上 下
20 / 50
第二章 社長生活の開始

社長就任

しおりを挟む
書類上の手続き、株式の権利の委譲などは、顧問弁護士が全てささっと済ませてくれた。
オレはプロダクション・ベガの社長となった。
しかしそれが、形だけの物であるという事はオレが一番理解していた。
これから、会社の事を学び、経営方針という奴を打ち出さなければならない。
それにはまず、全社員から新社長であるという事を認めてもらわなければいけない。

多分、ゲームのように、ショートカットする方法はないだろう。
人と人との繋がりを作るには正攻法だ。
オレはまず、全社員と面接をする事にした。

社員は、副社長の所。
チーフマネージャーの露木。
マネージャーの小沢、後藤、小林。
デスクの矢島。
そして社長秘書の瀬戸涼子の7名である。

この7名をどう動かして行くかによって、会社の将来が決まるのだ。

「どういう順番で面接されますか?」

瀬戸涼子が聞いた。
オレは少し考えて答えた。

「順番は決めない」
「どういう事ですか?」
「変に先入観や順位をつけたくない。オレは社長室にいます。会社に来た順番に、会います」
「中には、外回りでなかなか会社に顔を出さない人も・・・」
「それはそれでいいです。仕事ですから。とにかく社長室に来てくれた順番に、話をします」
「わかりました」
「ところで・・・」

オレは瀬戸涼子に一番大事な事を聞いた。

「オレのギャラって。幾らになるんでしょうかね?」

瀬戸涼子は少し考えて、答えてくれた。

「今、ウチの会社は黒字経営の優良企業です。詳しくは税理士さんから話を聞いていただきますが、毎年3億円から5億円の年商があり、約5千万円から1億円の純利益があります」
「ふむふむ」
「その純利益が、社長の自由にしていいお金です」
「え、1億円も貰ってもいいの?」
「純利益を1億円出す事が出来れば、ですけど」
「というと?」
「年商5億円、純利益1億円と言うのは、社長の・・・いえ、お父様の経営手腕あっての事、去年までの話です。あなたが経営者になった今年は、赤字に転落するかもしれない。そうなればあなたのお給料はゼロ、どころか、赤字分を無限責任で補填していただく事も有り得ます」
「・・・もし、会社を倒産させてしまった場合は?」
「莫大な借金を背負う事になりかねませんね」

瀬戸涼子は笑って言った。

「もちろん、そうならないように全力でサポートしますから!」

オレは笑えなかった。
ハイリスク・ハイリターンなギャンブルに、良く考えずに参加しちまった。
そんな気分だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

JKがいつもしていること

フルーツパフェ
大衆娯楽
平凡な女子高生達の日常を描く日常の叙事詩。 挿絵から御察しの通り、それ以外、言いようがありません。

就職面接の感ドコロ!?

フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。 学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。 その業務ストレスのせいだろうか。 ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

壁の薄いアパートで、隣の部屋から喘ぎ声がする

サドラ
恋愛
最近付き合い始めた彼女とアパートにいる主人公。しかし、隣の部屋からの喘ぎ声が壁が薄いせいで聞こえてくる。そのせいで欲情が刺激された両者はー

校長先生の話が長い、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
学校によっては、毎週聞かされることになる校長先生の挨拶。 学校で一番多忙なはずのトップの話はなぜこんなにも長いのか。 とあるテレビ番組で関連書籍が取り上げられたが、実はそれが理由ではなかった。 寒々とした体育館で長時間体育座りをさせられるのはなぜ? なぜ女子だけが前列に集められるのか? そこには生徒が知りえることのない深い闇があった。 新年を迎え各地で始業式が始まるこの季節。 あなたの学校でも、実際に起きていることかもしれない。

大好きな彼女を学校一のイケメンに寝取られた。そしたら陰キャの僕が突然モテ始めた件について

ねんごろ
恋愛
僕の大好きな彼女が寝取られた。学校一のイケメンに…… しかし、それはまだ始まりに過ぎなかったのだ。 NTRは始まりでしか、なかったのだ……

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

処理中です...