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欲望を前にして
しおりを挟むだいたいね、男女がセックスするのに、いちいち理由なんて要らない。
欲情よ。欲情してるの。
私はユベール君となら、できると思う。たとえ私たちに先が無くても、今やりたいのはユベール君だから。
相手の気持ちとか私たちの立場とか、欲情した二匹のケダモノには、どうでもよくなっていた。
ワンピースを肩まで下げられ、鎖骨に口づけされ、私はしゃくりあげるように喘いでいた。
前もそうだったけど、ユベール君てエプロン好きだよね? ワンピースだけ脱がすんだもん。
裸にエプロンみたいじゃん。あ、でも靴下と靴下留めだけは、取らないんだよね。
「あんっ」
エプロンの上から乳首を摘まれ、我ながら恥ずかしくなるような女の声があがる。
からかわれるかな、と思ったけど、ユベール君の黄緑の瞳が輝きを増しただけだった。
後ろ向きにされ、壁に押し付けられた。顔を見たくないのかな、と私のネガティブな部分がしょげる。
でも彼は、ボブの後ろ髪を掻き分け、項にキスしてくれた。
エプロンを結ぶリボンの下から、むき出しの尻に固いものを押し付ける。
割れ目に温かい肉棒を押し当て上下させられ、求められているように思え、うっとりした。
それが勘違いであっても、彼を魅了しているみたいで嬉しかった。
「ひっ」
スルっとエプロンの下から生のおチチをつかみあげられ、こねくりまわされた。
私はそれに応えるようにお尻を突き出して、口には出さず彼に求める。
早く、入ってきて。
ユベール君がしゃがみ込んだ。ひどい、焦らさないで。
目線が、私の下半身の位置だから、動揺してしまう。
「見ないでよ──ぁっ!」
つつっと指がおしりの割れ目をつたい、奥に入り込む。そのまま、くちゅっと指を埋め込むんだもん。
びちょびちょの秘裂をまさぐった後、尖った花芯をさぐり当てられた。
「っ……」
つまんで揺すられ、私は息を詰める。そこは敏感すぎて痛いくらいだった。
ユベール君は、私の体に力が入ったことに気づいたようだ。指先がソフトタッチになり、軽く小刻みに尖りを叩く。
ピリピリ静電気が走ったように痺れてくる。ユベール君の指は執拗にそこを攻めた。クリッと皮を剥くみたいに転がされ、よけい刺激が強くなる。魔力でも流しているように。
目の奥に火花が散り、チカチカと明滅した。
「くはっ」
プシュッと愛液が飛び散る。潮を、吹いてしまった!? 愛梨珠の時だって無いのに!
「……顔にかかった」
怒ったのかな、そう囁くと、ユベール君は割れ目から──舌を差し入れてきた!
「ちょっ──汚いわよ!」
「もう汚れた。はは、だらしないな。いっぱい垂れてくる……俺が、綺麗にしてやるよ」
滴る愛液を舐め、すくい取り、舌は下半身を蹂躙し続けた。
「お、お願いっ、ユベール君……も、もうっ」
体が熱くて、ついに声に出して言ってしまった。私はもう、快楽を知っているの。自分が欲しいものが何か、知っている。
あんあん喘がされながらも、必死で訴えた。
「ちょうだ……いよ」
「何を?」
ユベール君はとぼけた。
くっそ~。
「ユベール君……ちょうだい」
ユベール君は立ち上がると、背中に密着し、私の髪を耳にかけてからその耳に囁く。
「上品ぶるなよ、何が欲しいかはっきり言え」
声は低く掠れて震えている。なによ、自分だって余裕ないんじゃん。
「何が欲しいんだよ? アリス」
手を伸ばし、片手は左の乳房に、もう片方は前から股の奥に滑り込ませるユベール君。
乳首とクリトリスを両方コリコリされたら、もうはっきり言うしかなかった。
「はんっ……お……ちんちん、あんっ……ちょうだい、ユベール君の、おちんちん……うう……ちょ……ちょうらい」
ユベール君が、クソッと毒づいた。な、なんで!? 別の言い方が良かった!? マラ? デカマラ?
すると彼は襞をめくり、指をそっと中に入れてくる。
「いま避妊魔法を施すから」
気持ちよくて、でも恥ずかしくて、ギュッと目を閉じていた私は、その言葉に我に返る。
コック長との会話を思い出し、身を震わせた。
「だめ!」
ユベール君の手が止まった。顔は見えないけど、困惑しているのが分かる。
「避妊魔法って、別名淫紋とか言われているやつでしょ?」
子宮に簡易術式と魔力を流し込むから、幻覚剤や媚薬の類が少し入った時と、似たような状態になるらしい。
「わたし、ピル飲んでるか──く゛あ゛あ゛あ゛!?」
ピンと肉のお豆を弾かれ、愛液がドロッと流れ落ちる。ユベール君の声が苛立つ。
「なんでピルなんて、飲んでるのさ?」
耳の後ろで、疑い深い声。
「誰とでも、すぐにやれるように?」
嫉妬だろうか。そうだといいな。
蔑みだったら、流石に辛いかも。
ユベール君には、もうこれ以上軽蔑されたくない。
「ちがっ──っ」
片方の手は左の膨らみを握りしめる。痛くはないけど、愛梨珠の記憶が刷り込まれてるから、このまま握り潰されるんじゃないかって怖くなる。
「やだっ、優しくして!」
「淫乱には優しくできない」
「生理痛が重いからよ!」
「嘘つけ!」
ぎゅっと、さらに乳首を強く抓られた。
ポロポロ涙が零れた。
私は泣くのは嫌い。嘘泣きが上手すぎて、本当の涙なのかどうか、自分でも分からなくなってしまうから。
だから、嘘泣き以外はもう泣かないの。
いま、際限なく溢れてくる涙に、私自身が一番驚いていた。
これは、どっちの涙?
「生理痛が酷いと、メイドとしてちゃんと働けないもん」
泣きながら必死で言うと、ユベール君はやっとオッパイから手を放してくれた。
「だから避妊魔法しないで」
「でもアリス──」
貴族やジェントリがメイドに手を出すことは多い。ただ、貴族の場合には避妊魔法があるから、相手を妊娠させることがほとんど無いとか。
貴族との混血があまりいないのは、たぶんこのためね。
平民にとっても、避妊魔法をしないのはリスクしかない。爵位に相当する資格が無ければ正式に妻になれないし、愛人になれたとしても、子を認知されることはめったに無いからだ。
「ユベール君を、そのまま感じたいの」
甘えた声をだした。
「この前は、媚薬で訳が分からなかったのに、また魔法でおかしくなるなんて嫌っ」
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