンと激しい音で馬車の戸を開け、外に躍り出た。がきぃん、ざしゅっ、と、なにかの、おとが、ひびく。
「さあ早く!ロダン、ロザリー、出るわよ!」
エリサさんが、普段とは雰囲気の随分違う張りのある声を上げた。
私たちは、エリサさんに馬車から引きずり降ろされるように降りた。足がすくんで動けなかったからだ。
見ると。
ディアスさんが、前方の敵を殆ど屠っていた。
黒いフードを被り、布で口を隠した男たちが、たくさん転がっていた。
死んではいない、と思うけど、生臭い血の匂いが辺りに充満している。吐きそうになった。
「その娘をよこせぇ!」
後ろから声がする。
ぞっとした。狙いは、私か。
0
お気に入りに追加
218
あなたにおすすめの小説
目が覚めたら夫と子供がいました
青井陸
恋愛
とある公爵家の若い公爵夫人、シャルロットが毒の入ったのお茶を飲んで倒れた。
1週間寝たきりのシャルロットが目を覚ましたとき、幼い可愛い男の子がいた。
「…お母様?よかった…誰か!お母様が!!!!」
「…あなた誰?」
16歳で政略結婚によって公爵家に嫁いだ、元伯爵令嬢のシャルロット。
シャルロットは一目惚れであったが、夫のハロルドは結婚前からシャルロットには冷たい。
そんな関係の二人が、シャルロットが毒によって記憶をなくしたことにより少しずつ変わっていく。
なろう様でも同時掲載しています。
婚約破棄は踊り続ける
お好み焼き
恋愛
聖女が現れたことによりルベデルカ公爵令嬢はルーベルバッハ王太子殿下との婚約を白紙にされた。だがその半年後、ルーベルバッハが訪れてきてこう言った。
「聖女は王太子妃じゃなく神の花嫁となる道を選んだよ。頼むから結婚しておくれよ」
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!
蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」
「「……は?」」
どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。
しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。
前世での最期の記憶から、男性が苦手。
初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。
リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。
当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。
おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……?
攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。
ファンタジー要素も多めです。
※なろう様にも掲載中
※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。
もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
【完結】私ですか?ただの令嬢です。
凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!?
バッドエンドだらけの悪役令嬢。
しかし、
「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」
そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。
運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語!
※完結済です。
※作者がシステムに不慣れな時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///)
婚約破棄された侯爵令嬢は、元婚約者の側妃にされる前に悪役令嬢推しの美形従者に隣国へ連れ去られます
葵 遥菜
恋愛
アナベル・ハワード侯爵令嬢は婚約者のイーサン王太子殿下を心から慕い、彼の伴侶になるための勉強にできる限りの時間を費やしていた。二人の仲は順調で、結婚の日取りも決まっていた。
しかし、王立学園に入学したのち、イーサン王太子は真実の愛を見つけたようだった。
お相手はエリーナ・カートレット男爵令嬢。
二人は相思相愛のようなので、アナベルは将来王妃となったのち、彼女が側妃として召し上げられることになるだろうと覚悟した。
「悪役令嬢、アナベル・ハワード! あなたにイーサン様は渡さない――!」
アナベルはエリーナから「悪」だと断じられたことで、自分の存在が二人の邪魔であることを再認識し、エリーナが王妃になる道はないのかと探り始める――。
「エリーナ様を王妃に据えるにはどうしたらいいのかしらね、エリオット?」
「一つだけ方法がございます。それをお教えする代わりに、私と約束をしてください」
「どんな約束でも守るわ」
「もし……万が一、王太子殿下がアナベル様との『婚約を破棄する』とおっしゃったら、私と一緒に隣国ガルディニアへ逃げてください」
これは、悪役令嬢を溺愛する従者が合法的に推しを手に入れる物語である。
※タイトル通りのご都合主義なお話です。
※他サイトにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる