異世界酒場放浪記

あきあす

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絡み酒

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酒場の醍醐味は、一期一会である。
そう書いたのは何の雑誌だったか…。

異世界にもあるのか?一期一会。

何か飲んでくれと言われても何を頼めばいいんだ?
こっちの酒事情は全くわからない。
カウンターの客の手元の酒は、みな、木のマグカップのような容器に入っていて中身がわからない。

そんな俺に、1杯ご馳走してくれると言ったエルフさんは、

「あなた、私の酒が飲めないっていうの?ねー?どうなの?」

突然豹変した。ヤバい目が座ってる。この人絡み酒だ。

隣に座っていたネコ耳さんが、まあまあ、と宥めている。

「迷っていらっしゃるなら、こちらをどうぞ。」

そこにマスターが、木のマグカップを差し出した。

「あ、はい。」

有無を言わさないマスターの眼圧に素直に受け取った。

「そうよ!さっさと乾杯しましょ!」

急に笑顔になったエルフさん。
怖いわー。

「ほら、みんなも乾杯するわよ!」

絡んだあとは、仕切っている。
みんな文句もなく従っているところを見ると、いつもこんな感じで、逆らうとめんどくさいことになるからなんだろう。

「それでは、私、エルフのミスティが乾杯の音頭をとらせていただきます!ワタリビトに出会えたことを祝してっ、せーの!」

「「「かんぱーい!!」」」

それぞれが、マグカップを持ち上げ乾杯をした。マグカップの中には、真っ赤な液体が入っている。なんだろ、これ。
恐る恐る口に含むと、赤ワインのような感じだけど、ちょっと鉄っぽい味がした。

ん?ちょっと待て。

この店の名前は…。
『Bar ダンピーラ』

ダンピーラって、あれだよな。
人と吸血鬼の混血…。

まさか、これって…。

「大丈夫ですよ。人間の血ではありませんから。鉄分たっぷりの赤ワインです。」

すーっと顔を寄せてきたマスター。
怖いって!
なんで、鉄分たっぷりなんだよ!


異世界の酒場で酔える気がしないが、
酔わなきゃやってらんない状況だ。

盛り上がっているエルフさん達を横目に、
ヤケクソ気味にその液体を飲み干した。

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