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血痕(ユベール視点)
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俺は、ちょっとだけ悲しかった。
アリスという人間を分かっていたはずなのに。
まあ最初はな、どうせ家から何かちょろまかして逃げていくんだろ、くらいに思っていた。
使用人らに貴重品に注意しておくよう言いおいて。
多少被害を受けても、アイツを追い払えるならいいかな、くらい思っていた。
それが、多少サボりはしていたが、意外にも真面目に働いてたからさ……。
心を入れ替えたのかと思ったんだ。
「に、しても……あいつに貴金属を漁る時間なんてあったか?」
ティーパーティーの間はトレイを持って、行ったりきたりしてたし、紳士淑女がボチボチ夜会服への着替えに移る時間は、貴公子が俺に勧めた酒をかっくらい、執事につまみ出されたところだ。
あの後薬が効いていたなら、盗む暇無くね?
念の為、俺はアリスが寝ていた空き部屋を探してみた。
ここに隠したのかもしれない。
しかし部屋に入ると、まだ濃密な性の香りが漂っているような気がして、俺は赤面した。
あいつ、エロかったな。
……。
いやいやいや!
後で性病の検査しなきゃ! 梅毒とか持っていたら洒落にならないぞ。
俺はソワソワしながら、アリスに被せたキルトを剥いだ。
ビッグダイヤと言うくらいだから、鶏の卵くらいでかいのだろう。
子供用ベッドのマットレスを剥ごうとしたその時、手が止まった。
点々と、白いシーツに赤い斑点が散っている。
俺は目を見開いてシーツを握りしめ、棒立ちになる。
あれ?
……あれれ?
俺は処女とはやったことがない。
だって素人童貞だから。
ノエルとやることしか考えておらず、ひたすら彼女のために腕を(?)磨いていたから、玄人しか──娼館でくらいしか、経験がないんだ。
でもこれって、あれじゃないのか?
破瓜の血ってやつじゃないのか?
アリスが?
まさか。
アリスだぜ?
金づると見たらベタベタしてくる、分かりやすいカマトト淫乱女だぜ?
俺は必死で否定した。
「いやいや、鼻血だろう。それか、吹き出物の瘡蓋でも剥がれたんだ。うん、そうに違いない」
ただ……。
俺はちょっと先入観に囚われすぎてないか?
アリスと言う学園時代の悪党を、色眼鏡を通して見てなかったか?
俺はしばらく考え込み、やがて拳を握りしめて、その部屋を後にした。
アリスという人間を分かっていたはずなのに。
まあ最初はな、どうせ家から何かちょろまかして逃げていくんだろ、くらいに思っていた。
使用人らに貴重品に注意しておくよう言いおいて。
多少被害を受けても、アイツを追い払えるならいいかな、くらい思っていた。
それが、多少サボりはしていたが、意外にも真面目に働いてたからさ……。
心を入れ替えたのかと思ったんだ。
「に、しても……あいつに貴金属を漁る時間なんてあったか?」
ティーパーティーの間はトレイを持って、行ったりきたりしてたし、紳士淑女がボチボチ夜会服への着替えに移る時間は、貴公子が俺に勧めた酒をかっくらい、執事につまみ出されたところだ。
あの後薬が効いていたなら、盗む暇無くね?
念の為、俺はアリスが寝ていた空き部屋を探してみた。
ここに隠したのかもしれない。
しかし部屋に入ると、まだ濃密な性の香りが漂っているような気がして、俺は赤面した。
あいつ、エロかったな。
……。
いやいやいや!
後で性病の検査しなきゃ! 梅毒とか持っていたら洒落にならないぞ。
俺はソワソワしながら、アリスに被せたキルトを剥いだ。
ビッグダイヤと言うくらいだから、鶏の卵くらいでかいのだろう。
子供用ベッドのマットレスを剥ごうとしたその時、手が止まった。
点々と、白いシーツに赤い斑点が散っている。
俺は目を見開いてシーツを握りしめ、棒立ちになる。
あれ?
……あれれ?
俺は処女とはやったことがない。
だって素人童貞だから。
ノエルとやることしか考えておらず、ひたすら彼女のために腕を(?)磨いていたから、玄人しか──娼館でくらいしか、経験がないんだ。
でもこれって、あれじゃないのか?
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アリスが?
まさか。
アリスだぜ?
金づると見たらベタベタしてくる、分かりやすいカマトト淫乱女だぜ?
俺は必死で否定した。
「いやいや、鼻血だろう。それか、吹き出物の瘡蓋でも剥がれたんだ。うん、そうに違いない」
ただ……。
俺はちょっと先入観に囚われすぎてないか?
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俺はしばらく考え込み、やがて拳を握りしめて、その部屋を後にした。
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