【完結】モブ令嬢ですが、好きな人が悪役令嬢に惚れているので、襲います!【R18】

世界のボボ誤字王

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再会編

不自然なベルトランスマイル

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 ショッピングは、デートみたいで楽しかったのです。

 憧れの有名ブランドで何着もお洋服を作ってもらって、気分が高揚していました。


 だからうっかり、皆の前で離婚なんて口走ってしまって……。

「冗談ですわ! オホホホ」

 慌てて言うと、店内はドッカンドッカンわざとらしい爆笑に包まれました。

「やだ、奥様ったら、オホホホ」
「エスプリ効きまくりウケる~」
「襟はフリルを立てた昼用のスタイルにいたしましょうね!」
「いいですわね! こちらは以前、王女様が着たスタイルですし、夜でもおかしくないのですよ」
「乗馬服で来られるような、お転婆な姫様みたいですからね!」

 みなさん、気を使わせてごめんなさい……。

 なんとか誤魔化したけれど、離婚の二文字が常に頭にあるから口が滑ってしまったのね。

 働く気はございます。

 ただわたくしは、土壌や改良作物の研究をしてきたので、働くならそっち方面だと思いますわ。


 店を出ると、わたくしに再び腕を貸すベルトラン様。

「疲れない? どこかで休もうか。ケーキの美味しいカフェがあるんだ」

 やだ、本当にデートみたいですわ。でも、張り付いたような笑顔が怖い!

「君は、カフェでも働かせてくれって言うのかな?」

 やっぱりこの笑顔は、不機嫌を隠すためのベルトランスマイルですわね!

 動揺して躓き、転びそうになりました。

「おっと」

 ベルトラン様がスマートに支えてくれます。

「どんくさいな、ミレイユは」

 腰に手を回して誘導してくれました……。

 ベルトラン様は、なんでこんな風に優しくしてくれるのかしら。

 正直、復讐するなら──夜あんな意地悪をするなら、こういうのはやめて欲しいのですけどね。

 一喜一憂してしまう自分が、嫌なのです。



 オシャレなカフェに入ると、ミルクチョコレートのケーキを頼むベルトラン様。

「生クリームがたっぷり入っているんだ。僕は甘いものが苦手なんだけど、君を見ていると……きみの髪や瞳を見ていると、ついコレを食べたくなってしまう」

 お砂糖もミルクも入ってないカフェのほろ苦さにあっていて、とても美味しいのだけど……。

「まったり濃厚で、君の唇みたいに蕩けそうになる」

 そんな歯の浮くようなセリフを言われると、落ち着いて食べられませんわ!

「ベルトラン様、これも復讐でしたら──おっふ!」
「ついてる」

 唇に手を伸ばされ、チョコを拭われました。

 その指をペロッと舐め、クスッと笑ってみせるベルトラン様。なにこれ、拷問? 萌え死の刑ですの?

 わたくしは赤くなって、恨みがましくベルトラン様をじっとり眺めます。

 わたくしにとって、貴方の偽装結婚期間は、諦めるための期間なのです。

 ますます好きになってはいけないのです!

 なんて言ったら、気持ち悪がられるでしょうね。離婚の同意書は渡せずじまいで、彼からしたら安心できないでしょう。

 ふと、カフェのガラス窓の向こうから、手を振っている女性に気づきました。

 その方は乳母車をメイドに預け、店内に入ってまいりました。

 ボンネットを脱ぐと、青く輝く銀の髪をシニヨンに結った美しい顔が現れました。

「ベルトラン様、お久しぶりですわ。はじめまして準公爵夫人」

 スカートをつまみ、足を引いて屈んだのは、あ、あ、悪役令嬢! 違いました! 悪役令嬢!

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