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第38話 つい……
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「わわっ、ジル君、良いね! すごく似合ってる!」
気を取り直して、男児用の服に着替えたジルを見てリリアは手をぱちぱちした。
リリアの前には男装した天使が誕生していた。
長袖の白いフリルシャツはジルのブロンドの髪を強調し、ブルーの瞳と相まり清純な雰囲気を引き立てている。
黒の半ズボンからはほんのり赤みがかかった膝小僧がのぞき、足元には長めの黒ソックスとシンプルな革靴を履いている。
全体的に子供らしい無邪気さとスマートさが良いバランス感のコーデだった。
「あの、リリア……やっぱりなんか、恥ずかしいんだけど……」
「ちゃんと男用の服だよ?」
「それはそう、かもしれないけど……」
ジルが想像していたのは装飾のない、シンプルな普段着だったのだろう。
昨日まで布切れ一枚だったのが、こんなにも気合の入ったお洒落感のある服を着るとなると、どこかそわそわして落ち着かない。
「サイズとか、着心地とかは大丈夫?」
「うん、ぴったり。軽いし、着心地もすごく良い」
両腕をふりふりしながらジルは言う。
「良かった! 服はとても大事だから、良いものを買って良かったわ」
「どれくらいしたの?」
「1着200万マニーくらい?」
「!?!?!?」
さほど深い意味もなく尋ねた質問だったため、リリアの口にした金額にジルは驚愕した。
「た、高過ぎるよ!」
奴隷暮らしで服の相場はわからないものの、その金額が服にしては高額の部類に入ることはジルにもわかった。
えへへ……と、リリアはどこか照れ臭そうに頭を掻きながら言う。
「ジル君には良い服を着てもらいたいなーと思って、色々とお店を巡ってたら、もっと良いものと、もっと良いものをってなって……」
最終的に、子供用服を扱う店の中ではトップクラスにハイブランドなお店で買ってしまい、この金額になってしまった。
価格のほとんどはブランド料だとわかりつつも、それに比例して素材や機能性も上がると聞いてリリアは迷わず購入した。
自分にかけるお金となると尻込みするのに、人のために使うとなると途端に金銭感覚がおかしくなると、リリアはあらためて自覚したのだった。
「そ、そんな高いの買わなくて良いから! それに……」
ジルは申し訳なさそうに目を逸らして、ぽつりと言葉を落とす。
「ただでさえ、リリアはたくさんお金を使って、僕を買っているのに……」
ジルの言葉に、リリアはハッとする。
ジルからすると、リリアには初手で2億マニーも使わせてしまっている。
それに加えてポンポンと何百万マニーもする服を買われると、申し訳ない気持ちが溢れてしまうのだろう。
「ごめんね、気を遣わせちゃって」
ジルの頭を優しい手つきで撫でながらリリアは言う。
「でも、気にしないで。私は自分が買いたいって思って買ったの。だから、ジル君には遠慮せず、着てほしいな」
リリアが本心から言葉を口にする。
ジルは視線をさ迷わせて言葉に詰まっていたようだが、やがて控えめな笑顔を浮かべて。
「わかった……ありがとう、リリア。大事に着るね」
「うん……うん!」
ジルが気に入ってくれて、感謝を聞けただけでも、リリアは舞い上がるほど嬉しかった。
「でも次買うときはこんなに高くないのにして。怖くて着れなくなっちゃうから」
「わ、わかったわ。次買うときは控えめにする」
「ちなみに……さっき着た服はどれくらいしたの?」
ジト目で尋ねられて、リリアの肩がぎくうっと跳ねる。
「えっと……500万マニーくらい?」
「なんでおまけの方が高いのさ!!」
盛大にツッコミを入れるジルであった。
気を取り直して、男児用の服に着替えたジルを見てリリアは手をぱちぱちした。
リリアの前には男装した天使が誕生していた。
長袖の白いフリルシャツはジルのブロンドの髪を強調し、ブルーの瞳と相まり清純な雰囲気を引き立てている。
黒の半ズボンからはほんのり赤みがかかった膝小僧がのぞき、足元には長めの黒ソックスとシンプルな革靴を履いている。
全体的に子供らしい無邪気さとスマートさが良いバランス感のコーデだった。
「あの、リリア……やっぱりなんか、恥ずかしいんだけど……」
「ちゃんと男用の服だよ?」
「それはそう、かもしれないけど……」
ジルが想像していたのは装飾のない、シンプルな普段着だったのだろう。
昨日まで布切れ一枚だったのが、こんなにも気合の入ったお洒落感のある服を着るとなると、どこかそわそわして落ち着かない。
「サイズとか、着心地とかは大丈夫?」
「うん、ぴったり。軽いし、着心地もすごく良い」
両腕をふりふりしながらジルは言う。
「良かった! 服はとても大事だから、良いものを買って良かったわ」
「どれくらいしたの?」
「1着200万マニーくらい?」
「!?!?!?」
さほど深い意味もなく尋ねた質問だったため、リリアの口にした金額にジルは驚愕した。
「た、高過ぎるよ!」
奴隷暮らしで服の相場はわからないものの、その金額が服にしては高額の部類に入ることはジルにもわかった。
えへへ……と、リリアはどこか照れ臭そうに頭を掻きながら言う。
「ジル君には良い服を着てもらいたいなーと思って、色々とお店を巡ってたら、もっと良いものと、もっと良いものをってなって……」
最終的に、子供用服を扱う店の中ではトップクラスにハイブランドなお店で買ってしまい、この金額になってしまった。
価格のほとんどはブランド料だとわかりつつも、それに比例して素材や機能性も上がると聞いてリリアは迷わず購入した。
自分にかけるお金となると尻込みするのに、人のために使うとなると途端に金銭感覚がおかしくなると、リリアはあらためて自覚したのだった。
「そ、そんな高いの買わなくて良いから! それに……」
ジルは申し訳なさそうに目を逸らして、ぽつりと言葉を落とす。
「ただでさえ、リリアはたくさんお金を使って、僕を買っているのに……」
ジルの言葉に、リリアはハッとする。
ジルからすると、リリアには初手で2億マニーも使わせてしまっている。
それに加えてポンポンと何百万マニーもする服を買われると、申し訳ない気持ちが溢れてしまうのだろう。
「ごめんね、気を遣わせちゃって」
ジルの頭を優しい手つきで撫でながらリリアは言う。
「でも、気にしないで。私は自分が買いたいって思って買ったの。だから、ジル君には遠慮せず、着てほしいな」
リリアが本心から言葉を口にする。
ジルは視線をさ迷わせて言葉に詰まっていたようだが、やがて控えめな笑顔を浮かべて。
「わかった……ありがとう、リリア。大事に着るね」
「うん……うん!」
ジルが気に入ってくれて、感謝を聞けただけでも、リリアは舞い上がるほど嬉しかった。
「でも次買うときはこんなに高くないのにして。怖くて着れなくなっちゃうから」
「わ、わかったわ。次買うときは控えめにする」
「ちなみに……さっき着た服はどれくらいしたの?」
ジト目で尋ねられて、リリアの肩がぎくうっと跳ねる。
「えっと……500万マニーくらい?」
「なんでおまけの方が高いのさ!!」
盛大にツッコミを入れるジルであった。
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