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天然先生の秘密
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チャイムが鳴った。始業を知らせる音。
高校卒業まであと一ヶ月。あと何回この音色を聞けるのだろうと速水孝太郎はぼんやりと思う。机に頬杖をつきながら、窓の外に想いを馳せながら。
一限目は国語の授業、のはずだった。国語の教員は、速水たちの担任である櫻井だ。しかし、授業の時間から五分ほどが経っているがとうの櫻井は現れる気配はない。
「なあ、櫻井先生遅くない……?」
「もしかして、体調悪いとか……? 今日やすみだったっけ?」
担任の来ない教室はざわざわと憶測が飛び交い始める。あくまで憶測でしかないのだが、実は担任は学校が嫌になってやめたとかおかしなものまで飛び出してくる。速水は、担任を呼びに行こうとして立ち上がったその時だった。
教室の外からバタバタと騒がしい足音が近づいてくる。その足音は教室の廊下沿いの窓をかすかに揺らしながら、その音がふいに止んだかと思うとガラリと勢いよく教室のドアが開いた。
「うわああっ、ごめん……! みんな、ごめん! うわああっ……」
櫻井先生はドアを開けたその勢いのまま、教室の中に一歩を踏み出し、そしてそのまま前方に倒れこんだ。
どすんと鈍い音が教室に響いた。
「先生……もしかして転んだの?」
生徒たちに声をかけられ、顔を真っ赤にしながらぶんぶんと首を振る櫻井先生。膝立ちで生徒たちの方を向いて、
にっこりと笑ってみせる。いつものしわくちゃの先生の笑顔だ。
「いやっ、転んでない……膝を打っただけ!」
「先生、それを転んだっていうんじゃないの?」
ふふふとクラスの中で笑い声が漏れる。
「それで、なんで遅れちゃったの? 先生」
「それは……いや……教室が……」
「教室が?」
「教室が勝手に動いてたんだよ、いつものとこに入ったはずだったんだけど……全然違うところに……」
「教室、間違えたんですね」
「教室が動いたの……」
先生は両手で顔を覆っているけど、髪から覗く耳は真っ赤になっている。クラスの生徒たちはそのことに気づきながら、気づかないふりをしている。速水はそんな先生のことを頬杖をつき、みつめる。
——なつかしい、とすら思う。はじめて先生と出会った、入学式の日から先生はずっとこんな感じだった。三年にもならない、少し前のことなのにものすごく懐かしく感じてしまうのはなぜだろうと速水は思う。
入学式の日、おそらく緊張で顔を強張らせていた櫻井先生。クラス分けが行われ、生徒たちがみなソワソワとしている中現れた先生。黒髪の天然パーマが特徴的で、黒縁メガネの奥に覗く柔らかな垂れ目。中肉中背だが、胸を張っているからか身体は大きくそして高く見える。瞳は優しさが滲んでいて、生徒たちは優しい先生っぽくて良かったと潜め気あっていた。優しそうで頼り甲斐のありそうな先生、それが速水の先生に対する第一印象だった。そして、その印象はその入学式の日に砕け散った。
「よ、よろしく、お願い、しま、すゅ」
それが先生から生徒へのはじめの言葉だった。そして、緊張でそのあとも先生は噛み続けることになる訳だが、面白かったのはこれから。生徒たちを教室に引き連れていくため行進をするのだが、先生の手と足は一緒に出ていた。ピッピッと小気味の良い笛の音に続いて、足を鳴らす生徒たちの前で先生は転び、そして一回転してもう一度そのままの勢いで立ち上がった。
「ふふっ、懐かしいね。先生、入学式」
生徒たちが思い出してはまたくすりと笑ってしまう。そうだ、先生はあの時からずっと天然だったのだ。
「そういえばさ、文化祭の時さぁ、先生大事なところでセリフ忘れたよね」
「そうそう、白雪姫してるときに、先生、魔女の役で真っ白になっちゃったんだよね、緊張して白雪姫に毒林檎食べさせないまま終わっちゃったんだよ」
「体育祭んときはさ、借り物競争して『すきな人』ってお題もらって校長先生つれて走ってまたこけてたよね」
「校長先生も一緒に転んでたもんね? 先生」
生徒たちにチクチクと詰められて、先生の顔は弾けて消えてしまいそうなくらい真っ赤になっていた。あの時の食べられなかった毒林檎みたいに。
「もう、わかった……! 今日は教室を間違えたのは先生です……! ごめん、悪かった……」
林檎みたいな先生。間違った時、素直にごめんと謝ってくれる人。そんな風に素直に謝ってくれる大人を速水はあまり見たことがなかったから、今でもときどき驚いてしまうことがある。
「うわあああっ……」
立ち上がろうとした先生はまたいつものように教壇に足を引っ掛けて転びそうになっている。けれど、先生はなんでもないふりをしながら、教科書を開いた。
「はいっはいっ……今日は64ページから! はいっそこ! 何笑ってるの?」
「ふふ、先生……服、汚れてるよ?」
生徒に指摘されて、さきほど転んだときについたチョークの粉がついた服をパンパンとはたきながら、先生は教科書を開く。
「それじゃあ……前から順番に一行ずつ音読していこうか」
「はあい」
右端の生徒が立ち上がり、教科書を持ちながら音読を始める。照れたようにぶっきらぼうに音読する生徒の横を教科書を見つめながら、先生が歩いていく。うんうんと頷きながら、優しく微笑みながら。その教師らしい立ち振る舞いに、さきほどまで笑っていた生徒たちも静まり返り、音読する生徒に耳を傾ける。
「よろしい、それじゃあはい次どうぞ」
ひとり、ひとり、順番に立ち上がり音読をする。速水の番が回って来ようとしていた。速水は無意識に肩に力が入るけれど、自分ではそれに気づくことができない。音読はあまり得意ではない。けれど、櫻井の授業の中でこうして声に出すことでその言葉のなめらかさや耳ざわりの良さについて考えることができた。そのおかげでずいぶんと緊張することも減ってきたように思う。
次の生徒が音読を終わらせ、自分の番が回ってきて先生の「はい次」の掛け声を速水は待っていた。のだが、その声はどれほど待ってもかかることがない。代わりに聞こえてきたのは、教室の後ろの方から人がすすり泣くような声が聞こえる。クラスの生徒たちがその声を聞きながら、顔を青くするのがわかった。これは何かの幽霊に違いない、とぷるぷると震えながらゆっくりと声のする方に顔を向けた。
「っ……うっ……ひっく……みんな、ごめん……」
先生だった。先生は教室の後ろの方で、教科書で顔を覆って、嗚咽を漏らしながら泣いていた。
「せ、先生……? 泣いてんの?」
「いや……だって、ここはね? 主人公の友人への思いがとてもよく伝わる場面なんだよ……一度は諦めかけるけど、走っていこうとするわけだ」
ぼそぼそと喋っていた先生の瞳がきらりきらりと一番星のような輝きだ。言葉もだんだんと大きく、そして早くなるから、とてもオタクのようであるのだけれど、速水はそんな先生をみるのが嫌いではなかった。
「特にこのお話が面白いのはね、冒頭の部分でこの話がどうなるか、どんな人物かっていうことがよく表れていることなんだよね。冒頭を読んだ読者に読みたいと思わせてしまう……それがこの作者の技術で……」
気がつけば、目を潤ませながら必死にしゃべっている先生の話に生徒たちはみな釘付けになっている。その力強い言葉から目も耳も離すことができなくなっているから不思議だ。
「ね? だから、この話は面白くて、魅力的なんだよ」
「へえ……なんか、面白いかも……」
「でしょう? 国語はね、実はとても面白い授業なんだよね。この文章の中に、君たちを惹きつける技法がたくさん詰まってる」
生徒たちは先ほどまで先生のことを笑っていたのに、今は先生の言葉だけを聞き、深く頷くようなそぶりを見せる。速水もまた、その生徒の中の一人であった。こうやって、生徒の気持ちを惹きつけるような授業をするから、この先生の授業である国語は面白い。見ていて飽きないし、続きを読んでみたいと思ってしまう。げんに櫻井先生が授業をしている国語のテストは生徒たちが軒並み良かった。
もしかして、と速水はとある想像をしてみる。これが、桜井先生の策略なんだったとしたら。生徒たち全員が国語という授業に興味を持ち、なおかつ良い点数を取る。そのために天然な先生を演じているのだとしたら。
「せ、せんせい……」
黒板に向かっている先生の背中がかすかに震えたから、速水はぼそりと声をかけた。もし振り返ったとき、先生がにやりと笑いながらこっちをみていたらどうしようと思う。いや、だからといって先生や国語の授業が嫌いになるわけではないが、それはそれで少し吃驚してしまうかもしれない。
「先生……!」
速水が先生の名前を二度呼び、先生がようやく振り返っていた。その顔がにやりと頰が歪んでいた。わけではなかった。
「ひっく……ううっ……」
先生は鼻を真っ赤にしながら、ぼろぼろと涙をこぼしていた。
「ううっ……ごめん……また泣いちゃった……ううっ」
速水は先生の泣き顔をしばらく見つめていたが、吹き出すように笑う。ああ、自分はなんてばかな考えをしていたのだろうと思う。
生徒たちが速水の声に触発されたように、教室にどっと笑い声が溢れる。「なんで先生泣いているのお」とクラスの誰かがそういって、先生はまた真っ赤になって笑った。卒業式まであと少し。先生の授業はあと何回あるのだろうと速水はそんなことを考えながら、ぼんやりと空を仰いだ。
高校卒業まであと一ヶ月。あと何回この音色を聞けるのだろうと速水孝太郎はぼんやりと思う。机に頬杖をつきながら、窓の外に想いを馳せながら。
一限目は国語の授業、のはずだった。国語の教員は、速水たちの担任である櫻井だ。しかし、授業の時間から五分ほどが経っているがとうの櫻井は現れる気配はない。
「なあ、櫻井先生遅くない……?」
「もしかして、体調悪いとか……? 今日やすみだったっけ?」
担任の来ない教室はざわざわと憶測が飛び交い始める。あくまで憶測でしかないのだが、実は担任は学校が嫌になってやめたとかおかしなものまで飛び出してくる。速水は、担任を呼びに行こうとして立ち上がったその時だった。
教室の外からバタバタと騒がしい足音が近づいてくる。その足音は教室の廊下沿いの窓をかすかに揺らしながら、その音がふいに止んだかと思うとガラリと勢いよく教室のドアが開いた。
「うわああっ、ごめん……! みんな、ごめん! うわああっ……」
櫻井先生はドアを開けたその勢いのまま、教室の中に一歩を踏み出し、そしてそのまま前方に倒れこんだ。
どすんと鈍い音が教室に響いた。
「先生……もしかして転んだの?」
生徒たちに声をかけられ、顔を真っ赤にしながらぶんぶんと首を振る櫻井先生。膝立ちで生徒たちの方を向いて、
にっこりと笑ってみせる。いつものしわくちゃの先生の笑顔だ。
「いやっ、転んでない……膝を打っただけ!」
「先生、それを転んだっていうんじゃないの?」
ふふふとクラスの中で笑い声が漏れる。
「それで、なんで遅れちゃったの? 先生」
「それは……いや……教室が……」
「教室が?」
「教室が勝手に動いてたんだよ、いつものとこに入ったはずだったんだけど……全然違うところに……」
「教室、間違えたんですね」
「教室が動いたの……」
先生は両手で顔を覆っているけど、髪から覗く耳は真っ赤になっている。クラスの生徒たちはそのことに気づきながら、気づかないふりをしている。速水はそんな先生のことを頬杖をつき、みつめる。
——なつかしい、とすら思う。はじめて先生と出会った、入学式の日から先生はずっとこんな感じだった。三年にもならない、少し前のことなのにものすごく懐かしく感じてしまうのはなぜだろうと速水は思う。
入学式の日、おそらく緊張で顔を強張らせていた櫻井先生。クラス分けが行われ、生徒たちがみなソワソワとしている中現れた先生。黒髪の天然パーマが特徴的で、黒縁メガネの奥に覗く柔らかな垂れ目。中肉中背だが、胸を張っているからか身体は大きくそして高く見える。瞳は優しさが滲んでいて、生徒たちは優しい先生っぽくて良かったと潜め気あっていた。優しそうで頼り甲斐のありそうな先生、それが速水の先生に対する第一印象だった。そして、その印象はその入学式の日に砕け散った。
「よ、よろしく、お願い、しま、すゅ」
それが先生から生徒へのはじめの言葉だった。そして、緊張でそのあとも先生は噛み続けることになる訳だが、面白かったのはこれから。生徒たちを教室に引き連れていくため行進をするのだが、先生の手と足は一緒に出ていた。ピッピッと小気味の良い笛の音に続いて、足を鳴らす生徒たちの前で先生は転び、そして一回転してもう一度そのままの勢いで立ち上がった。
「ふふっ、懐かしいね。先生、入学式」
生徒たちが思い出してはまたくすりと笑ってしまう。そうだ、先生はあの時からずっと天然だったのだ。
「そういえばさ、文化祭の時さぁ、先生大事なところでセリフ忘れたよね」
「そうそう、白雪姫してるときに、先生、魔女の役で真っ白になっちゃったんだよね、緊張して白雪姫に毒林檎食べさせないまま終わっちゃったんだよ」
「体育祭んときはさ、借り物競争して『すきな人』ってお題もらって校長先生つれて走ってまたこけてたよね」
「校長先生も一緒に転んでたもんね? 先生」
生徒たちにチクチクと詰められて、先生の顔は弾けて消えてしまいそうなくらい真っ赤になっていた。あの時の食べられなかった毒林檎みたいに。
「もう、わかった……! 今日は教室を間違えたのは先生です……! ごめん、悪かった……」
林檎みたいな先生。間違った時、素直にごめんと謝ってくれる人。そんな風に素直に謝ってくれる大人を速水はあまり見たことがなかったから、今でもときどき驚いてしまうことがある。
「うわあああっ……」
立ち上がろうとした先生はまたいつものように教壇に足を引っ掛けて転びそうになっている。けれど、先生はなんでもないふりをしながら、教科書を開いた。
「はいっはいっ……今日は64ページから! はいっそこ! 何笑ってるの?」
「ふふ、先生……服、汚れてるよ?」
生徒に指摘されて、さきほど転んだときについたチョークの粉がついた服をパンパンとはたきながら、先生は教科書を開く。
「それじゃあ……前から順番に一行ずつ音読していこうか」
「はあい」
右端の生徒が立ち上がり、教科書を持ちながら音読を始める。照れたようにぶっきらぼうに音読する生徒の横を教科書を見つめながら、先生が歩いていく。うんうんと頷きながら、優しく微笑みながら。その教師らしい立ち振る舞いに、さきほどまで笑っていた生徒たちも静まり返り、音読する生徒に耳を傾ける。
「よろしい、それじゃあはい次どうぞ」
ひとり、ひとり、順番に立ち上がり音読をする。速水の番が回って来ようとしていた。速水は無意識に肩に力が入るけれど、自分ではそれに気づくことができない。音読はあまり得意ではない。けれど、櫻井の授業の中でこうして声に出すことでその言葉のなめらかさや耳ざわりの良さについて考えることができた。そのおかげでずいぶんと緊張することも減ってきたように思う。
次の生徒が音読を終わらせ、自分の番が回ってきて先生の「はい次」の掛け声を速水は待っていた。のだが、その声はどれほど待ってもかかることがない。代わりに聞こえてきたのは、教室の後ろの方から人がすすり泣くような声が聞こえる。クラスの生徒たちがその声を聞きながら、顔を青くするのがわかった。これは何かの幽霊に違いない、とぷるぷると震えながらゆっくりと声のする方に顔を向けた。
「っ……うっ……ひっく……みんな、ごめん……」
先生だった。先生は教室の後ろの方で、教科書で顔を覆って、嗚咽を漏らしながら泣いていた。
「せ、先生……? 泣いてんの?」
「いや……だって、ここはね? 主人公の友人への思いがとてもよく伝わる場面なんだよ……一度は諦めかけるけど、走っていこうとするわけだ」
ぼそぼそと喋っていた先生の瞳がきらりきらりと一番星のような輝きだ。言葉もだんだんと大きく、そして早くなるから、とてもオタクのようであるのだけれど、速水はそんな先生をみるのが嫌いではなかった。
「特にこのお話が面白いのはね、冒頭の部分でこの話がどうなるか、どんな人物かっていうことがよく表れていることなんだよね。冒頭を読んだ読者に読みたいと思わせてしまう……それがこの作者の技術で……」
気がつけば、目を潤ませながら必死にしゃべっている先生の話に生徒たちはみな釘付けになっている。その力強い言葉から目も耳も離すことができなくなっているから不思議だ。
「ね? だから、この話は面白くて、魅力的なんだよ」
「へえ……なんか、面白いかも……」
「でしょう? 国語はね、実はとても面白い授業なんだよね。この文章の中に、君たちを惹きつける技法がたくさん詰まってる」
生徒たちは先ほどまで先生のことを笑っていたのに、今は先生の言葉だけを聞き、深く頷くようなそぶりを見せる。速水もまた、その生徒の中の一人であった。こうやって、生徒の気持ちを惹きつけるような授業をするから、この先生の授業である国語は面白い。見ていて飽きないし、続きを読んでみたいと思ってしまう。げんに櫻井先生が授業をしている国語のテストは生徒たちが軒並み良かった。
もしかして、と速水はとある想像をしてみる。これが、桜井先生の策略なんだったとしたら。生徒たち全員が国語という授業に興味を持ち、なおかつ良い点数を取る。そのために天然な先生を演じているのだとしたら。
「せ、せんせい……」
黒板に向かっている先生の背中がかすかに震えたから、速水はぼそりと声をかけた。もし振り返ったとき、先生がにやりと笑いながらこっちをみていたらどうしようと思う。いや、だからといって先生や国語の授業が嫌いになるわけではないが、それはそれで少し吃驚してしまうかもしれない。
「先生……!」
速水が先生の名前を二度呼び、先生がようやく振り返っていた。その顔がにやりと頰が歪んでいた。わけではなかった。
「ひっく……ううっ……」
先生は鼻を真っ赤にしながら、ぼろぼろと涙をこぼしていた。
「ううっ……ごめん……また泣いちゃった……ううっ」
速水は先生の泣き顔をしばらく見つめていたが、吹き出すように笑う。ああ、自分はなんてばかな考えをしていたのだろうと思う。
生徒たちが速水の声に触発されたように、教室にどっと笑い声が溢れる。「なんで先生泣いているのお」とクラスの誰かがそういって、先生はまた真っ赤になって笑った。卒業式まであと少し。先生の授業はあと何回あるのだろうと速水はそんなことを考えながら、ぼんやりと空を仰いだ。
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