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54話

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「それで、話とは何かね」

ここはユイの自宅。

高級住宅街の中でも、さらに異質。
海外のセレブが住んでるような、広い土地の中にポツンとある真っ白な家。

移動に車が必要なくらいの広さを、レオナの転移で移動する。


執務室にて、ユイの父親が待ち構えていた。

ユイの父ガクホウさんは、誰もが知る有名企業グループの会長をしている。
すごいのは、1代でトップまで駆け上がったことであり、人呼んで『若き獅子』の異名を持っている。

【白夜】がダンジョンに潜るようになって、どこよりもダンジョン探索関連を取り扱う子会社を設立したところ、さらに稼ぐようになったとかいう話だ。

そんな会長が僕らの前に居座っている。

「パパ、実は……」

「いや、良いよユイ。これは僕から話す」

真っ先に話そうと口を開くユイを制して、僕はガクホウさんに事の経緯を話した。

「ふむ、それで私の知り合いに弁護士を……か」

経緯を聞いたガクホウさんは、ギロリと僕を見る。

「はい。自分1人で戦おうとしましたが、皆に諭され、無謀であることに気付きました。周りの力も借りて皆で解決したいと思い、ガクホウさんのお力添えをお借りしたく、参りました」

「はぁ……」

深いため息を吐くガクホウさんは暗い表情をしていた。

「…やはり、迷惑な話でしたよね」

「パパ!」

「いつ…言ってくるのかと思っていたよ」

「え?」

「本来であれば昨日の内に言っておく必要が、いや、配信前にはこういうリスクがあることを理解しておく必要があった。誹謗中傷を訴えるのにかかる時間は、トータルで半年から1年かかるんだ。それを君は知っていたかい?」

「い、いえ」

「そう。配信者はこういうことに注意しておく必要があったんだ。考えが甘すぎだよ」

確かにそうだ。

気をつけなければ炎上する、それは僕にも分かっていたことだけど、炎上した後のことは考えてもいなかった。

ガクホウさんの意見は最もだ。

「はい…自分の考えが甘すぎました…」

「うん。高校生だから…という考えは捨てなさい。配信者として活動するなら、こういうことがあるということも念頭に入れること。次からは気をつけるように」

「わ、分かりました」

「さて、話は変わるが…」

ギロリとした目が、さらに強くなった。

空気が一気に重くなることを感じた。

「君はうちの娘と付き合うと思っていた…」

「ん?」

え?

「とぼけるんじゃない!私は、シオンくんとの付き合いなら、結婚も許可するつもりだった!だが、娘は、そこのイケメンと付き合ってしまった」

ガツン!と、机に拳を叩きつける。

「え、?え?」

困惑してるのは僕だけか?

4人とも「またか」って顔をしてるし!?

「ガクホウさん、またその話っすか?」

「何回目になるのよ…」

「パパ?」

「何度でもだ!!くそっ、シオンくんなら大歓迎だったと言うのに…」

「すいませんねぇ、ユイがなびいたんで」

「てめぇ、言っていいことと悪いことってあるだろうが!!」

「パパ!?口調が荒ぶってます!!落ち着いて!!」

えぇ……どういうこと。

「実はガクホウさんとナツの父さんはめちゃくちゃ仲良いんだよ。んで、ナツの父さんってめちゃくちゃ陽気な人だろ?んで、ガクホウさんって堅いだろ?それで顔を合わせると喧嘩してるんだけど、ナツも陽気だから、面影を感じるんだろうな」

あ、なるほど…。

確かに、ナツの父さん…ヒロさんはめちゃくちゃ明るくて陽気な性格だからか、憎めない人なんだよな。

でも、息子までそんな口調になることある!?

「日常茶飯事だから、気にすることないわよ。認めてなかったら一緒に居ることもないし、まぁ、スルーしておけば良いのよ」

とレオナも呆れていた。

「あの……弁護士の話は?」

話を割って、戻そうと声をかけてみる。

「ああ、既に話は通しているよ。シオンくんは大切なうちの娘の友人だ。僕のコネをフル活動させて対応しているから、任せておきなさい」

「あ、ありがとうございます!!」

「たまにはうちにも顔を見せに来なさい。母さんもシオンくんが来るのを楽しみにしているんだから」

「はい!ぜひお邪魔させていただきます!」

「うん」

ナツとガクホウさんは言い合いを再開していたから、僕らは執務室を後にした。

「ありがとうユイ」

「え?」

「既にガクホウさんに話をつけてたんだよね?」

「いえ?そんな話はしていませんよ。パパが自分から行動していたんだと思います。しっかりシオンさんの配信は見ていましたもん」

そうだったんだ…。

忙しくて見ていないものだと思っていた。

「毎回感想メッセージが来てましたし、『スーパーチャットは解禁しないのか?』って、ずっと言ってましたもん」

なんだか嬉しいような、恥ずかしいような。

「ミオさんも、忙しい中来て頂きありがとうございました」

「本当は…喋らないと…いけなかったのに…」

僕の後ろでくっついていたミオ。

しゅんとしたミオに、ユイが優しく声をかける。

「いいえ。ミオさんが来ていただいただけで助かりました。今後も仲良くして頂けると助かります」

「もちろん…です」

「さて、用は済んだし帰りましょうか。ミオさんも連れてシオンの家でパーティーよ!」

レオナがそう言うと、転移にて僕の家へと戻った。

せっせとタケルとレオナが、コップにオレンジジュースを注いで、みんなに手渡す。

「改めて、シオンの初彼女にカンパーイ!」

「「「かんぱーい!!」」」

パーティーが始まる。

レオナやユイが、ミオに質問攻めをしているようだ。

僕のどんなとこが好きになった…とか。
いつからか…とか。

せめて僕の居ない時にやってくれよ。

ミオも顔を赤くしながら答えてるし…僕まで恥ずかしい。

「なぁシオン」

「ん?」

「シオンに、こんな素敵な彼女が出来て、本当に俺は嬉しいぜ」

「やめてよ、恥ずかしいな」

「シオンこそ、真っ先に彼女が出来てもおかしくないと思ったんだぞ。勉強はできるし!料理も上手いし、家庭的だろ?」

「でも、料理をするようになったのは高校生になってからだし…」

「めっちゃ優良物件だと思うんだけどなぁ」

考え込んだタケルが、ハッとしたように周りを見渡す。


「ナツは?」

「「「「あっ…」」」」


ナツとガクホウさんは、言い合いを続けていた。
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