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カクテルは胃袋へ

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 私はグラスを手に取ると、一気に中身を飲み干し空にしていた。

「あ~っ美味しかった」

 無邪気に目をぱちぱちしながら、貴公子たちに向けてそう言った。カシオレしか飲めないんです~スマイルを浮かべる。

「わたし、パーティ初めて!」

 酔っ払った令嬢のふりをしてみた。そのままくるりと背を向ける。

 さ、借りは返した。逃げよう。

「おい~っ! おいおいお~い!」

 まつ毛がユベール君の二倍ある若者に首根っこを掴まれる。

「お前何してくれてんの!? メイドだよな!?」

 あ、はい。メイド服だから気づかれるよね……。

 執事が号泣しながら走ってきた。

「大変申し訳ございませんっ! この使用人はまだ不慣れで!」

 執事に引きずっていかれ、何とか彼らの前から逃げられた。

「解雇! 解雇だよ! 分かるよね!?」

 目を血走らせた彼に、頭ごなしに怒られる。えー。たかが飲み物一杯じゃん。

 本当はひっくり返そうと思ったんだけど、あのいかがわしくも、超高級そうなブランド服を汚したらさ、弁償できないじゃん? 下手したら数年タダ働きよ。

 それに睡眠薬くらいなら、その辺で寝てれば休息ついでというか……ね? 別にカシオレ飲みたかったわけじゃないんすよ?

「相手は格上なんだぞ!? 準公爵家なんて、ゲストにしてはゴージャスなんだぞ!」

 執事カンカンだな。

「さっさと荷物を纏めて出ていけ!」
「あのー、今までのお給金と紹介状を──」
「やるわけないだるぉっ!」

 ふん、後でユベール君から貰うからいいわよ。ぺっ。

 せっかく坊っちゃまのケツを守ってやったってのに。



 メイド部屋の荷物を取りに行こうとした時、思ったより早く薬が効いてきた。瞼がトロンとしてくる。うわー、即効性じゃん。とんでもない睡眠薬だわ。

 廊下で眠ったら、さすがに着の身着のまま放り出されそう。

 私はキョロキョロ辺りを見渡し、ちょうどあの高位貴族の子息たちが悪巧みしていた空き部屋に飛び込んだ。
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