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聖女暗殺編
第47話 教会勢力(2)
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「桃原愛美様、こんにちは」
「あら、ラテラさん。こんにちは」
桃原愛美は基本、白を基調とした服を着ている。
それも全身を包む重厚なローブのようなもので、首元に付いている金の装飾は神々しい。
まさしく”聖女”と言った服装だ。
そんな彼女は今、教会を訪れていた。
王都にある教会は大きい建物にしては珍しく、貴族街から離れたところにある。
それは、治癒や礼拝、懺悔などの利用者が貴族に少ないことに起因していた。
教会の敷地内には、教会そのものだけでなく、周りには庭園があり、そこには花が植えられている。
宗教の規模が莫大ということもあり、その敷地はかなり大きい。
周りに建物がない事で、教会の神聖な雰囲気が保たれていた。
建物が巨大だということを除けば、教会は想像通りの見た目である。
白を基調として、所々が黄金色。
中に入れば神々の像が左右に並べられ、最奥には最高神の像が建てられている。
天井はステンドグラス張り。そこには多彩な色で天使が描かれており、光が射し込むと神秘的に神々の像を照らし出すように設計されている。
部屋はいくつか分かれている。
入った先にあるのは礼拝堂。
右には懺悔室。
左には治癒室だ。
礼拝堂には基本、聖女や司祭といった、重要な天職を持った人間が一人は居る。
人々は神に直接祈りを捧げるのではなく、自分たちの信仰心を聖女や司祭に代わりに捧げてもらうのだ。
新天教にはそういった礼拝のルールがあった。
懺悔室では、シスター服を着た女性たちが仕事をしている。
仕事内容はカウンセリングのようなものだ。
相談に来た人の懺悔を聞き、共に神に許しを請う。
そうすることでその罪を許してもらい、明日からまた頑張って生きようというのだ。
日本人である桃原愛美にその感覚は分からなかったが、神を信じる宗教の中にはそんな文化があったことは覚えていた。
治癒室の役割はそのままだ。
神官や聖女、司教など、癒やす傷や病のレベルに応じて対応する人は変わるものの、仕事内容は大して変わらない。
冒険者の利用が多いが、冒険者の中にはパーティーに神官を入れているものが多いため、基本的に仕事が回ってくるのは聖女や司教だ。
解呪や大怪我の治療が多い。病の治療を頼むのは民間人が主だ。
長期任務やダンジョン内で感染症を患う者も居るが、それは少数派だ。
桃原愛美の役割は、どちらかと言えば礼拝堂での仕事に近い。
彼女は魔術師ギルドマスターによる指導をあまり受けていない。というのも、攻撃魔法に関する指導が増えてきた反面、彼女はそれに適正がなかったからだ。
魔法の基礎的な話は聞いていたが、実践からは受ける機会が少なくなった。
代わりに教会へと通っていたのだ。
教会では司教や聖女を中心に、聖魔法を教えて貰っていた。
彼女の成長の速さもあり、その腕前は既に一人前だ。
決して、治癒室での仕事がこなせないというわけではない。
ではなぜ彼女は礼拝堂に居ることが多いのか。
その理由は単純で、多くの人にそれを望まれているからであった。
神に祈りを捧げるのが聖職者の役割だが、その中でも桃原愛美は直接女神と会ったことがあり、更には今後会う機会もある。
勇者として女神に使命を直接授かった存在でもある。
そんな彼女に祈りを代弁してもらうことは、民衆にとって夢のようなことだったのだ。
そんなこともあり、彼女の人気は驚くほど高い。
教会へ来て数週間とは思えないほど、彼女は絶大な人気を勝ち取って居た。
それにはもちろん、彼女の人の良さも影響している。
優しさと接しやすさ、そして神聖さを備えた彼女は、まさに天の使いと言うにふさわしいものだったのだ。
「本日も礼拝堂の方でしょうか?」
そういったこともあり、彼女が教会に行くと聞かれることはこれ一択だ。
普段ならばそれを肯定するだけなのだが、今日は違う。
「いえ、本日は女神様からのお願いで…教皇様に会いに来たんですよ」
「そうだったのですね!でしたらすぐ話を通してきますので、少々お待ち頂けますか?」
「ありがとうございます。お手数おかけします」
いつもの勝手で礼拝堂の近くまで行き、そこで数分待ったくらいだろうか。
ラテラが駆け足気味にこちらへ戻ってきた。
「お待たせしました…!案内しますので、こちらへ」
「ありがとうございます」
教皇がどこに居るか、何も聞いていない桃原愛美としては案内してくれることはありがたい。
彼女はラテラについて、礼拝堂の更に奥の部屋へと向かった。
「あら、ラテラさん。こんにちは」
桃原愛美は基本、白を基調とした服を着ている。
それも全身を包む重厚なローブのようなもので、首元に付いている金の装飾は神々しい。
まさしく”聖女”と言った服装だ。
そんな彼女は今、教会を訪れていた。
王都にある教会は大きい建物にしては珍しく、貴族街から離れたところにある。
それは、治癒や礼拝、懺悔などの利用者が貴族に少ないことに起因していた。
教会の敷地内には、教会そのものだけでなく、周りには庭園があり、そこには花が植えられている。
宗教の規模が莫大ということもあり、その敷地はかなり大きい。
周りに建物がない事で、教会の神聖な雰囲気が保たれていた。
建物が巨大だということを除けば、教会は想像通りの見た目である。
白を基調として、所々が黄金色。
中に入れば神々の像が左右に並べられ、最奥には最高神の像が建てられている。
天井はステンドグラス張り。そこには多彩な色で天使が描かれており、光が射し込むと神秘的に神々の像を照らし出すように設計されている。
部屋はいくつか分かれている。
入った先にあるのは礼拝堂。
右には懺悔室。
左には治癒室だ。
礼拝堂には基本、聖女や司祭といった、重要な天職を持った人間が一人は居る。
人々は神に直接祈りを捧げるのではなく、自分たちの信仰心を聖女や司祭に代わりに捧げてもらうのだ。
新天教にはそういった礼拝のルールがあった。
懺悔室では、シスター服を着た女性たちが仕事をしている。
仕事内容はカウンセリングのようなものだ。
相談に来た人の懺悔を聞き、共に神に許しを請う。
そうすることでその罪を許してもらい、明日からまた頑張って生きようというのだ。
日本人である桃原愛美にその感覚は分からなかったが、神を信じる宗教の中にはそんな文化があったことは覚えていた。
治癒室の役割はそのままだ。
神官や聖女、司教など、癒やす傷や病のレベルに応じて対応する人は変わるものの、仕事内容は大して変わらない。
冒険者の利用が多いが、冒険者の中にはパーティーに神官を入れているものが多いため、基本的に仕事が回ってくるのは聖女や司教だ。
解呪や大怪我の治療が多い。病の治療を頼むのは民間人が主だ。
長期任務やダンジョン内で感染症を患う者も居るが、それは少数派だ。
桃原愛美の役割は、どちらかと言えば礼拝堂での仕事に近い。
彼女は魔術師ギルドマスターによる指導をあまり受けていない。というのも、攻撃魔法に関する指導が増えてきた反面、彼女はそれに適正がなかったからだ。
魔法の基礎的な話は聞いていたが、実践からは受ける機会が少なくなった。
代わりに教会へと通っていたのだ。
教会では司教や聖女を中心に、聖魔法を教えて貰っていた。
彼女の成長の速さもあり、その腕前は既に一人前だ。
決して、治癒室での仕事がこなせないというわけではない。
ではなぜ彼女は礼拝堂に居ることが多いのか。
その理由は単純で、多くの人にそれを望まれているからであった。
神に祈りを捧げるのが聖職者の役割だが、その中でも桃原愛美は直接女神と会ったことがあり、更には今後会う機会もある。
勇者として女神に使命を直接授かった存在でもある。
そんな彼女に祈りを代弁してもらうことは、民衆にとって夢のようなことだったのだ。
そんなこともあり、彼女の人気は驚くほど高い。
教会へ来て数週間とは思えないほど、彼女は絶大な人気を勝ち取って居た。
それにはもちろん、彼女の人の良さも影響している。
優しさと接しやすさ、そして神聖さを備えた彼女は、まさに天の使いと言うにふさわしいものだったのだ。
「本日も礼拝堂の方でしょうか?」
そういったこともあり、彼女が教会に行くと聞かれることはこれ一択だ。
普段ならばそれを肯定するだけなのだが、今日は違う。
「いえ、本日は女神様からのお願いで…教皇様に会いに来たんですよ」
「そうだったのですね!でしたらすぐ話を通してきますので、少々お待ち頂けますか?」
「ありがとうございます。お手数おかけします」
いつもの勝手で礼拝堂の近くまで行き、そこで数分待ったくらいだろうか。
ラテラが駆け足気味にこちらへ戻ってきた。
「お待たせしました…!案内しますので、こちらへ」
「ありがとうございます」
教皇がどこに居るか、何も聞いていない桃原愛美としては案内してくれることはありがたい。
彼女はラテラについて、礼拝堂の更に奥の部屋へと向かった。
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