上 下
40 / 57

欲望を前にして

しおりを挟む

 だいたいね、男女がセックスするのに、いちいち理由なんて要らない。

 欲情よ。欲情してるの。

 私はユベール君となら、できると思う。たとえ私たちに先が無くても、今やりたいのはユベール君だから。

 相手の気持ちとか私たちの立場とか、欲情した二匹のケダモノには、どうでもよくなっていた。

 ワンピースを肩まで下げられ、鎖骨に口づけされ、私はしゃくりあげるように喘いでいた。

 前もそうだったけど、ユベール君てエプロン好きだよね? ワンピースだけ脱がすんだもん。

 裸にエプロンみたいじゃん。あ、でも靴下と靴下留めだけは、取らないんだよね。

「あんっ」

 エプロンの上から乳首を摘まれ、我ながら恥ずかしくなるような女の声があがる。

 からかわれるかな、と思ったけど、ユベール君の黄緑の瞳が輝きを増しただけだった。

 後ろ向きにされ、壁に押し付けられた。顔を見たくないのかな、と私のネガティブな部分がしょげる。

 でも彼は、ボブの後ろ髪を掻き分け、項にキスしてくれた。

 エプロンを結ぶリボンの下から、むき出しの尻に固いものを押し付ける。

 割れ目に温かい肉棒を押し当て上下させられ、求められているように思え、うっとりした。

 それが勘違いであっても、彼を魅了しているみたいで嬉しかった。

「ひっ」

 スルっとエプロンの下から生のおチチをつかみあげられ、こねくりまわされた。

 私はそれに応えるようにお尻を突き出して、口には出さず彼に求める。

 早く、入ってきて。

 ユベール君がしゃがみ込んだ。ひどい、焦らさないで。

 目線が、私の下半身の位置だから、動揺してしまう。

「見ないでよ──ぁっ!」

 つつっと指がおしりの割れ目をつたい、奥に入り込む。そのまま、くちゅっと指を埋め込むんだもん。

 びちょびちょの秘裂をまさぐった後、尖った花芯をさぐり当てられた。

「っ……」

 つまんで揺すられ、私は息を詰める。そこは敏感すぎて痛いくらいだった。

 ユベール君は、私の体に力が入ったことに気づいたようだ。指先がソフトタッチになり、軽く小刻みに尖りを叩く。

 ピリピリ静電気が走ったように痺れてくる。ユベール君の指は執拗にそこを攻めた。クリッと皮を剥くみたいに転がされ、よけい刺激が強くなる。魔力でも流しているように。

 目の奥に火花が散り、チカチカと明滅した。

「くはっ」

 プシュッと愛液が飛び散る。潮を、吹いてしまった!? 愛梨珠の時だって無いのに!

「……顔にかかった」

 怒ったのかな、そう囁くと、ユベール君は割れ目から──舌を差し入れてきた!

「ちょっ──汚いわよ!」
「もう汚れた。はは、だらしないな。いっぱい垂れてくる……俺が、綺麗にしてやるよ」

 滴る愛液を舐め、すくい取り、舌は下半身を蹂躙し続けた。

「お、お願いっ、ユベール君……も、もうっ」

 体が熱くて、ついに声に出して言ってしまった。私はもう、快楽を知っているの。自分が欲しいものが何か、知っている。

 あんあん喘がされながらも、必死で訴えた。

「ちょうだ……いよ」
「何を?」

 ユベール君はとぼけた。

 くっそ~。

「ユベール君……ちょうだい」

 ユベール君は立ち上がると、背中に密着し、私の髪を耳にかけてからその耳に囁く。

「上品ぶるなよ、何が欲しいかはっきり言え」

 声は低く掠れて震えている。なによ、自分だって余裕ないんじゃん。

「何が欲しいんだよ? アリス」

 手を伸ばし、片手は左の乳房に、もう片方は前から股の奥に滑り込ませるユベール君。

 乳首とクリトリスを両方コリコリされたら、もうはっきり言うしかなかった。

「はんっ……お……ちんちん、あんっ……ちょうだい、ユベール君の、おちんちん……うう……ちょ……ちょうらい」

 ユベール君が、クソッと毒づいた。な、なんで!? 別の言い方が良かった!? マラ? デカマラ?

 すると彼は襞をめくり、指をそっと中に入れてくる。

「いま避妊魔法を施すから」

 気持ちよくて、でも恥ずかしくて、ギュッと目を閉じていた私は、その言葉に我に返る。

 コック長との会話を思い出し、身を震わせた。

「だめ!」

 ユベール君の手が止まった。顔は見えないけど、困惑しているのが分かる。

「避妊魔法って、別名淫紋とか言われているやつでしょ?」

 子宮に簡易術式と魔力を流し込むから、幻覚剤や媚薬の類が少し入った時と、似たような状態になるらしい。

「わたし、ピル飲んでるか──く゛あ゛あ゛あ゛!?」

 ピンと肉のお豆を弾かれ、愛液がドロッと流れ落ちる。ユベール君の声が苛立つ。

「なんでピルなんて、飲んでるのさ?」

 耳の後ろで、疑い深い声。

「誰とでも、すぐにやれるように?」

 嫉妬だろうか。そうだといいな。

 蔑みだったら、流石に辛いかも。

 ユベール君には、もうこれ以上軽蔑されたくない。

「ちがっ──っ」

 片方の手は左の膨らみを握りしめる。痛くはないけど、愛梨珠の記憶が刷り込まれてるから、このまま握り潰されるんじゃないかって怖くなる。

「やだっ、優しくして!」
「淫乱には優しくできない」
「生理痛が重いからよ!」
「嘘つけ!」

 ぎゅっと、さらに乳首を強く抓られた。

 ポロポロ涙が零れた。

 私は泣くのは嫌い。嘘泣きが上手すぎて、本当の涙なのかどうか、自分でも分からなくなってしまうから。

 だから、嘘泣き以外はもう泣かないの。

 いま、際限なく溢れてくる涙に、私自身が一番驚いていた。

 これは、どっちの涙?

「生理痛が酷いと、メイドとしてちゃんと働けないもん」

 泣きながら必死で言うと、ユベール君はやっとオッパイから手を放してくれた。

「だから避妊魔法しないで」
「でもアリス──」

 貴族やジェントリがメイドに手を出すことは多い。ただ、貴族の場合には避妊魔法があるから、相手を妊娠させることがほとんど無いとか。

 貴族との混血があまりいないのは、たぶんこのためね。

 平民にとっても、避妊魔法をしないのはリスクしかない。爵位に相当する資格が無ければ正式に妻になれないし、愛人になれたとしても、子を認知されることはめったに無いからだ。

「ユベール君を、そのまま感じたいの」

 甘えた声をだした。

「この前は、媚薬で訳が分からなかったのに、また魔法でおかしくなるなんて嫌っ」




しおりを挟む
感想 29

あなたにおすすめの小説

伯爵は年下の妻に振り回される 記憶喪失の奥様は今日も元気に旦那様の心を抉る

新高
恋愛
※第15回恋愛小説大賞で奨励賞をいただきました!ありがとうございます! ※※2023/10/16書籍化しますーー!!!!!応援してくださったみなさま、ありがとうございます!! 契約結婚三年目の若き伯爵夫人であるフェリシアはある日記憶喪失となってしまう。失った記憶はちょうどこの三年分。記憶は失ったものの、性格は逆に明るく快活ーーぶっちゃけ大雑把になり、軽率に契約結婚相手の伯爵の心を抉りつつ、流石に申し訳ないとお詫びの品を探し出せばそれがとんだ騒ぎとなり、結果的に契約が取れて仲睦まじい夫婦となるまでの、そんな二人のドタバタ劇。 ※本編完結しました。コネタを随時更新していきます。 ※R要素の話には「※」マークを付けています。 ※勢いとテンション高めのコメディーなのでふわっとした感じで読んでいただけたら嬉しいです。 ※他サイト様でも公開しています

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

処刑された王女は隣国に転生して聖女となる

空飛ぶひよこ
恋愛
旧題:魔女として処刑された王女は、隣国に転生し聖女となる 生まれ持った「癒し」の力を、民の為に惜しみなく使って来た王女アシュリナ。 しかし、その人気を妬む腹違いの兄ルイスに疎まれ、彼が連れてきたアシュリナと同じ「癒し」の力を持つ聖女ユーリアの謀略により、魔女のレッテルを貼られ処刑されてしまう。 同じ力を持ったまま、隣国にディアナという名で転生した彼女は、6歳の頃に全てを思い出す。 「ーーこの力を、誰にも知られてはいけない」 しかし、森で倒れている王子を見過ごせずに、力を使って助けたことにより、ディアナの人生は一変する。 「どうか、この国で聖女になってくれませんか。貴女の力が必要なんです」 これは、理不尽に生涯を終わらされた一人の少女が、生まれ変わって幸福を掴む物語。

虐げられた令嬢は、姉の代わりに王子へ嫁ぐ――たとえお飾りの妃だとしても

千堂みくま
恋愛
「この卑しい娘め、おまえはただの身代わりだろうが!」 ケルホーン伯爵家に生まれたシーナは、ある理由から義理の家族に虐げられていた。シーナは姉のルターナと瓜二つの顔を持ち、背格好もよく似ている。姉は病弱なため、義父はシーナに「ルターナの代わりに、婚約者のレクオン王子と面会しろ」と強要してきた。二人はなんとか支えあって生きてきたが、とうとうある冬の日にルターナは帰らぬ人となってしまう。「このお金を持って、逃げて――」ルターナは最後の力で屋敷から妹を逃がし、シーナは名前を捨てて別人として暮らしはじめたが、レクオン王子が迎えにやってきて……。○第15回恋愛小説大賞に参加しています。もしよろしければ応援お願いいたします。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

悪役令嬢はオッサンフェチ。

来栖もよもよ&来栖もよりーぬ
恋愛
 侯爵令嬢であるクラリッサは、よく読んでいた小説で悪役令嬢であった前世を突然思い出す。  何故自分がクラリッサになったかどうかは今はどうでも良い。  ただ婚約者であるキース王子は、いわゆる細身の優男系美男子であり、万人受けするかも知れないが正直自分の好みではない。  ヒロイン的立場である伯爵令嬢アンナリリーが王子と結ばれるため、私がいじめて婚約破棄されるのは全く問題もないのだが、意地悪するのも気分が悪いし、家から追い出されるのは困るのだ。  だって私が好きなのは執事のヒューバートなのだから。  それならさっさと婚約破棄して貰おう、どうせ二人が結ばれるなら、揉め事もなく王子がバカを晒すこともなく、早い方が良いものね。私はヒューバートを落とすことに全力を尽くせるし。  ……というところから始まるラブコメです。  悪役令嬢といいつつも小説の設定だけで、計算高いですが悪さもしませんしざまあもありません。単にオッサン好きな令嬢が、防御力高めなマッチョ系執事を落とすためにあれこれ頑張るというシンプルなお話です。

悪役令嬢になりたくないので、攻略対象をヒロインに捧げます

久乃り
恋愛
乙女ゲームの世界に転生していた。 その記憶は突然降りてきて、記憶と現実のすり合わせに毎日苦労する羽目になる元日本の女子高校生佐藤美和。 1周回ったばかりで、2週目のターゲットを考えていたところだったため、乙女ゲームの世界に入り込んで嬉しい!とは思ったものの、自分はヒロインではなく、ライバルキャラ。ルート次第では悪役令嬢にもなってしまう公爵令嬢アンネローゼだった。 しかも、もう学校に通っているので、ゲームは進行中!ヒロインがどのルートに進んでいるのか確認しなくては、自分の立ち位置が分からない。いわゆる破滅エンドを回避するべきか?それとも、、勝手に動いて自分がヒロインになってしまうか? 自分の死に方からいって、他にも転生者がいる気がする。そのひとを探し出さないと! 自分の運命は、悪役令嬢か?破滅エンドか?ヒロインか?それともモブ? ゲーム修正が入らないことを祈りつつ、転生仲間を探し出し、この乙女ゲームの世界を生き抜くのだ! 他サイトにて別名義で掲載していた作品です。

処理中です...