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アリビア帝国編 Ⅱ

ップッペッペッペッ

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 翌日、想像通りというか、ヘンリーがものすごい勢いで走ってきた。

 砂埃をたてて座り込み、地面におでこを擦り付けてリンファオに土下座する。

 これが世に名高いスライディング土下座というやつか、リンファオは複雑そうに見おろした。

「ごめんよリンファオ。あいつが勝手なことを。あいつは僕の嫌がることは何でもしたがるんだ。ああ、取り返しがつかない。どうやったら君に許してもらえるんだ」

 リンファオは苦笑いした。許してもらいたいのはこっちのほうだ。

 ヘンリーと褥を共にしたのに、エドワードだったことを一瞬喜んでしまったのだから。彼を裏切ったも同然だ。だけど、ヘンリーが好きなことも確かなのだ。

「どうして二重人格なんでしょうね」

 リンファオは、思わずぼやいていた。

 ヘンリーの身体がビクッと震える。

 責めているわけではないが、本人の方が気にしているのだ。リンファオは申し訳なく思った。

「ごめんなさい。私──」
「違うんだ、僕のせいなんだ」

 地面に頭を擦り付けながら、ヘンリーはしゃくりあげた。泣いているようだ。

「数年前……そう、子供の頃に、僕の能力は皇帝に知られてしまった。皇帝は、僕や父親の意志など関係なく、嫌な仕事を押し付けてきた」

 リンファオがハッとなって、武器開発の施設を振り返る。ヘンリーは頷いた。

「人を殺す道具だ。武器だけじゃない。罪人をより残忍に殺す見せしめ用の器具や、拷問具、暗殺用の毒薬もだよ。出回っているどの薬よりも、長く、苦しんで死ぬやつを要求された。──反勢力の見せしめにするために。僕は嫌だった。絶対に作りたくなかった。そんなもの生み出すなら、死んだほうがマシだと思った。だけど僕が断れば、けっきょく他の者が作らされる。それに、皇帝の命令は絶対で──」

 ヘンリーは土蜘蛛の少女を見上げた。

「ある日あいつが出てきてくれた。エドワードだ。彼は、僕が嫌なことを全部引き受けると言った。僕はあいつがやっている間、こもっていれば良かったんだ。逃げたんだ」

 リンファオは目を閉じた。

「別人がやっていることにしたかったんですね」

 リンファオの静かな声が、二人の間に落ちる。

「父親を憎むのも、エドワードに肩代わりさせた」

 ヘンリーの肩がびくりと揺れる。ややして溜息とともに頷いた。

「そうだ。エドワードは僕が逃げるために無意識に作り上げた人格なんだ」

 胸が痛かった。子供時代のエドワードはどれほど苦しかっただろう。

 リンファオは張り裂けそうな胸を抑えながら、絞り出すような声を出した。

「私にとっては、同じ人間です。同じ人間ってことは、きっとエドワードだって辛いんだ」

 ヘンリーの目が見開かれる。リンファオは、エドワードの苦しさを思って涙を流した。

 土蜘蛛の目からこれほど涙を流させるなんて、この人たちはすごい。

 既にすっかり泣き虫になってしまっていたリンファオだが、それは二人のせいにした。

「聞いてください。私は……ヘンリー、貴方のことが大好きです」
「リンファオ」

 顔を輝かせるヘンリーに、畳み込むように言う。

「だけど、エドワードのことはもっと大好きなんです。だって、彼は逃げないヘンリーだから。私は両方受け止めます」

 言った直後、乱暴に胸ぐらを掴まれて引きずり寄せられた。

「ヘンリ……」

 覆いかぶせるように強引に口づけをされて、言葉が途切れる。すぐに唇を離すと、彼は低い声で言う。

「本心じゃなかった」

 ヘンリーが怖い顔で言った。いや、彼はまぎれもなくエドワードだ。

「お前のこと化け物だなんて、思っちゃいない。俺は誰からも愛されるヘンリーに嫉妬していたんだ。拒絶を恐れて何も出来ないヘンリーに、苛立っていた。何よりも、俺が、おまえを抱きたかったんだ」

 リンファオは笑った。

「良かった。また酷いことを言われたらどうしようかと思いました」

 それを見てエドワードは、たまらなくなった。

「悪かった。傷つけて。……化け物のように綺麗だってのは本当だけど、気持ち悪くなんかない。神とか天国とか信じたことないけど、おまえは天使みたいで、俺みたいな奴が汚してはいけないと思ったんだ」

 リンファオはち、ょっと目を伏せた。

「汚して」

 そのまま耳元で囁いた。

「あなたになら、どれほど汚されたっていいよ」

 エドワードは目を見開き、信じられないとでも言うように首を振った。

 そしてリンファオの頬を撫で──次の瞬間、そのまま少女の体を抱き上げていた。

 煽っておいてなんだが、お姫様抱っこに目を白黒させるリンファオ。

 エドワードは脇目もふらずに、早足で自室に向かった。途中、空気を読まない研修生たちに声をかけられる。

「あ、エドワード、回転式の弾倉を持つ銃の試験会はいつに──」
「おまえが取り仕切れ!」
「来週、海軍工廠での造艦指導を頼まれていますが、エドワードが行って──」
「工場もろとも爆破しろ!!」
「エドワード、この設計図どこが間違ってますかね、銃が暴発して親指が飛んだんですが──」
「うるせえぇぇぇえっ!!!」

 と、エドワードはそんな彼らを一喝し、見向きもしなかった。

 リンファオは申し訳なく思った。めったに出てこないエドワードは多忙だ。

 しかし、群がってこようとする研究チームの助手たちを蹴散らしたのは、使用人の女たちだった。

「やっとあの子たちに春が来たんだよ」
「邪魔したら殴るよ、この青二才ども」
「指? 舐めときゃ治るよ」
「おぼっちゃまお幸せに」
「次は男の子をお願いしますっ」

 背後から拍手とともに見送られて、リンファオはいたたまれなくなった。

 シャオリーが使用人の一人に抱かれて、手をふらされている。声色を使ってその使用人が鼓舞した。

「ママ、シャオリー弟が欲しいでちゅ」

 エドワードの頭の中は、リンファオと結合することしか考えていないようで、まったく気にしていなかった。


 バンッと自室の扉を開けると、リンファオを片手に抱き直し、白衣のポケットに手を突っ込んで小さな猫──もとい、虎を取り出す。

 そのまま容赦なく外に放り捨てた。ギャオッと小さく怒った声がしたが、無視。

 そして後ろ手にがっちり鍵を閉めた。

 そのままの勢いで、ベッドに放り投げられる。

「三秒で脱げ」

 そんな、どこかの怪盗じゃないんだから。

 リンファオは思ったが、見事というか、エドワードは一秒で脱いだ。

「リンファオ!」

 怒鳴られて、慌ててモタモタとメイド服に手をかける。

 ふと視線を感じて顔を上げると、エドワードが咆哮をあげ、掴みかかってくるところだった。土蜘蛛らしからぬ悲鳴をあげたくなる。

 三秒でビリビリに服を破られた。

 この細腕のどこにそんな力が、とリンファオは思ったが、ウィリアム・アターソン発案製作の夜のメイド服だったと知ったのは後になってからだ。

 色々思うところはあったが、押さえつけられ、激しく口づけされ、何も考えられなくなった。

 しばらくお互いの口の中を探り合っているうちに、エドワードはやっと落ち着いたようだ。

 唇を離すと枕に肘をつき、しげしげとリンファオの顔を眺めた。

 リンファオはおずおず見つめ返す。吸い付かれて唇が腫れている。

 再び獣じみた衝動が沸き起こる。

 エドワードはその情欲を押さえつけるのに苦労した。

「すっかり、神々しい美しさに戻った」
「え?」
「汚していいんだよな?」

 リンファオはまごまごしながら、小さく頷く。エドワードがにやっと笑う。

「綺麗なほど汚しがいがある」

 先ほどの謙虚な言葉は夢だったのか?

 リンファオが青ざめていると、エドワードは、彼女の耳たぶをしゃぶりだした。

 耳元でぴちゃぴちゃ音がして、くすぐったい。

 耳の穴に舌を差込み、抜き差しする。それは性交を思わせた。

 リンファオは恥ずかしくなり、顔を背けた。しかし、反対の耳にもやられた。

「おまえの、穴という穴を犯す」

 宣言されて、思わず鼻を覆った。鼻の穴にやられると思ったのだが、エドワードはクスッと笑って、そのまま舌を首筋に這わせてくる。

 唾液を塗りたくるようにまんべんなく舐められ、リンファオの体がどんどん熱くなる。マーキングされてるみたいだ。

「あ……ん……」

 強く首筋を吸われ、リンファオの口からか細い声が漏れた。


 エドワードは、色っぽい声をあげたリンファオに、己の楔を打ち込みたくて気が狂いそうになった。

 ダメだ。もっと彼女が乱れる様を見たい。彼女のこの甘い、少女のような匂いを、全部自分のオタク臭で消してやるんだ。

 他の男が近づいてこないように。

 あの黒衣の少年が、二度とリンファオに気づかぬように。

 完璧な形の乳房まで舌を這わせると、そこにも遠慮なく吸い付いた。赤いキスマークが白い肌にどんどん印されていく。これ以上やると、変な流行病みたい思われる、そう考えたところでやっと止めた。

 それでも膨らみの上にある尖った可愛らしい頂きは、止めるわけにはいかなかった。小石のように屹立したそれは、弄ってくれとばかりにこちらを誘っていた。

 ご要望通り唇でついばむと、リンファオの体が突っ張るのを楽しむ。舌と歯で、何度も転がした。そうしながら、もう片方の乳首は親指で遊んでやる。

「……ん……ん……」

 必死に声を堪えている。馬鹿な娘だ。それがよけいそそるのに。

「乳首、すごく感じるみた──プッペッペップッ!」

 再び母乳がヘンリー……、いやエドワードの顔面を直撃した。

 エドワードは迷わず吸い付いた。ごくごくと音を立てて飲み込む。

 刺激するとミルクが出てきてしまうのは分かっているのだが、それでも舐めたり吸ったりするのをやめられなかった。

 シャオリーの分が無くなってしまうかも。

「甘いし、なんか力がみなぎってくるみたいだ。リンファオ、そんなに吸われるの気持ちいいの?」

 聞かれてリンファオは、潤んだ目をこちらに向けた。

「ど、どうしてそう思うの? あっ……やっ」

  エドワードが素早く内ももの奥に手をやって、秘所の奥をまさぐったものだから、リンファオは大きく喘いだ。

「これだけぐちょぐちょにしておいて、気持ちよくないわけがないからさ」
「ひぃぃあぁっ」

 トプンと指を入れ、中を掻き回すと、リンファオは腰を何度も浮かした。

「こいつは……まいった」

 乱れ狂う少女の色香に、エドワードはそう呟いた。指を抜き、トロトロの液を舐めてみせる。リンファオはぐったりしている。

 これから下半身もゆっくり──それこそ足の小指の先にまでキスマークをつけて、唾液でべちょべちょにしてやろうと思ったのに、無理みたいだ。自分が限界だ。

「きゃうっ」

 リンファオは四つん這いにされた。

「俺が動物好きだって知ってんだよな?」

 後ろからのしかかり、ヌルヌルした二つの双丘を揉みながら耳元で尋ねた。

 母乳で濡れて、尖りきった乳首をすりあわせながら、自分の強ばったイチモツをリンファオのまろやかな尻の割れ目に擦り付ける。

 なんども上下させ、その奥の裂け目から滴り落ちる愛液を、尻全体に塗りたくった。

 オタクの妄想そのままの体だ。排泄はしないくせに、涙と愛液は無限に出てくる。

 猫のように鳴いていたリンファオが、後ろを振り返りエドワードを見つめた。随喜の涙で光った目を瞬かせる。

「エ、エドワード、お願い」
「うん? 何?」

 とぼけてみる。リンファオが困ったようにもう一度せがむ。

「ね? お願い」

 執拗に肉棒で股間をこすられ、肉の芽を弄ばれて、リンファオも限界だった。恥ずかしいけど思い切って言ってみる。

「エドの大きいの、奥まで入れて?」

 エドワードの辛抱はそこまでだった。

 リンファオが言い終わるか終わらないかのうちに、肉の楔を泉の中にめり込ませる。

 奥の壁に当たるほど、深く入った。

 リンファオは絶叫した。

 さすがに外に聞こえるかもしれない、そう思ってエドワードは慌ててその口に蓋をした。自分の口で。

 彼はしなやかに動いた。

 不慣れなヘンリーとは違う。日頃のストレス発散のために、欲望のままに女を抱くこともあった。

 だがあんなもの、この日ための練習に過ぎなかったのだ。この奇跡のように美しい少女を抱いて、汚して、自分のところまで引きずり下ろし、自分の物にしてやるのだ。

 リンファオは激しいピストン運動の中、完全に自分がエドワードのものになるのを感じた。

 シショウの思い出が遠ざかっていくのを、意識した。

 何度も何度も貫かれ、頭の中が真っ白になっていくその中で、シショウはやがてその姿を消した。

「リンファオ」

 うっとりと振り返ると、エドワードはバックスタイルで犯していたリンファオから分身を引き抜き、リンファオを仰向けに押さえつけ──その完璧な造形美の顔面に、精を解き放った。

    
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