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第五部:魔力井戸と水路
長老のオババ様
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四人がオババ様の家の玄関口に辿り着くのと、オババ様とおぼしき老齢の女性が中から現れるのがほぼ同時だった。
オババ様も目の前の光景に驚愕しているのが見て取れるけど、先に中年女性から『とんでもない人達が来てる!』的な警告を受け取っていたのか、腰を抜かして座り込むなんて事にはならずに済んだようだ。
そう考えると、いきなりオババ様が出てこなくて良かったよなあ・・・
「オババ様!」
ダンガが満面の笑みでオババ様に呼びかける。
「お。なんじゃ、お前ひょっとしてダンガか!?」
「ひょっとしなくてもダンガですよ!」
「なんじゃその見た目は。匂いでしか区別つかんわ!」
「オババ様! お元気そうで嬉しいです!」
「ん、レミン? レミンなんか!? ホントにレミンか?」
後ろからレミンちゃんが声を上げると、オババ様が驚いて反応した。
そうか、オババ様の背が低くて見えていなかったな。
「オババ様、ダンガとレミン、ミルシュラント公国での移転先探しを無事に終えて、ただいまルマント村に戻りました!」
「なんと!」
「はい」
「なんとゆうたダンガよ?」
「つまり、村の移転先が見つかったんで報告に戻ったんですよ、オババ様!」
「おおぉ...」
「村人全員で移住できる素敵な国ですよ!」
「おおぉぉぉ...なんちゅうことじゃ!」
オババ様の表情は、ビックリしたような感動しているような混乱しているような?
「細かなことは、中で話させて下さいよオババ様」
「もっもも、もちろんじゃダンガよ。入れ入れ!」
そこまで言ってようやく、さっきからニコニコと微笑んだままダンガの隣に立っている、貴族女性なエマーニュさんの存在に思考が向いたらしい。
『しまった!』という顔をして、慌ててエマーニュさんに頭を下げる。
「慌てて大層な失礼ばしてしまいまして申し訳ござりません。して、ダンガの隣にいらっしゃるお貴族様はどなた様でございましょうか? なにぶんにも田舎ものでございますじゃで...伏してご容赦をお願い致しまする」
「とんでもございませんわヤルミナさま。わたくしはミルシュラント公国リンスワルド伯爵家の縁者、エマーニュ・エイテュールと申します。先触れも出さずに突然の訪問、誠に申し訳ございません」
「そんな滅相もねえことで!」
「わたくし、本日はルマント村の長であるヤルミナさまに、ダンガさまとの結婚のお許しを頂戴しに罷り越しました。どうかよろしくお願い致します」
エマーニュさんは、周囲で見物している村人達にも聞こえるように、わざと大きな声で言っている。
「は? なんと申されましたでしょうか...」
「ダンガさまのご両親はすでに他界されたと聞き及んでおります。村の仕来りによれば、いまはヤルミナさまがダンガさまの後見人にあたるとか?」
「は、はあ...そうでござります」
「ですのでヤルミナ様には、わたくしとダンガさまの結婚にお許しを頂きたいと」
「は?」
うん、オババ様の脳が機能停止してる感じだな。
ダンガも、ここで止まっていても仕方が無いと察したらしく、オババ様に奥へ入るように促した。
素直に奥へ入るオババ様と一緒に、ダンガとエマーニュさん、レビリスとレミンちゃんも家の中へと入っていく。
それを見送ってからアプレイスが降り立った瞬間、周囲を取り巻く村人達の数人に、言葉にしにくい何かが走ったのが分かる。
敵意では無いけど強い緊張、いや、これは恐怖感なのかな?
さすがアンスロープ族だ。
ドラゴンの姿を隠していても、アプレイスから尋常ならざる何かの気配を感じ取ったのだろう。
肝心のアプレイスは周囲の空気を全く気にすること無くスタスタとオババ様の家に歩いて行く。
まあ、気にしていても仕方が無いってところだろうな・・・
トレナちゃん達にも声を掛け、メイドチームも連れて一同ゾロゾロと村の集会所兼長老の住居という感じのオババ様の家に入った。
++++++++++
さて・・・
状況が良く飲み込めないオババ様に、さっきからダンガが必死で説明を試みているのだけど・・・
思いのほか早く、しかも好条件で『新しい村の受け入れ先が決まった』と言うことに加えて、受け入れてくれる貴族の縁者が『ダンガと結婚したい』と遠路はるばるミルシュラントからルマント村までやってきたという、常識外れな出来事が重なってオババ様の理解の範疇を超えてしまってる感じ?
『そんなこと本当にあるんかいな?』的なところかも知れない。
集まってきた他の長老達もダンガ達への質問や移転の詳細確認より、むしろオババ様へ状況を理解させることに必死になりつつある。
もちろん、決してオババ様が頑なであるとかエマーニュさんを拒否してるとかそう言う話では無くて、ただただ状況が良く分からないのでどう判断していいか分からない、と事のようだ。
「とにかくオババ様よ、ダンガが村の移転先を見つけてきてくれたんだ。その土地の貴族様が移転を保証して下さるとまで言っとるんだぞ。一体全体、なにを悩むのか!」
「そうじゃ。こうなれば一日も早く、村人達に移転の準備に掛からせるべきじゃろうて」
「悩んどるわけじゃのうて、とまどっとるだけじゃ」
「同じ事じゃろうが!」
「しかし、本当に良いんかのう。行った先で迷惑を掛けるようなことにはならんのかダンガよ?」
ダンガがチラリとエマーニュさんを見ると、彼女が小さく頷き、金縁の立派な軸に巻いてある書状を取り出した。
「ヤルミナ様、口を挟むことをお許し下さい」
「お、おお。もちろんでございますじゃ」
「過日のこと、ダンガ様、レミン様、アサム様のご兄姉は自らの命を危険に晒してリンスワルド伯爵家当主と、その一行の危機を救って下さいました」
「おおっ」
長老達がどよめく。
これは完全に事実なのに、いつも『自分たちの貢献は大したことない』と考えているフシのあるダンガは、ちょっと恥ずかしそう。
「ミルシュラント公国の元首である大公陛下はその事にいたく感謝なされ、ダンガさまにルマント村の移転を許可なされたのです。こちらの書状が、大公陛下とリンスワルド伯爵家の連名による、ルマント村移転に関する勅命状にございます」
「お前は凄いのうダンガよ。ただの狩人では無かったか!」
「運が良かったんですよペルトさん」
「運だけでそこまでならんだろ?」
「仰るとおりですわ。わたくしもダンガさまに命を救われた者の一人です...ダンガさまの心の強さと正しさはよくよく存じ上げておりますゆえ、是非とも我が夫にと」
「なあオババ、遠路はるばるいらっしゃったお貴族様がこう仰って下さっているというのに、話に乗らんのは不敬っちゅうもんじゃろう」
「乗らんなんて言うてないじゃろ」
「じゃあなんじゃ?」
「こんな良いことが起きるとは思っとらんかったで、とまどっとるだけじゃ!」
「さっきもそれ言うとったろうがオババよ」
「分かっとる。反対なんぞしとらんで、後はお前らが決めりゃあええ」
「なんで混乱するんかい?」
「年寄りを驚かしすぎる方が悪い」
プイッと横を向いたオババ様にレミンちゃんが明るく語りかける。
「オババ様。オババ様の言いつけを守って新しい村の土地を見つけてきました。オババ様もみんなと一緒に引っ越しましょう?」
「おおレミン...そうじゃの...レミンが言うなら間違いないじゃろな」
「はい。オババ様の言いつけ通りですよ」
「うんうん、可愛いレミンが見つけたモノなら間違いないじゃろからの!」
「なんじゃそらあ...」
瞬時に手の平を返したオババ様に、他の長老達がちょっと憮然としている。
ダンガは苦笑いしてるから、恐らくこういうのも良くある展開なのだろう。
初めて会った時のレミンちゃんが、『血縁の匂い』に関してオババ様の言いつけを破ってダンガから怒られたことは、墓の中まで黙って持っていこう・・・
「ところでお貴族様」
さっきダンガからペルトさんと呼ばれた男性がエマーニュさんに声を掛けた。
「エマーニュとお呼び下さいませ」
「ではエマーニュ様...その、こう言っては不敬かもしれませんが、本当にダンガを婿にされるおつもりで?」
「はい。わたくしがルマント村へ参りましたのは、今回の移転について村の皆様に直接の説明をさせて頂きたいと考えたことと、一度だけでも夫の故郷をこの目で見ておきたいと思ったからでございます」
「おお、左様でござりましたか」
「今回を逃せば、もう夫の故郷を一緒に歩く機会は二度と無いかもしれないと思い、我が儘を言わせて頂きました」
エマーニュさんのしっとりとした言葉に、長老達も黙って頷くだけだ。
それが心底からの思いだと言うことは俺にも分かる。
ついでに、ここぞとばかりにダンガを『夫』呼びしてるけど、いつのまにかオババ様もなんだかいい感じの笑顔になってるな。
「オババ様」
「なんじゃレミン?」
「そしてこの方が私の旦那様になる人です!」
唐突にレビリスをオババ様に紹介するレミンちゃん。
オババ様が落ち着くのを待った方が良いのか、この場の勢いに乗った方が良いのか判断に迷うところだけど、レミンちゃんは勢いで通すことにしたらしい。
それに馬車からレビリスが降り立った時、ちょっとざわめいた若い女性達もいたしな・・・
まあ言ったもん勝ちだよね、こういうのは。
「なんとまあ...本気かいレミンや?」
「はい! もう決めました」
「レビリスと言います。レミンとの結婚を認めてもらいにやってきました」
レビリスも覚悟を決めて堂々と言う。
「いいですよね、オババ様?」
レミンちゃんは終始笑顔。
恐らく、ここにいる一同の中で最もオババ様の扱いに長けているのがレミンちゃんだって言う気がしてきた。
「ほんな、レミンが見つけてきたもんが見かけ倒しな訳ないじゃろ。中身もええ男に決まっとるから、はようオババに赤子の顔をみせいや?」
「はいオババ様!」
「今日はなんの祭りじゃ? こんな立て続けに目出度い事があるとはのう」
このオババ様は中々にフリーダムな人だ。
そしてレミンちゃんへの信頼度が凄い。
オババ様も目の前の光景に驚愕しているのが見て取れるけど、先に中年女性から『とんでもない人達が来てる!』的な警告を受け取っていたのか、腰を抜かして座り込むなんて事にはならずに済んだようだ。
そう考えると、いきなりオババ様が出てこなくて良かったよなあ・・・
「オババ様!」
ダンガが満面の笑みでオババ様に呼びかける。
「お。なんじゃ、お前ひょっとしてダンガか!?」
「ひょっとしなくてもダンガですよ!」
「なんじゃその見た目は。匂いでしか区別つかんわ!」
「オババ様! お元気そうで嬉しいです!」
「ん、レミン? レミンなんか!? ホントにレミンか?」
後ろからレミンちゃんが声を上げると、オババ様が驚いて反応した。
そうか、オババ様の背が低くて見えていなかったな。
「オババ様、ダンガとレミン、ミルシュラント公国での移転先探しを無事に終えて、ただいまルマント村に戻りました!」
「なんと!」
「はい」
「なんとゆうたダンガよ?」
「つまり、村の移転先が見つかったんで報告に戻ったんですよ、オババ様!」
「おおぉ...」
「村人全員で移住できる素敵な国ですよ!」
「おおぉぉぉ...なんちゅうことじゃ!」
オババ様の表情は、ビックリしたような感動しているような混乱しているような?
「細かなことは、中で話させて下さいよオババ様」
「もっもも、もちろんじゃダンガよ。入れ入れ!」
そこまで言ってようやく、さっきからニコニコと微笑んだままダンガの隣に立っている、貴族女性なエマーニュさんの存在に思考が向いたらしい。
『しまった!』という顔をして、慌ててエマーニュさんに頭を下げる。
「慌てて大層な失礼ばしてしまいまして申し訳ござりません。して、ダンガの隣にいらっしゃるお貴族様はどなた様でございましょうか? なにぶんにも田舎ものでございますじゃで...伏してご容赦をお願い致しまする」
「とんでもございませんわヤルミナさま。わたくしはミルシュラント公国リンスワルド伯爵家の縁者、エマーニュ・エイテュールと申します。先触れも出さずに突然の訪問、誠に申し訳ございません」
「そんな滅相もねえことで!」
「わたくし、本日はルマント村の長であるヤルミナさまに、ダンガさまとの結婚のお許しを頂戴しに罷り越しました。どうかよろしくお願い致します」
エマーニュさんは、周囲で見物している村人達にも聞こえるように、わざと大きな声で言っている。
「は? なんと申されましたでしょうか...」
「ダンガさまのご両親はすでに他界されたと聞き及んでおります。村の仕来りによれば、いまはヤルミナさまがダンガさまの後見人にあたるとか?」
「は、はあ...そうでござります」
「ですのでヤルミナ様には、わたくしとダンガさまの結婚にお許しを頂きたいと」
「は?」
うん、オババ様の脳が機能停止してる感じだな。
ダンガも、ここで止まっていても仕方が無いと察したらしく、オババ様に奥へ入るように促した。
素直に奥へ入るオババ様と一緒に、ダンガとエマーニュさん、レビリスとレミンちゃんも家の中へと入っていく。
それを見送ってからアプレイスが降り立った瞬間、周囲を取り巻く村人達の数人に、言葉にしにくい何かが走ったのが分かる。
敵意では無いけど強い緊張、いや、これは恐怖感なのかな?
さすがアンスロープ族だ。
ドラゴンの姿を隠していても、アプレイスから尋常ならざる何かの気配を感じ取ったのだろう。
肝心のアプレイスは周囲の空気を全く気にすること無くスタスタとオババ様の家に歩いて行く。
まあ、気にしていても仕方が無いってところだろうな・・・
トレナちゃん達にも声を掛け、メイドチームも連れて一同ゾロゾロと村の集会所兼長老の住居という感じのオババ様の家に入った。
++++++++++
さて・・・
状況が良く飲み込めないオババ様に、さっきからダンガが必死で説明を試みているのだけど・・・
思いのほか早く、しかも好条件で『新しい村の受け入れ先が決まった』と言うことに加えて、受け入れてくれる貴族の縁者が『ダンガと結婚したい』と遠路はるばるミルシュラントからルマント村までやってきたという、常識外れな出来事が重なってオババ様の理解の範疇を超えてしまってる感じ?
『そんなこと本当にあるんかいな?』的なところかも知れない。
集まってきた他の長老達もダンガ達への質問や移転の詳細確認より、むしろオババ様へ状況を理解させることに必死になりつつある。
もちろん、決してオババ様が頑なであるとかエマーニュさんを拒否してるとかそう言う話では無くて、ただただ状況が良く分からないのでどう判断していいか分からない、と事のようだ。
「とにかくオババ様よ、ダンガが村の移転先を見つけてきてくれたんだ。その土地の貴族様が移転を保証して下さるとまで言っとるんだぞ。一体全体、なにを悩むのか!」
「そうじゃ。こうなれば一日も早く、村人達に移転の準備に掛からせるべきじゃろうて」
「悩んどるわけじゃのうて、とまどっとるだけじゃ」
「同じ事じゃろうが!」
「しかし、本当に良いんかのう。行った先で迷惑を掛けるようなことにはならんのかダンガよ?」
ダンガがチラリとエマーニュさんを見ると、彼女が小さく頷き、金縁の立派な軸に巻いてある書状を取り出した。
「ヤルミナ様、口を挟むことをお許し下さい」
「お、おお。もちろんでございますじゃ」
「過日のこと、ダンガ様、レミン様、アサム様のご兄姉は自らの命を危険に晒してリンスワルド伯爵家当主と、その一行の危機を救って下さいました」
「おおっ」
長老達がどよめく。
これは完全に事実なのに、いつも『自分たちの貢献は大したことない』と考えているフシのあるダンガは、ちょっと恥ずかしそう。
「ミルシュラント公国の元首である大公陛下はその事にいたく感謝なされ、ダンガさまにルマント村の移転を許可なされたのです。こちらの書状が、大公陛下とリンスワルド伯爵家の連名による、ルマント村移転に関する勅命状にございます」
「お前は凄いのうダンガよ。ただの狩人では無かったか!」
「運が良かったんですよペルトさん」
「運だけでそこまでならんだろ?」
「仰るとおりですわ。わたくしもダンガさまに命を救われた者の一人です...ダンガさまの心の強さと正しさはよくよく存じ上げておりますゆえ、是非とも我が夫にと」
「なあオババ、遠路はるばるいらっしゃったお貴族様がこう仰って下さっているというのに、話に乗らんのは不敬っちゅうもんじゃろう」
「乗らんなんて言うてないじゃろ」
「じゃあなんじゃ?」
「こんな良いことが起きるとは思っとらんかったで、とまどっとるだけじゃ!」
「さっきもそれ言うとったろうがオババよ」
「分かっとる。反対なんぞしとらんで、後はお前らが決めりゃあええ」
「なんで混乱するんかい?」
「年寄りを驚かしすぎる方が悪い」
プイッと横を向いたオババ様にレミンちゃんが明るく語りかける。
「オババ様。オババ様の言いつけを守って新しい村の土地を見つけてきました。オババ様もみんなと一緒に引っ越しましょう?」
「おおレミン...そうじゃの...レミンが言うなら間違いないじゃろな」
「はい。オババ様の言いつけ通りですよ」
「うんうん、可愛いレミンが見つけたモノなら間違いないじゃろからの!」
「なんじゃそらあ...」
瞬時に手の平を返したオババ様に、他の長老達がちょっと憮然としている。
ダンガは苦笑いしてるから、恐らくこういうのも良くある展開なのだろう。
初めて会った時のレミンちゃんが、『血縁の匂い』に関してオババ様の言いつけを破ってダンガから怒られたことは、墓の中まで黙って持っていこう・・・
「ところでお貴族様」
さっきダンガからペルトさんと呼ばれた男性がエマーニュさんに声を掛けた。
「エマーニュとお呼び下さいませ」
「ではエマーニュ様...その、こう言っては不敬かもしれませんが、本当にダンガを婿にされるおつもりで?」
「はい。わたくしがルマント村へ参りましたのは、今回の移転について村の皆様に直接の説明をさせて頂きたいと考えたことと、一度だけでも夫の故郷をこの目で見ておきたいと思ったからでございます」
「おお、左様でござりましたか」
「今回を逃せば、もう夫の故郷を一緒に歩く機会は二度と無いかもしれないと思い、我が儘を言わせて頂きました」
エマーニュさんのしっとりとした言葉に、長老達も黙って頷くだけだ。
それが心底からの思いだと言うことは俺にも分かる。
ついでに、ここぞとばかりにダンガを『夫』呼びしてるけど、いつのまにかオババ様もなんだかいい感じの笑顔になってるな。
「オババ様」
「なんじゃレミン?」
「そしてこの方が私の旦那様になる人です!」
唐突にレビリスをオババ様に紹介するレミンちゃん。
オババ様が落ち着くのを待った方が良いのか、この場の勢いに乗った方が良いのか判断に迷うところだけど、レミンちゃんは勢いで通すことにしたらしい。
それに馬車からレビリスが降り立った時、ちょっとざわめいた若い女性達もいたしな・・・
まあ言ったもん勝ちだよね、こういうのは。
「なんとまあ...本気かいレミンや?」
「はい! もう決めました」
「レビリスと言います。レミンとの結婚を認めてもらいにやってきました」
レビリスも覚悟を決めて堂々と言う。
「いいですよね、オババ様?」
レミンちゃんは終始笑顔。
恐らく、ここにいる一同の中で最もオババ様の扱いに長けているのがレミンちゃんだって言う気がしてきた。
「ほんな、レミンが見つけてきたもんが見かけ倒しな訳ないじゃろ。中身もええ男に決まっとるから、はようオババに赤子の顔をみせいや?」
「はいオババ様!」
「今日はなんの祭りじゃ? こんな立て続けに目出度い事があるとはのう」
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そしてレミンちゃんへの信頼度が凄い。
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