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離婚(?)編
初日の出
しおりを挟む翌日、寝坊して初日の出は拝めなかった。
夜中騒いでいた使用人たちも寝坊し、起こしてもらえなかったのだ。
「すまん、息子よ」
侯爵は、ダニに吸われたような顔で俺に謝ってきた。
「命を懸けた最高の初日の出を見せてやりたかったが、腰をやってしまってな」
義父も姫初めが止まらなかったらしい。まだ若いもんな。
「すごい顔だな」
侯爵に言われ、お前もな! と無礼にも言い返しそうになった。
が、おそらく二人とも身体中吸い痕だらけなんだろうなと想像し、気まずげに目を背ける。
「侯爵は、良かったんですか?」
「良かったに決まってるだ──」
「昨夜の事じゃなくて!」
俺は果てしない惚気話が始まりそうなことを察し、慌てて遮って聞き直した。
「ノエルの夫が俺で……良かったんすか?」
もごもごと、目を逸らしたまま言う。
「孫の顔、見たかったですよね?」
孤児院から救い出してくれた侯爵夫妻の心中を思うと、自然、声は暗くなる。
「我々の結婚は、大反対された」
侯爵の言葉を聞いて、俺は目を見開いた。
「両方、侯爵家の嫡子だったからな」
そうか。魔力がお互い強すぎても、子はできにくいんだもんな。むしろ、俺たちより──。
「それでも、あれが欲しかったんだ」
生焼けの肉の皿を見せながら「朝食も、私が手伝ったのよ~」とダイニングに入っていく侯爵夫人。
俺は共感のあまり、大きく頷いていた。
「諦めきれなかった。だったら、それ以上の幸せをあげるしかあるまい」
侯爵の言葉は、心に沁みた。
「思ったより、魔法結界回路の補助は、魔鉱石を食うな?」
俺の表情がどんよりと暗くなったのだろう、侯爵はやっぱりな、と呟いた。
「地下鉱床からの採掘が追いつかん今、辺境伯らの魔法もしばらく必要だろう。それでも、君のおかげで当面の結界強化は成功したんだぞ?」
「でも、貴族の当主らは交代で、魔力補強のため国境へ出張することになっています。侯爵だって……。今後も魔法が必要で、貴族はノブレス・オブリー──」
「ごめんな」
ブーシャルドン侯爵に謝られて、俺は面食らった。
「アレクがそんな風になったのは、周りの大人が君に過度な期待をしたからだ」
申し訳なさそうな口調だった。
「なあアレク。国を守るのは、国民全員の義務だよ。貴族は、高貴なる義務を押し付けられているわけではない。それに君も、一人で抱え込まなくていい」
ふっ、と肩の荷が降りた気がした。
すると、ドンッと拳で胸を叩かれる。義手じゃない方で軽くだが。
ブーシャルドン侯爵は咳き込んだ俺を見て、ニヤッと笑う。
「悩むな、アレク。お前の義務は、あの子を泣かせないことだ。簡単なんだよ。あの娘は、君がいるだけでいいんだから」
翌日、どうしてもと言うノエルの意向を汲んで、みんなで雪山登山をした。
真っ暗な空が徐々に明るくなり、その御来光に皆目を閉じた。六聖人の一人ジョヤーに祈る。
「アレクが一人で悩まず、なんでもわたくしに相談しますように!」
聞こえてるよ、ノエル。わざと大きな声で言うなよ。
※ ※ ※ ※ ※ ※
その年、ノエルは無事に懐妊した。
魔法医師の診断によれば、お腹の子はラスボスレベルに魔力があるということだが、別に魔力なんて無くても構わない。
そう思えるほど純粋に、ただ誕生だけを心待ちにしている。
生まれた子は大変高飛車でワガママな女の子で、まるで誰かさんそっくりに育つんだけど、俺がメロメロになり、ノエルに焼きもちを焼かれ、毎日伝染病みたいにされるんだけど、そんな話はみんな、興味無いだろ?
だから、俺たちの話はここでおしまいだ。
完
ご愛読ありがとうございました。
ベルトラン編、ユベール編もよろしくね!
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(ノ≧ڡ≦)☆
ギリ!
魔王Jr.が無事誕生でホッ。ハッピーエンドありがとうございました。ヘコタレアレクにギリパパエールがまた泣かせる! いやぁ当事者だけでないラブラブは厚みが出て良いですね!! ベルトラン編も楽しみにしております。
最後まで御付き合いくださりありがとうございます!
♡*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*♡
いやー、ベルトラン編また爆更新だけど、ゆっくり読んでくだいね❤
ノエルたんもチラッと出るお!