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第四章

呼んだ?

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「呼んだ?」

 ええええ?

 エドワルドがぎょっとして振り返った。

 私も媚薬のせいで幻聴が聞こえたのかと思って、うつろな目で辺りを見渡す。

 寝室の入り口の扉に寄りかかるようにして、軍服姿のリッツ・マルソーが立っていた。

 というか――勃っていた。

「何……してるのよ」

 私は怒りとともにエドワルドを押しのけていた。

 マルソー少将は気まずそうに、髪を撫で付ける。

「いや、一応助けに来たんだけどさ、なんかその、エロかったから」
「い、いつから……ずっと見て……たの? あなた……状況……分かってる!?」

 途切れ途切れの息で、何とかそれだけ言った時、後ろから羽交い絞めにされた。

「不法侵入とはどういうことかね、君。貴族の秘め事をのぞくとは」
「だって何回もノックしたぜ? あとその子、俺の秘め事も覗いてるから痛み分けだって」

 エドワルドが私の顔を後ろに向かせて、無理やり唇を吸った。

 私は抵抗する気力も無くし、されるがままだった。

 少将に、こんなところを見られていたという絶望感で、もうどうでもよくなっていた。

「この通り、今は愛する婚約者と結合の儀式を行っている。すぐにここから立ち去りたまえ。乙女が散る、大切な儀式だ」

 リッツ・マルソーは無言だ。

 私はぼんやりした目で彼の姿を捉えた。

 ドキッとなる。

 すごく冷たい目をしている。

 ふざけた口調だったけれど、目がまったく笑ってない。

 いつもの彼じゃない。

 そのとき、彼の後ろの扉がトントンと二回ノックされ、少将が後ろも向かずに軽く返事をした。

 ほんの少し扉が開くと、封筒が手渡される。少将はそれを後ろ手で受け取ると、

「急がせてごめんね、シュナイダー少尉」

 と、扉の向こうに大声で言った。

 それからこちらにツカツカと近づいてきて中身を広げ、エドワルドの顔の正面に突きつける。

「誘拐と強姦未遂で、はい、逮捕。これ、令状ね」

 エドワルドが愕然となる。

「なな、何を言ってるんだ君はっ。私は南部最大の領地エルンストの跡継ぎで、政変では支援金として莫大な資金を軍部に――」
「これからの世の中、貴族だろうが神様だろうが、庶民と同じように裁かれんのよ。貴族が生き残りたいならある程度の特権は廃止されるのが当然だよな? 犯罪者は犯罪者なわけ、了解?」

 そういうと、エドワルドの腕をねじり上げて私から引きずり離す。

 そのまま、か細い声で痛みを訴えるエドワルドを、無理やり扉の外に放り投げた。

「少尉、あと頼むね」

 そして乱暴に扉を閉める。

「令状が……来るの……を待ってい……たのね」

 私は自分の身体を抱きしめながら、ベッドの隅に蹲った。

 片手が股間に伸びそうになるのを、もう片方の手でとめる。

 びくびくと打ち震える私は、少将に情けないところを見られたくない一心で、必死に自分の身体を押さえ込んだ。

「あーあ、ピンク色に染まっちゃって」

 少将はゆっくりと近づくと、ベッドに腰掛けた。そしてシーツをかけてくれる。

「何ていうやつ飲まされた?」

 私はシーツの中で必死にドレスを直しながら、むせび泣きを堪えて答えた。

「『天使の涙』って言ってた」

 少将が沈黙する。

 私はほっとした。

 彼の低く心地のいい声だけで、興奮してしまうからだ。

 雄の声。ゾクゾクが止まらない。

 シーツの外でため息が聞こえた。

「なんていうか、俺ってこういう運命なのかねぇ」

 私には意味が分からなかった。

 次の瞬間シーツが取り払われる。

「いやっ」

 私は泣き叫んだ。

 耐えきれず、再び乳房を揉みしだきながら、股間をいじっていたからだ。

「恥に思わなくていい、それは薬のせいだ。やっかいな媚薬なんだよ『天使の涙』ってやつはさ」

 そして驚く私の前で、少将はベルトを外した。

「どれくらい盛られたかは分からないけれど、一度イかなきゃ、まともになるまで時間がかかるんだよな、その媚薬」

 私はその言葉を聞いてなかった。

 少将の黒王号をじかに目の当たりにしたから。

 エドワルドのとは全然違う。

 規模が。

「俺ので我慢してね。無かったことにするから」

 ちょっと寂しげに呟いて、少将は私を引きずり寄せた。




※ ※ ※ ※ ※



 メアリーベスが、内臓の位置が変わる、と言った理由が分かった。

 こんなものが入るわけが無い。

 欲しいのに、どろどろに溶けた頭の中にも恐怖心が芽生える。

 だって私は処女だ。

「俺が愛撫したわけじゃないのに、ぐちょぐちょだ」

 何が気に入らないのか、少将は毒づく。

 そして私のお尻を抱え上げて、自分のそそりつモノの上に降ろそうとした。

 恐怖で、思わず彼の身体を押しのけようとする。

「む、無理よこんなの、入るわけが無いわ」
「あの媚薬の力、なめんなよ? どんだけ濡れてると思ってんだ」

 少将はそう言うと、かまわずに私を降ろした。

 ずぶっと一番大きい頭の部分が入ると、私は欲しかったモノをやっともらえた喜びにうち震えた。

 そして自分から腰を落とす。

 ブワッと鳥肌がたち、両方の乳首が薄い布を押し上げる。

「ぁあっ……あぁっぁぁあああっ少将~っ!!!」

 ぶるぶると身体が震える。

 この快感を味わいたいがために、女たちはこの人に群がるのだ。

 彼は額に汗をびっしり浮かべて私の顔を見ていたけれど、舌打ちし、いきなり私の唇を吸った。

 私はそれに応えて口を開け、彼の舌を求めて自分の舌で彼の口腔を探った。

 すぐに二人の舌は絡み合った。

 ぴちゃぴちゃという音が部屋に響き渡り、それがよけいに私を興奮させる。

 彼は口を離すと、こらえるような表情を浮かべながら私を見つめた。

「小さいな。あんたの穴は小さすぎる。これじゃ俺は長くは持たないぞ」

 少将の額の汗が流れ落ちる。乱れた黒髪が一筋張り付いていた。なんて、色っぽいんだろう。

 私は首を降りながら、少将に乳房を押し付ける。

「お願っ……ああっ突いてぇえええっあああっ激しく」

 無意識に彼の首にしがみついて、悲鳴のようにそう懇願していた私。

 処女でも、本能がそうされれば気持ちいいのだと分かっていた。

「おね、おねがっ……ひっひぃいいぅぅっめちゃくちゃに貫いて!」

 リッツ・マルソーは汗まみれの私の頬から、張り付いた髪の毛をどけると、にっこり笑って首筋に鼻を寄せた。

「じゃー遠慮なく。後で怒るなよ」

 少将は、私を持ち上げた。あそこが擦れ、私は目を見開く。

「だめ……抜いちゃ……いやっ」

 中が空洞になったら、私は死んでしまう。

 次の瞬間また、押し下げられた。

 ズンッという衝撃に頭が真っ白になる。

 それは、もし私が経験者なら、全ての価値観が変わるような瞬間だった。

 私の中にあった空洞をぴったりと埋めただけではなく、私という固体を押しのけるかのような衝撃。

 再び少将は軽々と私を抱えあげ、抜ける寸前で落とした。

 何度もそれを繰り返され、私はそのたびに悲鳴をあげた。

 ガツンガツンと子宮の奥に当たるたびに、死んだり生き返ったりしているような気分になる。

 少将の動きはどんどん速くなって、やがては息もつけなくなった。

 脳内に麻薬を注入されているような感じだ。

 その間私は、悲鳴と言うよりもう、獣のような吠え声を上げ続けていたのだから。

 声が枯れるほどの絶叫のあと、頭の中で何かが焼ききれたようなそんなイメージが浮かんだ。

 瞬間、彼のモノが抜かれ、身体が痙攣したことにすら気づけなかった。

 私はぐったりと少将の肩にもたれる。もう、意識を保っていられなかった。

「よくがんばったよ、ゆっくりお休み」

 泥の中に落ちていく意識の中で、甘く低い、でも少し悲しげな声が、耳元で囁いた。


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