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慌ただしいアリス(ユベール視点)

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 バスルーム借りるからね! とちょっと怒ったように言うアリス。

 照れやがって。ぜんぜんこっちを見ようとしないんだから。

「洗ってやろうか?」

 と眠い目をこすりながら言うと、

「また一戦やることになるでしょ!? キリがないじゃんバカッ!」

 と怒鳴られた。

 さっきまで可愛かったのに。

 俺、見えないところ限定でキスマークをつけたし、アリスが嫌がることは絶対しなかったぜ?

 でもアリス、俺がやって欲しいなって思うことをまるで先読みしているかのように、全部やってくれるんだ。

 小さな唇をカップリ開けて、俺のユベール君を口いっぱいに頬張って、垂れ目で見上げながら、俺の反応を窺うんだもん。

 正直、やっぱりアリスはビッチなのかなって、思わずにはいられなかった。

 口淫がプロ並みに上手い。それは凹むけど、ただ気になったのは、俺の乱れる反応を楽しむというよりは、どこか顔色を窺うような様子見であったこと。

 一瞬、俺のご機嫌を取っているかのように思えて、ちょっと不快だった。

 そんなこと、しないでいい。

 俺はアリスの口から俺の肉杭を引っこ抜き、いっぱいキスしてやった。自分の逸物に口をつけた唇にするのは、抵抗があったけど……。

 アリスは目を見開いてから、顔をそむけた。泣いているのかな? と思ったけど、ぐっと唇を噛み締めて堪え、涙はこぼしていなかった。

 胸が引き裂かれそうになった。

 彼女がビッチだろうが嘘つきだろうが、どうでもいいや、と思った。

 過去を詮索しないくらいなら、俺にもできる。

 だから彼女が求める間は、真綿にくるむように抱いてやろうって、そう思った。

 淋しくないように。

 今夜はちょっとやりすぎたかも。

 朝になったらベルトラン様をたたき起こして、一緒に朝食を取りにパブに行こう。

 実は、ケツ掘り三貴公子のことを相談したかったんだ。正確には、ベルトラン様の兄貴に。

 王立学院出身だから、後輩のこと色々聞いているかもしれない。恥ずかしいなんて、言ってられねえ。俺は悪くないんだから。

 やつらの悪事の証拠をたくさん集めて、司法院に提出し、高位貴族を裁く法案を次の議題にしてやる。

 貴族の離婚と再婚の奨励は、もう興味無い。俺は自分のために賛成に票を投じたが、後継者に拘って婚姻や離婚を続けていけば、何かしら歪みが出てくるだろう。

 そうなると次の法案は、悪徳貴族の成敗だ。

 それから──。

 ふと俺はバスルームの方を見つめた。

 そうか、俺は……。

 瞼が落ちてくる。眠い。あれだけ酒かっ喰らって、あれだけ乱れて、よく今まで起きていられたな。

 だめだ、目覚まし時計をかけないと。

 明日も仕事だから──。あ、もう今日か。

 今日から議会開催期に向けての準備が始まるんだから……。死ぬほど、忙しくなるんだ。

 俺の意識は、シャワーの音を聞きながら、闇に呑み込まれていった。
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