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本編
卒業パートナーのお話
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ついに王立学院の方からは、貴族の令息が──つまり、生徒まで出陣するようになりました。
当主が戦死した場合、次の当主が行くしかありませんものね。
当学園を含め、各地のパブリックスクールの生徒たちも、魔法科の実技授業を増やし、徴集に備えだしたのです。
さらに、貴族ならば次世代に魔力を残すのも大事な義務。この戦争がいつまで続くか、決着がつくのかすら分からないため、未来の徴集や戦死に備え、結婚を急かされる方々もいました。
そういった意味で、学生結婚する貴族たちが増えてきたのです。
「卒業パーティは、普通にやるようですわよ」
別クラスの令嬢たちが、わたくしにそう教えてくれました。
たまに寮の温室でお茶会をするのですけれど、彼女たちの情報は早くて助かります。
「学長を含め、魔法講師たちも出陣するそうですけど、今の三年生を卒業させてからですって」
それから、辛いことから目を背けるように、ドレスの新調の話や入場パートナーの話題に移ります。
卒業パーティは、会場にエスコートする際のパートナーを自分で見つけることになるのです。
もちろん、一人で参加して会場で相手を見つけるのも有りですが、伝統に従い会場に入るまでの付き添いを予約する生徒は多いのです。
「エスコート役と、そのまま付き合ってしまうカップルが多いらしいわね。結婚までいくこともあるそうよ!」
「うちは、その相手がお母さまだったって、お父様がおっしゃっていたわ」
「わたくしの母も、父がパートナーだったって。素敵よね!」
「うちの一家も、卒パの相手と盃を交わしたと言ってやしたわ!」
よくよく考えれば、適齢期の男女が舞踏会のパートナーを誘うなら、きっと好きな相手でしょう。
そうなるのは必然の気がします。
「ノエル様はどなたを誘うのかしら? ベルトラン様? それともユベール様? あとは特待生クラスって、貴族の令息はどなたがいましたっけ?」
わたくしはドキドキしてしまいました。
平民を相手に選ぶという選択肢は、彼女たちには無いのでしょう。
べつに絶対にお付き合いするわけではないのだから、アレクでもいいじゃない、と思うのですが。
まだ国家研究員になってないアレクを誘うのは、貴族の常識としておかしいのでしょうか。
それでもわたくしは、どうしても誘いたかったのです。
だって、アレクと関わるのは、これで最後になるかもしれないから。
わたくし、戦地のお母様からお手紙をいただきましたの。
ええ、白衣を着て、癒し魔法を持つ貴婦人たちが兵站地に向かったのは、二ヶ月前です。
──ノエルちゃん、お元気?
わたくしは少し疲れています。前線のお父様、負傷した体で今も戦っているそうです。心配ですわ。
わたくしも、魔力が足りなくなってきましたわ。でも、国民のために頑張りたいの。
寂しいでしょうけど、もう少し待っていてね──
母からの魔声メッセージは、とても弱々しいものでした。
お父様、けっこう危ないのではないかしら。そしてお母様の魔力も限界。
わたくし、じっとしてなんていられません。
すぐにペンを取ると、議会に嘆願書を提出しました。
当主が戦死した場合、次の当主が行くしかありませんものね。
当学園を含め、各地のパブリックスクールの生徒たちも、魔法科の実技授業を増やし、徴集に備えだしたのです。
さらに、貴族ならば次世代に魔力を残すのも大事な義務。この戦争がいつまで続くか、決着がつくのかすら分からないため、未来の徴集や戦死に備え、結婚を急かされる方々もいました。
そういった意味で、学生結婚する貴族たちが増えてきたのです。
「卒業パーティは、普通にやるようですわよ」
別クラスの令嬢たちが、わたくしにそう教えてくれました。
たまに寮の温室でお茶会をするのですけれど、彼女たちの情報は早くて助かります。
「学長を含め、魔法講師たちも出陣するそうですけど、今の三年生を卒業させてからですって」
それから、辛いことから目を背けるように、ドレスの新調の話や入場パートナーの話題に移ります。
卒業パーティは、会場にエスコートする際のパートナーを自分で見つけることになるのです。
もちろん、一人で参加して会場で相手を見つけるのも有りですが、伝統に従い会場に入るまでの付き添いを予約する生徒は多いのです。
「エスコート役と、そのまま付き合ってしまうカップルが多いらしいわね。結婚までいくこともあるそうよ!」
「うちは、その相手がお母さまだったって、お父様がおっしゃっていたわ」
「わたくしの母も、父がパートナーだったって。素敵よね!」
「うちの一家も、卒パの相手と盃を交わしたと言ってやしたわ!」
よくよく考えれば、適齢期の男女が舞踏会のパートナーを誘うなら、きっと好きな相手でしょう。
そうなるのは必然の気がします。
「ノエル様はどなたを誘うのかしら? ベルトラン様? それともユベール様? あとは特待生クラスって、貴族の令息はどなたがいましたっけ?」
わたくしはドキドキしてしまいました。
平民を相手に選ぶという選択肢は、彼女たちには無いのでしょう。
べつに絶対にお付き合いするわけではないのだから、アレクでもいいじゃない、と思うのですが。
まだ国家研究員になってないアレクを誘うのは、貴族の常識としておかしいのでしょうか。
それでもわたくしは、どうしても誘いたかったのです。
だって、アレクと関わるのは、これで最後になるかもしれないから。
わたくし、戦地のお母様からお手紙をいただきましたの。
ええ、白衣を着て、癒し魔法を持つ貴婦人たちが兵站地に向かったのは、二ヶ月前です。
──ノエルちゃん、お元気?
わたくしは少し疲れています。前線のお父様、負傷した体で今も戦っているそうです。心配ですわ。
わたくしも、魔力が足りなくなってきましたわ。でも、国民のために頑張りたいの。
寂しいでしょうけど、もう少し待っていてね──
母からの魔声メッセージは、とても弱々しいものでした。
お父様、けっこう危ないのではないかしら。そしてお母様の魔力も限界。
わたくし、じっとしてなんていられません。
すぐにペンを取ると、議会に嘆願書を提出しました。
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