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第四章

聖王に会う

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 魔王として、次の手を考えなければならない。

 私は拙い魔力操作で自らに応急処置を施すと、一瞬で神聖グーグラリア王国に跳んだ。

 こうなったら直接、聖王を説得する! 交渉する相手を変える。これ以上被害が出る前に。

 聖王は元はグーグラ神を祭る神官──聖職者だとか。

 神殿は、魔物を倒す聖なる力を増幅することができる、唯一の機関だった。

 退魔用の武器を備えた討伐軍や、聖女による聖別を受けた勇者パーティー。これは、神殿──歴代の聖王を世界の頂点に押し上げるに足る要因だった。

 現在、彼に対抗できる王は存在しない。だからこそ、交渉は彼とするのが手っ取り早い。



 突然食事している部屋に現れた私に、当然だけど驚く聖王。ただ、違和感があった。軽く驚いただけだったから……。

 普通、予兆無く人が現れたら、腰抜かさない? ファンタジーだから?

 さすがと言うか、彼はすぐに私が何者か分かったようだ。

「ふむ、王宮は神殿より警備が厳しいが、神力による結界は弱い。ましてや、この部屋にはわずかな精鋭の親衛隊しかおらんしな。そなたほどの魔力であれば、転移しようという気にもなろう」

 身構える護衛たちと違い、この爺、ずいぶん余裕じゃないの。

 よけい違和感を持ってしまう。私が何者か気づいた上での、この態度に。

「お食事中、失礼」

  私も負けじと余裕を見せることにした。サラッと髪をかきあげ、艶然と笑いかける。そしてわざとゆっくり、王の正面にある椅子に座った。さらに肘を付いて、顎を支える。

「和睦を申し込みに来たわ、聖王」
「……ほう」

 王は口元をナプキンで拭くと、顎髭を整えながら先を促す。ピリッと警戒心が沸いた。

「全魔族に、人間を襲わないと約束させるわ。理性が利かない低級の魔物は、人里から離れた場所に移す」
「ふむ」

 さらに先を待つ王。

「だから、もう魔物を倒そうとしないで」

 聖王はしばらく私を眺めていたけれど、首を傾げた。

「それだけかね?」
「……へ?」

 何を言われてるか分からず、間抜けに聞き返してしまった。

 白い髭に覆われた口元が吊り上がる。

「我々に、大したメリットは無いな」

 神の加護を受ける人類の希望──聖なる王。この邪悪な笑顔を浮かべる老人が?

 聖王は私を上から下まで眺めまわし、舌で唇を舐めた。

「今度の魔王は雌であったか」

 ゾクゾクゾクと背筋を這い上る嫌悪感。

 この爺はまずい。

 ガタッと椅子から立ち上がり、後ずさる私に反して、聖王はゆっくり腰を上げ、身を乗り出した。

「余は、これほど美しい女は見たことがない」

 ハッと周囲を見渡すと、部屋の壁がぼんやり光っている。美しい色合いの魔方陣が浮かび上がる。

 次の瞬間、その壁の表面が浮き上がり、ぐぐっと私の四方に迫った。四方だけではない、天井まで落ちてきたではないか。

 これは──罠だ。

 バンッと透明な壁に手をついて壊そうとしたが、掌がじゅっと焼けただれただけだった。

「ふむ、魔王は完全な人型か。ネコミミとか尻尾とかあると萌えたんだがな」

 王は神力の箱に閉じ込められた私を、髭を触りながら愛でる。

「服が邪魔であるぞ」

 王がパチンと指を鳴らすと、身にまとっていた服が消える。きゃ~っ!? 私は両腕で胸を隠ししゃがみこんだ。

 聖王は目を見開く。

「ほう、なんとも愛い反応だ。まるで生娘のような……」

 ガラスのような壁に手を突く王。

「頬が赤いぞ、もしかして本当に生娘か?」

 確かにこの体ではまだ、いたしたことありませんが……あんたにそれ言う必要ある!? てか怖いっ! じじい、ガラスにべったり顔をつけるなぁああ。

「さあ、その素晴らしいたわわなパイオツを見せよ」

 絶対嫌です! めっちゃただのエロジジイじゃん。

「さもなければ、腕をもぐぞ」

 ギリッと力が加わる。見えない力で手首を握られ、無理矢理引っ張られているかのような……すごい力が加わった。

 これは聖王の意志だろうから。この箱のような空間では、術者の意志がそのまま反映されるらしい。

 撤回。ただのエロジジイじゃなかった。やばいエロジジイだ!

 力任せに腕を外され、私の──というかゴルゴンドロン・ジョーの見事なパイオツがポロリする。

 あんまり実感ないけど、今はこのオッパイ、自分の持ち物なわけで、見られるのはすごい屈辱だ。

 外気がひやりと乳房の先端を撫でた。

 聖王は興奮して、ガラスの結界をレロレロ嘗め回している。だから怖いのよそれ!

「さあ、次は、その手で自慰をしたまえ。余のことは爺さんではなく、自慰さんと呼んでくれてもかまわんぞ」

 上手いこと言ったつもりかもしれないけど、意味不明だからね!? 彼はさらに嬉しそうに命じた。

「足を広げて、魔王様の恥ずかしいところを余に見せるのだ。自分でな!」

 このジジイ、と思ったけれど、彼がそう言った途端物理的な力が加わり、太ももが引っ張られる。このままでは、御開帳されてしまう! 私はプルプルしながら必死で脚を閉じる。

「さすが魔王様だ。この聖なる力にそこまで抵抗するとはな」

 聖なる力をエロスに使うな!

 聖王はしびれを切らし、またパチンと指を鳴らした。

「媚薬の刑に処す」

 透明な箱の中に、細かな粒子が現れる。いきなりのことで、思わず吸い込んでしまった私。途端、体がカッと熱くなった。

「な……に」

 ジジイはきゃっきゃっ喜んでいる。

「聞こえなかったかぁ? 媚薬の粒子だ。超強力な、対雌の魔族の拷問用に調合した、強力なやつだよ。人なら狂って一瞬で死んでおる」

 どろっと脳髄に甘い靄が入り込む。ふわりと意識が浮いた。あ、気持ちいい。ドラッグとか一発キメたらこんな感じなのかしら、っていういけない想像を掻き立てられる、未知の感覚。

「さあさあ、好きなように楽しみたまえ。お約束で悪いがな、魔王よ。唯一、その快楽から逃れるのは絶頂に達することだ。余の前でイくがよい」

 えろ爺の声が、なぜか心地よく耳に響く。

 私はこてんとガラスの壁に寄りかかり、嫌なのに脚をおずおず開いてしまう。

 手が解放されたので、両手で大ぶりな乳房を掴み、揉みしだく。それから、柔らかな膨らみの先端を突いてみた。

「ひんっ……ぁ」

 すごい。これだけでイけそう。

 両方の乳首を摘まんで引っ張ってみると、腰がビクンと跳ねる。夢中になって何度もこすり、すりつぶし、こねくり回した。

 腰が動くたびに、開いた脚の間からじゅわっと何かがあふれる。聖王が真顔になってそれを見ているのが分かった。

 見られている羞恥心で、よけい体が熱くなるのを私は感じた。おかしい、こんな趣味……なかったのに。

「見ない……で」

 自分の手が股間に伸びるのを止められない。細く長い指で、潤みきった花びらをめくる。

 とろとろと溢れてくるそれは愛液だ。やがて、花びらの上の尖りがコチコチになっていることに気づく。

 ああ……慰めて欲しいんだ。

 指ではじいた。

「ああぁああああっ」

 電気が走ったかのような衝撃。こんなに敏感になるのは初めてだった。媚薬って、すごい。

 夢中になって何度も何度も弾いた。床に愛液があふれる。まるでお漏らしみたいに。

 たまらず、ちゅぽん、と指を蜜まみれの穴に差し込んだ。

「ひぃっ……ひっ」

 だめ、気持ちいい。でもかき回しても足りない。こんな細い指じゃぜんぜん。もっと粘膜を押し広げて擦り上げるやつがないと、頭がおかしくなる。

 私は蜜でべとべとになった指を舐め上げて、潤んだ目で聖王を物欲しげに見つめた。

「ほしい……でもお爺ちゃん、あんた勃つの?」

 もうこの老いぼれでもいい、そう思った。充血した目で舐めるように私を見ていた聖王は、ハッと我に返る。

「ばかにしおって、見た目に惑わされるな」

 ずずっと聖王の背丈が伸びる。一気に年齢が若返ったではないか。

 まじか……。

 私より年上には見えるが、老王の面影が影も形も無い! 人を食ったような表情は三十代半ばくらいだろうか。さっきの変態爺はどこに?

 綺麗なイケメンではなく、世間に擦れた感じの悪そうなイケメンだ。これが聖王の真の姿なの? なんで老人の姿で──ていうか、人間にこんなことできるの!?

 でも今は、そんなことどうでもよかった。指を咥えたまま、上目遣いに彼を見る。

「勃つの? 大きいの?」

 とろけそうな頭で、再びそう聞いてみた。

「ああ、大きくて固い」

 聖王がクスッと笑って応えた。声もガラッと変わっていないか? 腰が抜けそうな、セクシーなイケボだ。

「おねがい……ほちいの、王様のおっきいの、ちょうらい」

 私が呂律の回らない口調でオネダリすると、聖王は生唾を飲み込み、結界を解いた。

「いいだろう。余が、可愛がってやる」

 ──それが私のねらいだった。

 全裸のまま瞬間移動し、聖王の背後に絡みつく。

 やはり老人の恰好など仮の姿か。服の下に、簡単に絞め殺せないような固い筋肉を感じた。

 でも私には魔力がある。その太い首に手を回したまま、低い声で脅した。

「交渉決裂ね」

 しかし聖王は、背後を取られているのに朗らかに笑ったではないか。

「小娘。真の姿になった余から、逃れられるとでも?」

 次の瞬間、首を掴まれ、床に押し倒されていた。ビリビリと感電したような衝撃は聖なる力。神殿の結界の倍以上はあるだろうか。

 そんな巨大な神力が、私を貫く。

「くっ……あぐっ」
「余自身が結界となる」

 強引に脚を割られた。間に入ってくる聖王。

「その見事な体は余のものじゃ」

 顔を近づけそう囁くと、唇を吸われていた。

「んっんんっ」

 唾液を流し込んでくる。聖なる力は、私にとって毒なのか。直接媚薬を飲み込んだように、疼きがさらに強まる。聖王は唇を離して、唾液だらけの私の唇を舐めとった。

「余の濃い体液をそなたに注ぎ込み、余の性の奴隷にしてくれよう。いや、聖なる奴隷。聖奴隷だ」

 かすれた声で囁きながら、肩に私の脚を担ぎあげる。腿の間に固いものが押し付けられた。

「これが欲しいのだろう?」

 私は涙目でふるふる首を振る。

「欲しいけどあんたのは嫌!」

 聖王はほれぼれと私を見下ろす。

「やはり、愛いのう。滾るわ。……公開初夜といこう。者ども、近う寄れ!」

 周囲の親衛隊がザッと近づく。兜を被っているから表情は見えないが、皆めっちゃ前屈みだ。あんたたち、勃ってるでしょ!?

 拳王──違った、聖王親衛隊だかなんだか知らないけど、こんな奴らに見られながら犯されるなんてごめんだわ!

 公開凌辱に怒りと屈辱で暴れようとするも、聖王は私をやすやすと押さえつけ、手首を片手にまとめて掴んで頭の上で固定した。

「うまそうだ」

 微笑を浮かべる。

 絶対こっちの方が魔王だって! 笑顔がドSのそれだわ! ローマの皇帝みたいなゆったりした服の襟元から、見事な胸筋がはだけてるし。

 美しさと残酷さがミックスされて、壮絶な色気を醸し出してる! そして今は私は、超強力媚薬塗れ。

 鳥肌だらけの私の体を片手で撫でまわす王に、もう陥落寸前だった。

「さあ、余を受け入れるのだ。余の精液……いや、聖液をその身体に注ぎ込んでやろう」

 さっきからちょいちょい上手いこと言った、みたいなドヤ顔もムカつくのよ!

「諦めろ」

 すすっと内腿に手を這わされ、秘められた花びらをめくられた。

「蜜が滴ってくるのう、雌の匂いがする」
「やっ」

 まずい、力が入らない。

 ズプッと先端が埋め込まれた。

 ……怖い。やだ、嫌だよ。

 ──バサッと羽音がした……ような気がした。

 聖王がハッと顔を上げる。

 手首の戒めが緩んだ。

 その隙に私は、全魔力を手の平に溜め、放出していた。
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