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第一章 ヒロイン視点 悪役令嬢の断罪

7.君に決めた

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相変わらず誰も、何も言わない。

もう、めんどくさいな。
誰がやったか知らないけど、隠れてないで出てくれば。

まあ、指示した奴はロザリーだろうけどさ。

私はお前らなんか、一撃で倒してあげる。
私は、つよい。この教室の、誰よりも。


さあ、もう、先生来るよ。早く来い。


「……ねえ、あなた、今日はおうちに帰った方がいいのじゃない?机は、みんなで探しておくから」


おや、様子見をしていた女の子が話しかけて来た。

栗色の髪に栗色の瞳。目立つ容姿じゃないけど、なんだか落ち着きのある、均整のとれた顔立ち。

ええと、確か、アリスだったか。
ずっと、周りで我関せずの態度でいたグループの子だ。

多分、アリスは実行犯じゃない。
なのに話しかけてきた。勇気あるね。

でも、引けない時もあるのよ。


「ううん、むしろここから全員出さないよ?
私の机をどこかに捨てた犯人が、この中にいるんだもん。
先生にちゃんと言って、犯人には学校を辞めてもらわないと。
そんな悪いやつと一緒に勉強なんかできないよね?」


「はあ!?出さないって、どういうことだよ!
辞めるとかなんでお前が決めんだよ!」

がたん!
勢いよく立ち上がったおかげで、自分が座っていた椅子を倒した奴がいた。


いつも派手に騒いでる、血の気の多い男子。
辞めてもらわなきゃ、に、釣られたかな?



あ、てことは君もやったんだね?


そういえば、こいつは主犯格の女の子達に気に入られてる、運動がよくできる奴だ。
普段から、何でもいちばん先に手をあげるタイプ。
剣術も多分いい成績を収めているはずだ。

この中では、多分、つよい部類に入るやつだ。



うん、君に決めた。



教壇から降りて、その子の目の前まで進む。

だん、だん。足音をわざと大きく立てて、ゆっくりと、目の前まで。
息をすると相手にかかるくらい、近く。


「出さないって言ったの。
先生、もうすぐ来るでしょ?それまで待てをするくらい、できるでしょう?
ねえ、忠犬わんわんくん」


かっと、そいつの顔が赤くなった。

え、図星かな?

くすくすと、嫌な笑いが漏れた。
あれ、これ、私の声?どこか遠くから聞こえるような気がする。


黒いどろどろが、出口を探して、目の前の男の子を見据える。

「わんわんくんの飼い主は誰かな?この中にいるよね?先生によぉく聞いてもらわなきゃね」


八つ当たりだ。わかってる。この子だけが悪いんじゃない。
でも、止められない。

黒いぐるぐるは、今にも出てきそうなのに、出口がなくて戸惑っている。

なんだろう。こいつも黒くしちゃえばいいのに。


目の前のわんわん君は、顔を真っ赤にして怒っている。
怒るってことは、机、隠したんだよね?
それでも、ごめんじゃなくて、怒るんだね?


ぐるぐる、ぐるぐる。

あ、わかった。あったかい。
これは、カラムの手だ。カラムのあったかさが、ぎりぎりで黒いぐるぐるの出口に蓋をしていた。

そうだね。
悲しませたくない。がっかりされたくない。


ちょっとだけ、方針変更。

ふん。ちょっとだけだからね。
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