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修学旅行大量神隠し事変
第39話 方向性の違い(百合草視点)
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ホテルに設置されている時計が刻一刻《こくいっこく》と時計の針を進めている。授業やバイトをしていいるときはお役所仕事のような速さだというのに、楽しい時間はすぐに過ぎ去ってしまう。
時間の経過を見てみれば、大分時間が経っていた。それを認識してしまったせいか、どっと体が重くなる。
同じルームメイトはどうしているだろうかと目を向ければ、クラスの女子から行方不明になった生徒の情報をセコセコ収集しているようだ。
そのルームメイトは、と言っても桜さんと英梨ちゃんであるのだが、さっきからひっきりなしにスマホに通知が届いては、何やら紙に書き込んでいる。
私は何をやっているのかって?
英梨ちゃんたちが集めた情報を、特に失踪した位置をマップ上に書き込んでいる。失踪場所に傾向が掴めると思っていたが、一向に傾向が見えてこない。
ついに目のピントが合わなくなり、沸き上がるようにあくびが出てくる。
「はぁぁあ~」
呑気にあくびをかましていれば、ペンの音が不意に止む。
「もう日付けが変わってしまったね…そろそろ寝ないと明日にさしつかえるか…」
流石に桜さんと言えども疲れたのだろう。ぐっと背伸びをしては、ぽてんと横に倒れた。
そして、もう一人の方はと言いうと…船をこいでいた。これでは作業効率が極端に低下していることだろう。
「英梨ちゃんもさっきからウトウトしている事ですし、そろそろ寝ますか?」
英梨ちゃんが授業中ずっと船をこいでいる場面は時たま…結構目撃するが、今回はただ単に眠いだけだろう。
そう信じたい
「ん~~っ、はぁ…そうだね…明日やるべきことは決まったしね」
ぐっと伸びをしながら,艶めかしい声をあげる桜さん
はだけた浴衣から、シュークリームのような胸がチラチラと覗いている。
この一年で可愛くて、男好みの体にさらに磨きがかかった。
そんな姿に私は、もちろんムラムラではなく…イライラする。何回見ても完璧に整った姿形《すがたかたち》に欠点がない。
そんな姿なら、もう相手なんぞよりどり緑だろう。だから、ぜひ亮君意外の人と幸せになってもらいたい。
いや、なれ!!
そんあ八つ当たりをかましていると、その感情を読んだのか、勝ち誇った顔で煽ってくる。
「なんだい?そんな腹を立てて、まさかまだこのボクに反抗するのかい?」
「…いいえ、私は桜さんと違い野蛮な攻撃魔法が得意ではないので…今はまだやめときます」
売り言葉に買い言葉
この部屋の空気が一気に張り詰める。
挙動一つ一つが監視されるような感覚は、ここ一年でかなり見知ったものになった。
「今は…英梨が寝ているから見逃してやる…」
今度は苦虫を踏み潰したような表情を浮かべる。
「随分と口調が崩れましたね。睡眠不足でイライラしてるんじゃないんですか?」
この喧嘩腰の会話も、もう慣れたものだ。
最初はこの独特の空気に慣れず怖かったのだが、慣れてしまえばお気に入りのおもちゃを取られまいと子供が威嚇しているようにしか感じられない。
桜 彩は意外と幼稚なのだ。
この話題では分が悪いと感じたのか、話題を変えて話しかけてくる。それは、私たちの共通の話題…彼、小鳥遊 亮のことだ。
「…それで…彼が今回、何をしようとしているのか見当はついたかい?」
「いいえ、全く…」
「そっか…」
元からあまり期待などはしていなかったのだろう。私の返答に関しても、特に疑うことなく納得した。
今回彼が何か企んでいるのか、企んでいないのかも分からない。でも山本君の突飛な行動、絶対に彼が何かをしたのだろう。何か唆したのは絶対だ。
ここにきて気づく。桜さんであれば、相手の心を読むことなど容易ではないのか?と。その能力を使えば亮君の考えなどすぐにわかるだろうに。
「あなたのそのご自慢の力でなんとかならないのですか?」
「あ~、それはね…出来なくなった。」
あまりにも、予想外の返答に、私は絶句する。
「はあ? それはどいう言うことですか?」
彼女の魔素操作は人の感情を読みとれるレベルまでに到達している。それはいつも身をもって知っていることでもある。
それが出来なくなった??
疑いの目で桜さんを凝視していると、バツが悪そうに、心を読み取ることが出来なくなった原因について話し始める。
「いや実は、彼の好みを知ろうと、いろいろやってしまった結果、あはははは…」
「え?何をやらかしたんですか?!!というかそんなくだらないことに使ってたんですか?!!」
言葉を濁し、バツの悪そうに乾いた笑みを浮かべる桜さんに再度詰め寄る。
「く、くだらないとは心外だね!彼のことを管理し、知ろうとするのはと、当然じゃないか!!!」
「管理しようとして、失敗した挙句、考えを読みとれなくなったバカは誰ですか!」
聞くところによると、彼の性癖をすべて暴いてしまったらしい。その結果、思考を読みづらくなったとか
えっぐ!? 思春期の男子にそこまでします?
「まあ、手に入った情報はそれなりに価値があった。後悔はしてないよ」
「……」
「ああ、もちろん百合草、君には教えないよ。今日のことは許されざる蛮行だ。」
「いや、いりませんよ…」
私が否定すると残念と言わんばかりに片方の口角をあげる。
桜さんとの会話が途切れ、英梨ちゃんの息遣いが大きく聞こえた。そこで、今度は私から最近疑問に思っていることを投げかける。最近になって、桜さんの狂気には磨きがかかってきている。
「彼をマインドコントロールしてまで欲しいんですか?」
「ああ、もちろんだ」
即答で返答する桜さんに気圧される。
ああ認めよう。桜さんの才能はその圧倒的な姿かたちではなく、亮君をどこまでも愛するものであると。
しかし、皮肉にも彼に愛されるという才能は無いようだが。
最近になって、桜さんの行動が段々と大胆になって来ていることは明らかだ。
亮君には巧妙に隠されているが、向けている狂気の度合いは一年前より明らかに進んでいる。
絶対に手に入れようとするその独占欲は危険だ。
「そうですか…私とは考えが異なるようですね。残念ながら」
「別に構わないよ…君の考えには興味のかけらもないしね」
§
桜さんとの会話が訣別《けつべつ》という形で終わりを迎えた後、私は異常に喉が渇いたためロビーにある自販機まで降りてきた。いつも賑わっているロビーが自販機の無機質な音だけが響いている。
売店の方を見れば白い網が掛けられ、店内も暗くなっている。
「お? 百合草じゃん~」
後ろから見知った声が聞こえて振り向いてみると、さっきまで話題の中心だった亮君が姿を現す。
あの集会において、あまり真面目には参加していなかった彼。今回の行動に関しては本当に謎だらけである。
「まだ寝ていなかったのですね」
「ああまあな、そういうお前こそ、寝不足はお肌に悪いぞ?」
毎回毎回、あたしが気にしているようなところを…好きな人に言われると敏感に反応してしまう言葉チョイスに腹が立つ。
誰のために肌をきれいに保っているのか、誰のためにガワをきれいに保っているのか。誰が欲しくてこんな…
「早く、寝るんだぞ~」
会話も早々に切り上げて、亮君は帰っていく。その後ろ姿をぼんやりと見ながら思うのだ。
きっと、今回も彼が何とかしてくれるし、なんとでもなるのだろう。私たちに頼らなくても一人で。
でも本当に?
後で後悔しない?
投げやりな思考に頭の隅にある不安が一滴垂らされた
時間の経過を見てみれば、大分時間が経っていた。それを認識してしまったせいか、どっと体が重くなる。
同じルームメイトはどうしているだろうかと目を向ければ、クラスの女子から行方不明になった生徒の情報をセコセコ収集しているようだ。
そのルームメイトは、と言っても桜さんと英梨ちゃんであるのだが、さっきからひっきりなしにスマホに通知が届いては、何やら紙に書き込んでいる。
私は何をやっているのかって?
英梨ちゃんたちが集めた情報を、特に失踪した位置をマップ上に書き込んでいる。失踪場所に傾向が掴めると思っていたが、一向に傾向が見えてこない。
ついに目のピントが合わなくなり、沸き上がるようにあくびが出てくる。
「はぁぁあ~」
呑気にあくびをかましていれば、ペンの音が不意に止む。
「もう日付けが変わってしまったね…そろそろ寝ないと明日にさしつかえるか…」
流石に桜さんと言えども疲れたのだろう。ぐっと背伸びをしては、ぽてんと横に倒れた。
そして、もう一人の方はと言いうと…船をこいでいた。これでは作業効率が極端に低下していることだろう。
「英梨ちゃんもさっきからウトウトしている事ですし、そろそろ寝ますか?」
英梨ちゃんが授業中ずっと船をこいでいる場面は時たま…結構目撃するが、今回はただ単に眠いだけだろう。
そう信じたい
「ん~~っ、はぁ…そうだね…明日やるべきことは決まったしね」
ぐっと伸びをしながら,艶めかしい声をあげる桜さん
はだけた浴衣から、シュークリームのような胸がチラチラと覗いている。
この一年で可愛くて、男好みの体にさらに磨きがかかった。
そんな姿に私は、もちろんムラムラではなく…イライラする。何回見ても完璧に整った姿形《すがたかたち》に欠点がない。
そんな姿なら、もう相手なんぞよりどり緑だろう。だから、ぜひ亮君意外の人と幸せになってもらいたい。
いや、なれ!!
そんあ八つ当たりをかましていると、その感情を読んだのか、勝ち誇った顔で煽ってくる。
「なんだい?そんな腹を立てて、まさかまだこのボクに反抗するのかい?」
「…いいえ、私は桜さんと違い野蛮な攻撃魔法が得意ではないので…今はまだやめときます」
売り言葉に買い言葉
この部屋の空気が一気に張り詰める。
挙動一つ一つが監視されるような感覚は、ここ一年でかなり見知ったものになった。
「今は…英梨が寝ているから見逃してやる…」
今度は苦虫を踏み潰したような表情を浮かべる。
「随分と口調が崩れましたね。睡眠不足でイライラしてるんじゃないんですか?」
この喧嘩腰の会話も、もう慣れたものだ。
最初はこの独特の空気に慣れず怖かったのだが、慣れてしまえばお気に入りのおもちゃを取られまいと子供が威嚇しているようにしか感じられない。
桜 彩は意外と幼稚なのだ。
この話題では分が悪いと感じたのか、話題を変えて話しかけてくる。それは、私たちの共通の話題…彼、小鳥遊 亮のことだ。
「…それで…彼が今回、何をしようとしているのか見当はついたかい?」
「いいえ、全く…」
「そっか…」
元からあまり期待などはしていなかったのだろう。私の返答に関しても、特に疑うことなく納得した。
今回彼が何か企んでいるのか、企んでいないのかも分からない。でも山本君の突飛な行動、絶対に彼が何かをしたのだろう。何か唆したのは絶対だ。
ここにきて気づく。桜さんであれば、相手の心を読むことなど容易ではないのか?と。その能力を使えば亮君の考えなどすぐにわかるだろうに。
「あなたのそのご自慢の力でなんとかならないのですか?」
「あ~、それはね…出来なくなった。」
あまりにも、予想外の返答に、私は絶句する。
「はあ? それはどいう言うことですか?」
彼女の魔素操作は人の感情を読みとれるレベルまでに到達している。それはいつも身をもって知っていることでもある。
それが出来なくなった??
疑いの目で桜さんを凝視していると、バツが悪そうに、心を読み取ることが出来なくなった原因について話し始める。
「いや実は、彼の好みを知ろうと、いろいろやってしまった結果、あはははは…」
「え?何をやらかしたんですか?!!というかそんなくだらないことに使ってたんですか?!!」
言葉を濁し、バツの悪そうに乾いた笑みを浮かべる桜さんに再度詰め寄る。
「く、くだらないとは心外だね!彼のことを管理し、知ろうとするのはと、当然じゃないか!!!」
「管理しようとして、失敗した挙句、考えを読みとれなくなったバカは誰ですか!」
聞くところによると、彼の性癖をすべて暴いてしまったらしい。その結果、思考を読みづらくなったとか
えっぐ!? 思春期の男子にそこまでします?
「まあ、手に入った情報はそれなりに価値があった。後悔はしてないよ」
「……」
「ああ、もちろん百合草、君には教えないよ。今日のことは許されざる蛮行だ。」
「いや、いりませんよ…」
私が否定すると残念と言わんばかりに片方の口角をあげる。
桜さんとの会話が途切れ、英梨ちゃんの息遣いが大きく聞こえた。そこで、今度は私から最近疑問に思っていることを投げかける。最近になって、桜さんの狂気には磨きがかかってきている。
「彼をマインドコントロールしてまで欲しいんですか?」
「ああ、もちろんだ」
即答で返答する桜さんに気圧される。
ああ認めよう。桜さんの才能はその圧倒的な姿かたちではなく、亮君をどこまでも愛するものであると。
しかし、皮肉にも彼に愛されるという才能は無いようだが。
最近になって、桜さんの行動が段々と大胆になって来ていることは明らかだ。
亮君には巧妙に隠されているが、向けている狂気の度合いは一年前より明らかに進んでいる。
絶対に手に入れようとするその独占欲は危険だ。
「そうですか…私とは考えが異なるようですね。残念ながら」
「別に構わないよ…君の考えには興味のかけらもないしね」
§
桜さんとの会話が訣別《けつべつ》という形で終わりを迎えた後、私は異常に喉が渇いたためロビーにある自販機まで降りてきた。いつも賑わっているロビーが自販機の無機質な音だけが響いている。
売店の方を見れば白い網が掛けられ、店内も暗くなっている。
「お? 百合草じゃん~」
後ろから見知った声が聞こえて振り向いてみると、さっきまで話題の中心だった亮君が姿を現す。
あの集会において、あまり真面目には参加していなかった彼。今回の行動に関しては本当に謎だらけである。
「まだ寝ていなかったのですね」
「ああまあな、そういうお前こそ、寝不足はお肌に悪いぞ?」
毎回毎回、あたしが気にしているようなところを…好きな人に言われると敏感に反応してしまう言葉チョイスに腹が立つ。
誰のために肌をきれいに保っているのか、誰のためにガワをきれいに保っているのか。誰が欲しくてこんな…
「早く、寝るんだぞ~」
会話も早々に切り上げて、亮君は帰っていく。その後ろ姿をぼんやりと見ながら思うのだ。
きっと、今回も彼が何とかしてくれるし、なんとでもなるのだろう。私たちに頼らなくても一人で。
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