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第27話 ランチ後のティータイム
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昼食後。
シルフィが紅茶とお菓子を持ってやってきた。
もちろん、ヒストリカが手配したものである。
エリクはすぐ仕事に戻りたい雰囲気を出していたが、香り高い紅茶と美味しそうなクッキーを見てもう少し時間を取ることに決めたようだった。
「こんなにまったりした昼は久しぶりだ」
ティーカップを手に、エリクが穏やかな声で言う。
「良い気分転換になったのでしたら、何よりです。お仕事の方は順調ですか?」
「うん、とても。昨日遅れた分は取り戻せたし、今日の分もじきに終わりそうだよ」
「そうでしょう、そうでしょう」
当然ですと言わんばかりに、ヒストリカは頷く。
「徹夜をして無理するのは、仕事をやってる感は出て安心は出来るんですけど、効率が良いかと言われるとそうでもないですしね。しっかりと身体を休めて、ベストな調子で取り掛かる方が早く仕事ができますし、健康にも良いです」
「うん、そうだね……それは、昨日と今日で実感したよ」
寂しげに目を細めて、エリクは言う。
「僕は少し……いや、かなり追い詰められていたみたいだ。ヒストリカに言われなかったら、本格的に壊れるまで仕事詰めだったと思う」
「ほぼ壊れかけみたいな状態でしたけどね」
「あはは……面目ない」
ちくりと刺すような言葉に、エリクは力なく笑って頭を掻いた。
実際、エリクは相当危険な状態だったと思う。
仕事による膨大なストレスがかかって、自律神経失調症を発症。
不眠になって精神的にも不安定になり、身体もどんどん痩せこけていった。
元は綺麗で整っていたであろう容貌も、そのせいで今や並の令嬢に怖がられてしまうような有様になった。
お風呂に入る、ご飯が食べられなくなるなど、日常生活が送れなくなった時は完全に異常事態だ。
エリクの場合も、ご飯も食べないしお風呂にも入る気もなかったあたり、あと一歩遅かったら本格的に手遅れになっていたかもしれない。
一体誰がエリクをこんなになるまで仕事漬けにしたのか。
その辺りも追々聞いていって、今のエリクの環境自体を変えたいと考えているヒストリカであった。
「紅茶には疲労回復効果や、緊張を和らげるリラックス効果があるんですよ。このクッキーも甘みが少々強いものなので、午後のお仕事」
「流石、ありとあらゆるところに仕込んでいるね」
「一刻も早くエリク様を健康的な生活に戻せるよう、考えつく限りの事をさせていただいております。嫌な事や迷惑に感じる事があったら、遠慮なくお申し付けください」
「迷惑なんて、とんでもない」
エリクが頭を振る。
「ヒストリカが僕にしてくれた様々な事で、実際に体の調子が良くなっている実感があるし、仕事の効率も上がった」
「それは、何よりでございます」
「だからこれからも、無理をしない範囲で色々教えてくれると嬉しい」
「もちろんです。それが私の役目ですから」
いつもの淡々とした調子のヒストリカに、エリクは優しげに言う。
「本当に、気遣いの塊みたいな人だね、ヒストリカは」
「妻として、当然の事をしているまでです」
「それでも、とても感謝しているよ」
エリクが柔らかく微笑む。
睡眠をしっかりとって仕事にも余裕が出来たためか、昨日に比べると心なしかエリクは穏やかになっているように感じる。
不眠や仕事に追い込まれている事に対するストレスでピリピリしていただけで、本来のエリクの性質が戻ってきているようだった。
「本当にヒストリカには頭が上がらないよ、ありがとう」
「……」
また褒められて居心地悪げな心持ちになっているヒストリカ。
エリクが「そういえば……」と口を開く。
昨日今日で生じたシンプルな質問を、エリクは投げかけた。
「ヒストリカの……その膨大な知識は、どこで手に入れたんだい?」
エリクの問いかけに、ヒストリカは目をぱちぱちと瞬かせた。
シルフィが紅茶とお菓子を持ってやってきた。
もちろん、ヒストリカが手配したものである。
エリクはすぐ仕事に戻りたい雰囲気を出していたが、香り高い紅茶と美味しそうなクッキーを見てもう少し時間を取ることに決めたようだった。
「こんなにまったりした昼は久しぶりだ」
ティーカップを手に、エリクが穏やかな声で言う。
「良い気分転換になったのでしたら、何よりです。お仕事の方は順調ですか?」
「うん、とても。昨日遅れた分は取り戻せたし、今日の分もじきに終わりそうだよ」
「そうでしょう、そうでしょう」
当然ですと言わんばかりに、ヒストリカは頷く。
「徹夜をして無理するのは、仕事をやってる感は出て安心は出来るんですけど、効率が良いかと言われるとそうでもないですしね。しっかりと身体を休めて、ベストな調子で取り掛かる方が早く仕事ができますし、健康にも良いです」
「うん、そうだね……それは、昨日と今日で実感したよ」
寂しげに目を細めて、エリクは言う。
「僕は少し……いや、かなり追い詰められていたみたいだ。ヒストリカに言われなかったら、本格的に壊れるまで仕事詰めだったと思う」
「ほぼ壊れかけみたいな状態でしたけどね」
「あはは……面目ない」
ちくりと刺すような言葉に、エリクは力なく笑って頭を掻いた。
実際、エリクは相当危険な状態だったと思う。
仕事による膨大なストレスがかかって、自律神経失調症を発症。
不眠になって精神的にも不安定になり、身体もどんどん痩せこけていった。
元は綺麗で整っていたであろう容貌も、そのせいで今や並の令嬢に怖がられてしまうような有様になった。
お風呂に入る、ご飯が食べられなくなるなど、日常生活が送れなくなった時は完全に異常事態だ。
エリクの場合も、ご飯も食べないしお風呂にも入る気もなかったあたり、あと一歩遅かったら本格的に手遅れになっていたかもしれない。
一体誰がエリクをこんなになるまで仕事漬けにしたのか。
その辺りも追々聞いていって、今のエリクの環境自体を変えたいと考えているヒストリカであった。
「紅茶には疲労回復効果や、緊張を和らげるリラックス効果があるんですよ。このクッキーも甘みが少々強いものなので、午後のお仕事」
「流石、ありとあらゆるところに仕込んでいるね」
「一刻も早くエリク様を健康的な生活に戻せるよう、考えつく限りの事をさせていただいております。嫌な事や迷惑に感じる事があったら、遠慮なくお申し付けください」
「迷惑なんて、とんでもない」
エリクが頭を振る。
「ヒストリカが僕にしてくれた様々な事で、実際に体の調子が良くなっている実感があるし、仕事の効率も上がった」
「それは、何よりでございます」
「だからこれからも、無理をしない範囲で色々教えてくれると嬉しい」
「もちろんです。それが私の役目ですから」
いつもの淡々とした調子のヒストリカに、エリクは優しげに言う。
「本当に、気遣いの塊みたいな人だね、ヒストリカは」
「妻として、当然の事をしているまでです」
「それでも、とても感謝しているよ」
エリクが柔らかく微笑む。
睡眠をしっかりとって仕事にも余裕が出来たためか、昨日に比べると心なしかエリクは穏やかになっているように感じる。
不眠や仕事に追い込まれている事に対するストレスでピリピリしていただけで、本来のエリクの性質が戻ってきているようだった。
「本当にヒストリカには頭が上がらないよ、ありがとう」
「……」
また褒められて居心地悪げな心持ちになっているヒストリカ。
エリクが「そういえば……」と口を開く。
昨日今日で生じたシンプルな質問を、エリクは投げかけた。
「ヒストリカの……その膨大な知識は、どこで手に入れたんだい?」
エリクの問いかけに、ヒストリカは目をぱちぱちと瞬かせた。
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