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再会編

初めての自慰

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 正直に言いますわ。

 結婚の申し込みがあったとき、わたくしの頭には、ベルトラン様との行為がチラッと浮かんでしまったのです。

 魔力持ちの後継者のことより、彼とまた裸で密着できるという期待に、胸を躍らせてしまいました。

 なんていやらしい女なのでしょう。

 さらに車酔いで寝込んだ時、ベルトラン様が口移しで水を飲ませてくれる夢を見たのです。

 やはりわたくしは、ベルトラン様がまだ好きなのですわね。

 それを見抜かれたのでしょうか。

 ベルトラン様は初夜の時のように、わたくしに触れてもくれませんでした。

 当然ですわね。

 ベルトラン様は家族の手前、一度結婚しなければならなかっただけなのです。

 跡継ぎは、きちんとした相手と作りたいのです。

 わたくしを抱くつもりが無いことは、初夜の時に分かりました。でもこの結婚は、欲張らなければわたくしにとっても救い。

 罪を贖い、彼との歪んだ関係を清算する期間まで神が与えてくれた。そう思ったのです。

 その償いが辱めなのは、多少予想しておりましたが……。しかも、ちょっと楽しみにしていたのに、自慰だなんて。

 ベルトラン様は、触れてもくれないなんて……。


「乳……首を自分で?」

 ちくび、なんて口に出すだけでも恥ずかしいのに、わたくしはどうしていいか分からず、思わず聞き返していました。

 ベルトラン様は聖人のような穏やかな笑みを浮かべて、頷きます。

「そうだよ。君の細い指で、可愛い小さな突起を摘むんだよ」

 そういう言い方……。かぁっと頬が熱くなりました。

 でもベルトラン様は身動きせず、わたくしが言われた通りにするのを待っているのです。

 仕方なく、両手を自分の胸まで持っていきました。

 そっと指で突いてみます。

 正直、ベルトラン様の角張った指で触って欲しかった。

 でも彼は、わたくしを喜ばせたくは無いのでしょうし……。

 乳首を引っ張りながら、ベルトラン様の様子を上目遣いで窺うと、食い入るように見ているのが分かりました。

  急に乳首が固く尖りました。

 ベルトラン様に触られているところを勝手に想像してしまったのです。

 だってわたくし、妄想はお手の物ですから。

 ベルトラン様の角張った長い指が、わたくしの貧弱な乳首を転がし、腫れ上がるくらいいたぶって──。

 耳元で、愛しているよミレイユ、なんて呟いてくださって──エンダーイヤァァッホー!

 まあ……妄想なんですが。

 自分の指なのに、見られていることを意識すると、敏感に感じてしまいます。

 下腹部がきゅうっと疼きました。

 息が荒くなってくるのをベルトラン様に悟られないよう、唇を噛みしめました。

 そのうち、内股に何か滴ってきました。たしか、愛液というものです。この蜜を、初夜の時ベルトラン様は舌ですくいとってくださった。

 体がますます熱くなり、どうしていいか分からなくなりました。

 乳房が張っているような妙な感覚。

 両手で精一杯揉みほぐしました。

 でも、手のひらで乳首を転がしてしまい、ますます体は火照ってしまうのです。

「ベ……る……とらん……さま」

 荒い息をつきながら、わたくしは無意味に夫の名を呼んでいました。

 でも、ベルトラン様は微笑みを浮かべて見ているだけ。

 懇願しそうになるのを、どうにか思いとどまりました。

 ますます垂れてくる蜜。見られたくなくて、股をぎゅっと閉じました。

 すると、ベルトラン様は微笑んだまま、無情にもわたくしに命じました。

「脚を開いて」

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