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結婚式とハッピーエンド

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僕らの結婚式は2月にあの二人で行ったチャペルで行うことが決まった。実は牧野家のご兄弟の結婚式もそこで行われていたそうだ。

急に決まった結婚式だけどなぜか真由美さんから準備万端だと連絡があった。1月は結婚式の準備に忙しく動いた。涼介さんのフロックコートも僕のタキシードも完璧だった。



そして、明日は結婚式と言う夜を迎えた。

僕はソファでもちもちクッションを伸ばしたり縮めたりして遊んでいた。涼介さんは僕を後ろから抱えて本を読んでいる。

「僕達、婚約して番になって入籍して結婚してってすごく早く話がまとまってるけど、涼介さんはどう思ってる?」

涼介さんは読んでいた本を置いて僕を抱きかかえてうなじにキスをする。涼介さんがつけた傷痕がズクンとした。

「俺はむしろもっと早く俺だけのものにしたかった。ナオが俺の運命だって…初めて会って抱きしめた時に分かったから。キスだけでラットになったこともあったろ。だから、運命だって確信を持ってたよ。ナオはヒートの時どうだった?」

僕は慌てて後ろを向いた。涼介さんが目を合わせるように僕をのぞきこんだ。

「ナオは気づいて無かった?」

「涼介さん、僕はこの期に及んで怖かったんだ。だから、決定的な言葉を言えないでいた。運命じゃないかなって思ってた。涼介さんの匂いが大好きで包まれると気持ちが昂る。キスをしてこんなに甘いって思うのは相性だけじゃないって。でも、ヒートの時のこと僕はほとんど覚えてないんだ」

「ヒートの時のこと覚えてないのか?俺に何度も赤ちゃんが欲しいって言ったことは?」

僕は顔が一気に赤くなった。

「それは本心だ…」

涼介さんが肩におでこを摺り寄せてきた。

「式を早めるのだって子供ができているかもしれないって思ったからだよ」

僕はお腹に手をやる。

「ナオ、言葉が足りなかった。ごめん」

「僕の方こそ、もう運命かどうかなんて縋らなくて良いって思ってた」



涼介さんは一度ソファから下りて跪いて僕の手を取る。

「ナオ。俺の運命…俺のオメガ。一生を共にしてください。大切にします」

僕はソファから下りて涼介さんの首に手をまわして抱きしめた。

「涼介さん、僕のアルファ。僕は怖がりだから困ったら涼介さんがたしなめて。僕はずっと涼介さんの側にいたい」


「明日が結婚式なのに今が結婚式みたいなことしてるな俺たち」

涼介さんがおでこをくっつけて唇にキスをくれた。



次の日。雪がちらちらと降る寒い日だった。

控室で僕は白いタキシードでお母さんからヴェールをかけてもらった。

「直哉。最後の仕上げ、ヴェールダウンは悪いものからあなたを守っておめでとうと幸せになってねって思いを込める行為だそうよ…あなたの幸せをずっと祈ってる」

お母さんが優しく僕の肩に手を置く。

チャペルの扉の前にはお父さんが待機していた。お母さんと入れ替わり僕の手を取って微笑んでくれる。

「ナオ君ありがとう。バージンロードを可愛い子供と歩きたいって僕の夢が一つ叶ったよ」

いたずらっ子の顔をして笑う顔はいつも通りの優しい顔だった。

「僕はお二人の子供になれてほんとに良かった、こんな幸せなことが続くのも僕に手を差し伸べてくれたみんなのおかげです」


扉の向こうで音楽が鳴るとドアが開いた。僕らはお辞儀をしてバージンロードを進む。

参列席の皆にはバラを持ってもらっていた。歩くたびに受け取ることでブーケが出来上がる。

シェルターのみんな、小橋君とカオリさん、ミカ先生 赤木さん テル君と水原さん5本の色とりどりの薔薇の意味は

「感謝」「誠実」「幸福」「信頼」「希望」

牧野家の家族 5兄弟から1本ずつ そしてお母さんから1本。涼介さんのご両親から1本薔薇をもらう。

「愛情」「情熱」「真実」「尊敬」「栄光」「努力」「永遠」

合わせて12本になった薔薇のブーケ。

涼介さんは覚えているだろうか。僕の誕生日にくれたあのブーケを。


チャペルのガラスの向こうはふわふわと雪が舞い光の反射が幻想的だった。

そして、その真ん中には僕を静かに見つめる涼介さん。

涼介さんは白のフロックコートで襟のデザインやズボンのデザインは僕とお揃いだった。背の高い涼介さんにとても似合っていた。この期に及んでまた惚れそうだ。


祭壇に着くとお互いお辞儀をしてお父さんと涼介さんが握手を交わす。そして、涼介さんが僕の手を取る。僕はブーケから1本最後にもらった「永遠」を意味する薔薇を涼介さんの胸に刺す。

僕ららしくと思ったら腕を組むよりも手を握る方が良いと思った。


神父様の厳かな声が響く。

「木下涼介さん あなたは牧野直哉さんを伴侶とし 神の導きによって夫夫になろうとしています

汝 健やかなる時も 病める時も 喜びの時も 悲しみの時も 富める時も 貧しい時も これを愛し 敬い 共に助け合い その命ある限り 真心を尽くすことを誓いますか?」


「はい、誓います」


「牧野直哉さん あなたは木下涼介さんを伴侶とし 神の導きによって夫夫になろうとしています

汝 健やかなる時も 病める時も 喜びの時も 悲しみの時も 富める時も 貧しい時も これを愛し 敬い 共に助け合い その命ある限り 真心を尽くすことを誓いますか?」


「はい、誓います」


指輪の交換に使う指輪も誕生日にもらったペアリングを使うことにした。気が付けば触っているほどに愛着が増した何ものにも代えがたい価値を持った指輪こそが僕らの結婚の象徴だと思ったからだ。

涼介さんは震える僕の指を一度なだめるように力を込めて握ってくれた。何とか落ち着いて指輪を交換した。

そして、ゆっくりとヴェールが上がる。

何の隔てるものなく涼介さんの真っすぐな目と合う。少しかがんで目を閉じるとおでこに涼介さんの唇が降りてくる。少し冷たく感じた、余裕そうな涼介さんも実は緊張してるのかもしれないと思うと愛しさが増す。


結婚証明書にサインをすると神父様がまた厳かな声で結婚成立の祝辞を述べる。


僕らは手をつないでチャペルを退場する。涼介さんも笑顔でみんなも笑顔で。僕はそれが嬉しくて泣きそうだ。



披露宴は隣のレストランで会食メインで行われた。

高砂席に座って皆の笑顔を見ていた。我慢していた涙が止まらなくなった。

涼介さんが気づいて僕の涙をぬぐってくれる。


どうして涼介さんじゃないとダメなのか、僕は分かった気がした。

いつだって一番に僕の涙に気づいて手を差し伸べてくれる彼を僕は大事にしたい。


何もかも捨てて家を出て11か月。

僕は失くした以上にいろいろなものを手にした。ここまでの道のりでひとつずつ受け取って。

今手にしているこのブーケは僕だけのものだ。そしてこれからもたくさんの花を受け取るだろう。


涼介さんが僕の気を引くように指をとって口づけた。

「2月に結婚式をしたくなったのは意味を知ったからだ。2月の結婚は運命による結婚であり、生涯恐れるものはないって意味があるんだ」


「涼介さんもかなりのロマンチストだね」


ニヤリと笑う顔もかっこいい僕の大切な運命。僕は運命に拾われて、救い上げられて手にした今の自分が大好きだ。


大好きだよ。




END
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