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本編

可哀想な孤児のアレク

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 ええ、ええ、分かっておりますわ。

 貴方みたいに野暮ったいメガネの平民など、このわたくしが気にかけるなんて変よね?

 わたくしは、真面目に講義を受けているアレクの背中を後ろの席から眺めつつ、クスッと笑いました。



 ここは国内初の男女共学私立学園パブリックスクール

 上流階級の男女──十三歳から十八歳まで──が、通う私立のお金持ち学校なのです。

 孤児だったアレクサンドル・マイヤールは、侯爵家の令嬢であるわたくしと違って、本来ならこんなお金のかかる学校には入れませんのよ?


 アレクに出会ったのは、八歳くらいの時かしら。

 劣悪な環境の魔石鉱山で働かされていたアレクは、病気になって道端に捨てられていたそうなの。

 ガリガリにやせ細って肺を病んでいた彼を見て、孤児院を訪問していたお母さまが治癒魔法を使ってあげたのですわ。

 だって、貴族は魔法を使えるんですもの。

 一緒に訪れたわたくしも、まだ魔力は弱かったけれど、お母様を補助して一生懸命治してあげました。

 まあ、失敗してわたくしの方がぶっ倒れましたけどね……。

 魔石鉱山の空気は、とても悪いそうなの。

「子供は、狭い穴を行き来して魔鉱石を外に運ぶのに重宝されるのよ。でもこんな幼い子まで──労働法違反だわ」

 お母様が痛々しそうに、そうおっしゃっていました。

 わたくしたち、治療のために何度か孤児院に通ったのです。

 そのうちに、育ちの悪いはずのアレクが、礼儀正しくてとても利発であることが分かりました。

 あとで知ったのですけど、見た目より年齢がいっていたのね。栄養状態が悪かったせいで、とても小さかったの。わたくしよりうんと下だと思っていたくらいですもの。

 とにかくお母様は、アレクをとても気に入ったのです。

 そこで、わたくしの父が後見人を務め、優秀なアレクを成人まで育てることになりましたの。

 以来、わたくしがアレクの面倒をみてあげてますのよ。


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