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33. 女の敵は女?男?
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ザラとブランクの口が閉じたのを確認して客室を出たアリスは自室に戻った。
「未来の旦那様の印象はいかがでしたか?」
「………………」
イリスの言葉に固まっているアリス。
「いやだわ……」
いや?でも声色には嫌悪というよりも驚いているような響きが。
「全然ブランク様のことちゃんと見てなかったわ」
「えっ!?普通にお話ししてたじゃないですか!」
「いやねえ、ちゃんと顔も声も覚えているわよ。でもあんまり興味がわかなかったというか、どうでも良いと思ってしまったというか……むしろ」
楽しませてくれるのはあの人かしら。
「女の敵は女ってことですね」
イリスがさっき軽くジャブをかました相手を思い出し言う。
「イリスもまだまだね」
「?じゃあ3人の王子様ですか?……えっ!?楽しむってそっち方面ですか!?マジで不細工がタイプなんですか!?」
ナチュラルに失礼なことを宣うイリスにフランクの目が点になる。
「不細工って……お前」
ダイラス国の王子たちは不細工ではない。整った顔立ちをしている。彼らが不細工だったら世の中の男たちのほとんどが不細工になってしまう。
「旦那様や兄君たちの顔に慣れてしまいまして……失礼いたしました」
「フフッ、それだけイリスの美の基準値が上がったということかしら。まあ王妃様も興味深いわね。でも敵となるかどうかは明日次第よ」
あえて誰かを言わないようにしていたのに、はっきり言っちゃったよ。
「いや、敵でしょう。こう弱々しく振る舞ってるというのか……ぶりっこというべきか……。明日は婚姻の条件について話し合う日ですからね」
本来ならば外交官が話し合いで決めることだが……国としては何もいらないからカサバイン家が決めれば良いと国からお達しがあり、その後エレナから自分でやっておいてとお達しがあったのでアリス自身が話し合いに臨むことになった。
「あのー…………」
「何よフランク」
「二人共さっきから普通に話してますけど、いいんですか?」
彼の視線の先にいるのは先程から黙って佇んでいる2人の侍女候補。
「別に構わないわ。どうぞ御主人様にお話ししちゃってちょうだい」
だって、私は勝手に覗き見しちゃってるし。腰掛けていた椅子から立ち上がったアリスは二人の前で足を止める。二人は直視しないように軽く視線を下げる。
「王妃の手先であるアイラ」
アイラは頬を撫でられ身体が硬直する。
「宰相の手先であるルリハ」
同じく頬を撫でられ硬直するルリハ。硬直した二人を見てアリスは再び椅子に座る。ゴクッとつばを飲み込む音がする。
「わかっていながら平気で話しをされるのはなぜですか?」
ルリハの問いかけにアリスは悪役のようにニッと笑う。皆に馬鹿にされ蔑まれてきたとは思えないこの高飛車な態度、表情。なぜガルベラ王国はこの女性を虐げることなどできたのか。
「二人共……男運わっる~~~い」
「「!?」」
えっ!?今何を言われた?処罰や裏取引などをもちかけられるかと思ったら、男運が悪い!?二人は気づく。先程の笑みはアリスが二人を嘲笑ったものだと。
「見える……。見えますよ~」
両手の親指と人差し指でメガネを形作りそここら二人を覗くアリス。
「アイラの恋人が昨日ぶりっ子娘と腕を絡ませてアクセサリーを物色している姿が、その後は高級レストランでディナー、その後はベッドでいちゃいちゃ」
アイラの顔が歪む。昨日は久しぶりのデートだったのに恋人にドタキャンされたのだ。
「フフッ、昨日はぶりっ子娘の誕生日だったみたいね……?」
ね……?と首を傾げるさまが実に気怠げ。ぶりっ子娘……昨日が誕生日……。はっ!とある女性が浮かぶ。固まるアイラに優しく囁く。
「早退OKよ」
「……お言葉に甘えまして」
しずしずと下がるアイラ。しかし取っ手を掴む顔はもはや鬼の形相。パタンと締まるとズダダダダーッと走る音。静寂に満ちる室内に再びアリスの声が響く。
「見える……。見えるわ~」
デジャブ。ゆっくりとアリスに視線を向けるルリハ。
「ルリハの恋人が今!まさに現在!自宅のベッドでいちゃいちゃしているのが」
ルリハの目が驚きに見開かれる。
「お相手はあら……まな板ボディーの質素なお顔のご令嬢。ちなみに髪の毛は黄緑色」
華やかでメリハリのある体つきのルリハとは正反対ね、という声が聞こえるがうまく頭に入ってこない。ばっと手を上げるルリハ。どうぞと言われ申し出る。
「私も早退させていただいてもよろしいでしょうか?」
もちろんと頷き、膝においていた扇子をドアに向ける。失礼しますと言って去っていくルリハの表情はアイラを上回る鬼の面。
「また覗いたんですか?」
イリスのじっとりとした視線がアリスにまとわりつく。
「あら、いいじゃない。これも何かの縁よ。彼女たちがクズ男と結ばれないようにしたんだから。人助けよ」
悪びれる様子のないアリスにため息を吐くイリス。確かに今回は一理ある。女の敵は女。されど浮気をするような男は全ての女の敵であるのでは……だから良いか。
仕事を始めるイリス。
一方フランクは浮気を密告したアリスの言動、美女二人の鬼の形相への変化に青ざめていた。
「未来の旦那様の印象はいかがでしたか?」
「………………」
イリスの言葉に固まっているアリス。
「いやだわ……」
いや?でも声色には嫌悪というよりも驚いているような響きが。
「全然ブランク様のことちゃんと見てなかったわ」
「えっ!?普通にお話ししてたじゃないですか!」
「いやねえ、ちゃんと顔も声も覚えているわよ。でもあんまり興味がわかなかったというか、どうでも良いと思ってしまったというか……むしろ」
楽しませてくれるのはあの人かしら。
「女の敵は女ってことですね」
イリスがさっき軽くジャブをかました相手を思い出し言う。
「イリスもまだまだね」
「?じゃあ3人の王子様ですか?……えっ!?楽しむってそっち方面ですか!?マジで不細工がタイプなんですか!?」
ナチュラルに失礼なことを宣うイリスにフランクの目が点になる。
「不細工って……お前」
ダイラス国の王子たちは不細工ではない。整った顔立ちをしている。彼らが不細工だったら世の中の男たちのほとんどが不細工になってしまう。
「旦那様や兄君たちの顔に慣れてしまいまして……失礼いたしました」
「フフッ、それだけイリスの美の基準値が上がったということかしら。まあ王妃様も興味深いわね。でも敵となるかどうかは明日次第よ」
あえて誰かを言わないようにしていたのに、はっきり言っちゃったよ。
「いや、敵でしょう。こう弱々しく振る舞ってるというのか……ぶりっこというべきか……。明日は婚姻の条件について話し合う日ですからね」
本来ならば外交官が話し合いで決めることだが……国としては何もいらないからカサバイン家が決めれば良いと国からお達しがあり、その後エレナから自分でやっておいてとお達しがあったのでアリス自身が話し合いに臨むことになった。
「あのー…………」
「何よフランク」
「二人共さっきから普通に話してますけど、いいんですか?」
彼の視線の先にいるのは先程から黙って佇んでいる2人の侍女候補。
「別に構わないわ。どうぞ御主人様にお話ししちゃってちょうだい」
だって、私は勝手に覗き見しちゃってるし。腰掛けていた椅子から立ち上がったアリスは二人の前で足を止める。二人は直視しないように軽く視線を下げる。
「王妃の手先であるアイラ」
アイラは頬を撫でられ身体が硬直する。
「宰相の手先であるルリハ」
同じく頬を撫でられ硬直するルリハ。硬直した二人を見てアリスは再び椅子に座る。ゴクッとつばを飲み込む音がする。
「わかっていながら平気で話しをされるのはなぜですか?」
ルリハの問いかけにアリスは悪役のようにニッと笑う。皆に馬鹿にされ蔑まれてきたとは思えないこの高飛車な態度、表情。なぜガルベラ王国はこの女性を虐げることなどできたのか。
「二人共……男運わっる~~~い」
「「!?」」
えっ!?今何を言われた?処罰や裏取引などをもちかけられるかと思ったら、男運が悪い!?二人は気づく。先程の笑みはアリスが二人を嘲笑ったものだと。
「見える……。見えますよ~」
両手の親指と人差し指でメガネを形作りそここら二人を覗くアリス。
「アイラの恋人が昨日ぶりっ子娘と腕を絡ませてアクセサリーを物色している姿が、その後は高級レストランでディナー、その後はベッドでいちゃいちゃ」
アイラの顔が歪む。昨日は久しぶりのデートだったのに恋人にドタキャンされたのだ。
「フフッ、昨日はぶりっ子娘の誕生日だったみたいね……?」
ね……?と首を傾げるさまが実に気怠げ。ぶりっ子娘……昨日が誕生日……。はっ!とある女性が浮かぶ。固まるアイラに優しく囁く。
「早退OKよ」
「……お言葉に甘えまして」
しずしずと下がるアイラ。しかし取っ手を掴む顔はもはや鬼の形相。パタンと締まるとズダダダダーッと走る音。静寂に満ちる室内に再びアリスの声が響く。
「見える……。見えるわ~」
デジャブ。ゆっくりとアリスに視線を向けるルリハ。
「ルリハの恋人が今!まさに現在!自宅のベッドでいちゃいちゃしているのが」
ルリハの目が驚きに見開かれる。
「お相手はあら……まな板ボディーの質素なお顔のご令嬢。ちなみに髪の毛は黄緑色」
華やかでメリハリのある体つきのルリハとは正反対ね、という声が聞こえるがうまく頭に入ってこない。ばっと手を上げるルリハ。どうぞと言われ申し出る。
「私も早退させていただいてもよろしいでしょうか?」
もちろんと頷き、膝においていた扇子をドアに向ける。失礼しますと言って去っていくルリハの表情はアイラを上回る鬼の面。
「また覗いたんですか?」
イリスのじっとりとした視線がアリスにまとわりつく。
「あら、いいじゃない。これも何かの縁よ。彼女たちがクズ男と結ばれないようにしたんだから。人助けよ」
悪びれる様子のないアリスにため息を吐くイリス。確かに今回は一理ある。女の敵は女。されど浮気をするような男は全ての女の敵であるのでは……だから良いか。
仕事を始めるイリス。
一方フランクは浮気を密告したアリスの言動、美女二人の鬼の形相への変化に青ざめていた。
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