上 下
63 / 80
第2章

ドラゴニュートゾンビ

しおりを挟む
それは突然聞こえてきた。

低いうなり声…。
何かを引っ掻くガリガリという音。

「ねぇっ!!」

大きな声で呼び掛ける。
母さん、アルフォンソ、サフィニアさんが
はっ!とした様子で駆け寄って来る。

「シャーッッ!!」

全身の毛を逆立てるアルフォンソ。

「ちょっとちょっと~、イヤな予感しかしないんだけど~。」

と言いながら剣を抜く母さん。

「てへへ、私の予想が当たっているなら、
100体ですよ、100体。しかも…」

ガタガタッ
バリッバリッ

少しずつ石柩の重い蓋が開いていく。

「ねぇっ!封印どーなってんの!?」

「私にもわかりましぇーん。てへ。」


「来るわよっ!!」

ゴゴゴゴっ
ズシャーッ、ギギギギッ

次々と出てきたでやんすっ。
うえーっ、気持ち悪っっ。

動きは緩慢だけど、全体的に干からびて錆色になっている体は人間だけど鱗で覆われている。ドラゴンの頭と尻尾がある…目は落ち窪み、眼球は無く虚ろな闇だ。2メートルくらいの大きさのゾンビ達が両手を前に伸ばし、こっちに向かって歩いてくる。
大きな口と鋭い牙…ギギギギッっていう鳴き声をあげている。




「これって、ゾンビ!?」

「ま、そーなるよね、ミイラだもん。ドラゴニュートゾンビってことになるね。てへ。」
 


「シャーッッ!!」

「ほら、にゃんこはここ!!」

シャーシャー言ってるアルフォンソを素早く掴み、懐に入れる母さん。

「にゃゃゃーっっ。」

またも叫ぶアルフォンソ。 我慢してよアルフォンソ~。
僕も出来ることならそこに入りたいよ~。ゾンビはイヤだよーっ。キモッ。キモッ。

 
「さーて、行くわよっっ!お前ら、ぬかるんじゃないよっっ。」

か、母さん…頼もしいっ。

「カミュっち、結界張れる?てへ。」

「あー、うん。」


ギギギギッ、ギギギギッ。
どんどん出てくるドラゴニュートゾンビ!
囲まれてるぅぅぅぅ!!


「早く!結界張って中に入って!てへ。」

おっふ。サフィニアさんに急かされて、慌てて結界を張る。僕、非戦闘員だもん。

「カミュちゃん!何かあったら回復と治癒頼むよ~。」

そう言って母さんはドラゴニュートゾンビの中に突っ込んで行く。
次から次へとまるで踊っているかのように
斬っていく。
剣を振る速度が速すぎて残像しか見えない。どんどん斬られて倒れていくドラゴニュートゾンビ達………あ…斬られても立ち上がりズリズリと迫って行く。うわー。首無いのに歩いてるぅぅぅ。


これ、きりがないじゃん!!

ギギギギッ、ギギギギッ


「ナディアさん!首の後ろ!悪の種子があるよ!!そこを削ぎ取ろうっ。削いだら浄化の魔法だよっ!!」

そうナディアさんに叫びながらサフィニアさんは、首の後ろを狙ってウインドカッターを飛ばしている。
シュンッという音をたてて、削ぎ取った悪の種子。その瞬間ドラゴニュートゾンビは
粉々に崩れていく。

操られているのか?
どこから?誰が?

結界の中からだけど、床に沿って索敵の魔法を広げる。


おかしいな。何も引っ掛からない。
もう一度、と思ってふいに天井を見た。

あれなんだ?


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

【完結】亡き冷遇妃がのこしたもの〜王の後悔〜

なか
恋愛
「セレリナ妃が、自死されました」  静寂をかき消す、衛兵の報告。  瞬間、周囲の視線がたった一人に注がれる。  コリウス王国の国王––レオン・コリウス。  彼は正妃セレリナの死を告げる報告に、ただ一言呟く。 「構わん」……と。  周囲から突き刺さるような睨みを受けても、彼は気にしない。  これは……彼が望んだ結末であるからだ。  しかし彼は知らない。  この日を境にセレリナが残したものを知り、後悔に苛まれていくことを。  王妃セレリナ。  彼女に消えて欲しかったのは……  いったい誰か?    ◇◇◇  序盤はシリアスです。  楽しんでいただけるとうれしいです。    

王が気づいたのはあれから十年後

基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。 妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。 仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。 側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。 王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。 王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。 新たな国王の誕生だった。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

わたしを捨てた騎士様の末路

夜桜
恋愛
 令嬢エレナは、騎士フレンと婚約を交わしていた。  ある日、フレンはエレナに婚約破棄を言い渡す。その意外な理由にエレナは冷静に対処した。フレンの行動は全て筒抜けだったのだ。 ※連載

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

【完結】辺境伯令嬢は新聞で婚約破棄を知った

五色ひわ
恋愛
 辺境伯令嬢としてのんびり領地で暮らしてきたアメリアは、カフェで見せられた新聞で自身の婚約破棄を知った。真実を確かめるため、アメリアは3年ぶりに王都へと旅立った。 ※本編34話、番外編『皇太子殿下の苦悩』31+1話、おまけ4話

記憶がないので離縁します。今更謝られても困りますからね。

せいめ
恋愛
 メイドにいじめられ、頭をぶつけた私は、前世の記憶を思い出す。前世では兄2人と取っ組み合いの喧嘩をするくらい気の強かった私が、メイドにいじめられているなんて…。どれ、やり返してやるか!まずは邸の使用人を教育しよう。その後は、顔も知らない旦那様と離婚して、平民として自由に生きていこう。  頭をぶつけて現世記憶を失ったけど、前世の記憶で逞しく生きて行く、侯爵夫人のお話。   ご都合主義です。誤字脱字お許しください。

処理中です...