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5.初めての交流会 1日目
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次の日俺はヒナタと交流会の参加を申し込んだ。
クラスメイトの中に婚約者がいるのはツバサを含めて3人で、もう結婚しているのが2人と言うのを聞いた。番登録ができるのは16歳からでツバサみたいに小さい頃から交流会に参加していた、いわゆる上流階級のオメガたちはオメガ性が発覚すると婚約して16歳になると同時に結婚することが一般的らしい。
交流会の参加は強制ではないので毎回20人満たない参加らしいが、今回はフリーの人は全員参加するそうだ。
9月の交流会は東京の提携校からも参加者が来るというのが目玉だそうで、東京の提携校は有名企業のご子息が多く在籍しており、優秀な人が多いからオメガ側も気合いが入るらしい。
「わ、透がまた嫌そうな顔してる」
ツバサが俺の眉間のしわを人差し指でつつく。
「世間ではお金とか地位とかで結婚相手を選んでると思われるよね。でもね、そう言うお金持ちのアルファって上位のアルファって呼ばれるアルファであることが多いんだ。僕らが一番怖いのは番った後でお互いに運命の番が現れることで。基本的には運命には抗えないと言われているけど、上位のアルファはすでに番がいれば相手が運命だろうと突っぱねることができるらしいんだ」
ヒナタはキラキラした目で俺を見てくる。
「番っても運命に怯えなくていいんだよ」
ツバサはヒナタをニコニコと見守っていた。確かにそうか、オメガの番契約は一方的だ。アルファが自分以外のオメガと番うと勝手に番関係が解消される、番を解消されたオメガはヒートが抑えられなくなって短命になる。運命の番なんて切れない縁はロマンチックで憧れるのかと思ったがオメガにとってそれは両刃の剣だ。だから、みんな意識していたのか。
「俺はヒナタの幸せを祈る」
「お互い様だよ、透君」
俺は少し考えた、窓の外は秋晴れで空が高かった。これから先のことを言われても長すぎてわからないけれど
「でもさ、俺はこの人となら死んでもいいってくらいの恋がしたい」
俺は突っ伏した。恥ずかしいことを言ったからだ。一瞬教室の空気が静まり返って皆がこっちを見ているのを感じた。
2人が俺の後頭部を撫でる。
「透は素直だな」
首筋から耳まで赤くなるのを止められなかった。
今回の交流会は長期の休みに合わせて開催されることもあって3日間ある。俺にとって初めての交流会だ。最初の2日は自由参加で。3日目だけ気に入ったもの同士の交流になるそうだ。
オメガ側の正装は制服だった、ドレスコードがある交流会もあるらしい。俺はヒナタと二人で隅っこに席を確保して観察することにした。交流会はもっと殺伐としたものかと思っていたが和やかな雰囲気だった。
そこへ遠くから
「ひーなーたーくーーん」
と大きな声で呼びかける人がいる。ヒナタの頬が一瞬で赤くなった。
「吉岡さんだ」
その吉岡さんは真っすぐヒナタだけを見ていた、そのあと俺を見て。えって顔をしてまたヒナタの方を見た。
「永田透君、転校生だよ。こちらは吉岡明久さん、提携校の2年生のアルファだよ」
俺たちはお互いに紹介され頭を下げて挨拶をした。吉岡さんはアルファと言うだけあって背が高く顔も整っていて優し気な印象だ、でもちょっと馴れ馴れしくてチャラそうだ。
「ツバサ君が交流会を卒業したからもうヒナタくんには会えないかと思ったよ、よかった」
吉岡さんはニコニコしながらヒナタに話しかけている。ヒナタは戸惑いながらも控えめに笑顔を作った。吉岡さんが大きな声で叫ぶから俺らの席はちょっと注目を集めてしまった。幾人かのアルファが俺らに話しかけてくれた。
誰にも声を掛けられないと言う事態は起きなくてすんだ。
吉岡さんは熱心にヒナタに話しかける。当分ヒナタの前から離れなさそうなので今のうちにデザートを取りに行くことにした。交流会の食事は外部からプロが来て準備すると聞いていたのでちょっと楽しみにしていたのだ。
俺はデザートコーナーの近くの席に陣取って持てるだけのデザートを皿にのせて食べた。
「うっま!」
幸せだーこれは幸せの味がする。これが食べられるなら俺はずっと交流会に参加してもいい。俺が3往復目をしているとヒナタが吉岡さんを従えて俺のところに来た。
「帰ってこないから心配したじゃない」
俺はうっかりヒナタを忘れていた。申し訳なくてプリンを勧めた。俺の確保した席の向いにヒナタが座った。
「うっま!」
ヒナタも同じようにプリンを気に入ってくれた。
「交流会の食事は卒業生が担当してることが多いそうだよ、聞いてきてあげようか?」
吉岡さんが俺らがあまりにも夢中で食べるのでスタッフの方へ聞きに行ってくれた。
”パティスリー三浦”それはあの康太さんと芳樹さんの店だった。
あの俺が何者でもなかった時がよみがえる。
急にプリンのカラメルが苦く感じた。
「ヒナタくんたちは明日の交流会も参加するの?」
俺とヒナタはうなずく。
「明日は東京のアルファも来るんだよねー。んー心配。俺も来ようっと」
そう言ってヒナタににっこりと微笑む。これは帰って問い詰めよう。
散会のベルが鳴って俺たちは席を立った。
俺は帰り際スタッフの人に声をかけた。明日も三浦さんたちは来るそうなので朝一番で会いに行こうと思った。そして。
「ヒナタ、聞きたいことがあるから俺の部屋に寄ってね」
俺の笑顔にヒナタが観念したようにうなずく。俺は部屋に着くなりヒナタに洗いざらいしゃべらせた。
吉岡さんは中等部3年の交流会からずっとヒナタに執着していた。
「つまりずっと口説いていると」
ヒナタが顔を覆ってうつむく。耳まで真っ赤だ。
「だけど、チャラそうだと」
ヒナタがコクコクとうなずく。
「運命だって言われたって?」
ヒナタが机に突っ伏した。何だこのかわいい生き物は…。
「ヒナタは吉岡さんにそう言われてどう思ったの?」
「…怖いって思った」
俺は少し考えて
「それってさ。好きになるのが怖いって意味の怖いだろ。そこまで想像できるってもう好きなんじゃないか」
ヒナタが俺の顔をまじまじと見ている。
「明日も来るって言ってたよ。ちゃんと話し合えよ。俺もチャラいと思ったけど、ヒナタのこと好きなんだなってのは感じたよ」
ニヤリと笑ってヒナタを見ると、目元を赤くしたヒナタが可愛かった。
クラスメイトの中に婚約者がいるのはツバサを含めて3人で、もう結婚しているのが2人と言うのを聞いた。番登録ができるのは16歳からでツバサみたいに小さい頃から交流会に参加していた、いわゆる上流階級のオメガたちはオメガ性が発覚すると婚約して16歳になると同時に結婚することが一般的らしい。
交流会の参加は強制ではないので毎回20人満たない参加らしいが、今回はフリーの人は全員参加するそうだ。
9月の交流会は東京の提携校からも参加者が来るというのが目玉だそうで、東京の提携校は有名企業のご子息が多く在籍しており、優秀な人が多いからオメガ側も気合いが入るらしい。
「わ、透がまた嫌そうな顔してる」
ツバサが俺の眉間のしわを人差し指でつつく。
「世間ではお金とか地位とかで結婚相手を選んでると思われるよね。でもね、そう言うお金持ちのアルファって上位のアルファって呼ばれるアルファであることが多いんだ。僕らが一番怖いのは番った後でお互いに運命の番が現れることで。基本的には運命には抗えないと言われているけど、上位のアルファはすでに番がいれば相手が運命だろうと突っぱねることができるらしいんだ」
ヒナタはキラキラした目で俺を見てくる。
「番っても運命に怯えなくていいんだよ」
ツバサはヒナタをニコニコと見守っていた。確かにそうか、オメガの番契約は一方的だ。アルファが自分以外のオメガと番うと勝手に番関係が解消される、番を解消されたオメガはヒートが抑えられなくなって短命になる。運命の番なんて切れない縁はロマンチックで憧れるのかと思ったがオメガにとってそれは両刃の剣だ。だから、みんな意識していたのか。
「俺はヒナタの幸せを祈る」
「お互い様だよ、透君」
俺は少し考えた、窓の外は秋晴れで空が高かった。これから先のことを言われても長すぎてわからないけれど
「でもさ、俺はこの人となら死んでもいいってくらいの恋がしたい」
俺は突っ伏した。恥ずかしいことを言ったからだ。一瞬教室の空気が静まり返って皆がこっちを見ているのを感じた。
2人が俺の後頭部を撫でる。
「透は素直だな」
首筋から耳まで赤くなるのを止められなかった。
今回の交流会は長期の休みに合わせて開催されることもあって3日間ある。俺にとって初めての交流会だ。最初の2日は自由参加で。3日目だけ気に入ったもの同士の交流になるそうだ。
オメガ側の正装は制服だった、ドレスコードがある交流会もあるらしい。俺はヒナタと二人で隅っこに席を確保して観察することにした。交流会はもっと殺伐としたものかと思っていたが和やかな雰囲気だった。
そこへ遠くから
「ひーなーたーくーーん」
と大きな声で呼びかける人がいる。ヒナタの頬が一瞬で赤くなった。
「吉岡さんだ」
その吉岡さんは真っすぐヒナタだけを見ていた、そのあと俺を見て。えって顔をしてまたヒナタの方を見た。
「永田透君、転校生だよ。こちらは吉岡明久さん、提携校の2年生のアルファだよ」
俺たちはお互いに紹介され頭を下げて挨拶をした。吉岡さんはアルファと言うだけあって背が高く顔も整っていて優し気な印象だ、でもちょっと馴れ馴れしくてチャラそうだ。
「ツバサ君が交流会を卒業したからもうヒナタくんには会えないかと思ったよ、よかった」
吉岡さんはニコニコしながらヒナタに話しかけている。ヒナタは戸惑いながらも控えめに笑顔を作った。吉岡さんが大きな声で叫ぶから俺らの席はちょっと注目を集めてしまった。幾人かのアルファが俺らに話しかけてくれた。
誰にも声を掛けられないと言う事態は起きなくてすんだ。
吉岡さんは熱心にヒナタに話しかける。当分ヒナタの前から離れなさそうなので今のうちにデザートを取りに行くことにした。交流会の食事は外部からプロが来て準備すると聞いていたのでちょっと楽しみにしていたのだ。
俺はデザートコーナーの近くの席に陣取って持てるだけのデザートを皿にのせて食べた。
「うっま!」
幸せだーこれは幸せの味がする。これが食べられるなら俺はずっと交流会に参加してもいい。俺が3往復目をしているとヒナタが吉岡さんを従えて俺のところに来た。
「帰ってこないから心配したじゃない」
俺はうっかりヒナタを忘れていた。申し訳なくてプリンを勧めた。俺の確保した席の向いにヒナタが座った。
「うっま!」
ヒナタも同じようにプリンを気に入ってくれた。
「交流会の食事は卒業生が担当してることが多いそうだよ、聞いてきてあげようか?」
吉岡さんが俺らがあまりにも夢中で食べるのでスタッフの方へ聞きに行ってくれた。
”パティスリー三浦”それはあの康太さんと芳樹さんの店だった。
あの俺が何者でもなかった時がよみがえる。
急にプリンのカラメルが苦く感じた。
「ヒナタくんたちは明日の交流会も参加するの?」
俺とヒナタはうなずく。
「明日は東京のアルファも来るんだよねー。んー心配。俺も来ようっと」
そう言ってヒナタににっこりと微笑む。これは帰って問い詰めよう。
散会のベルが鳴って俺たちは席を立った。
俺は帰り際スタッフの人に声をかけた。明日も三浦さんたちは来るそうなので朝一番で会いに行こうと思った。そして。
「ヒナタ、聞きたいことがあるから俺の部屋に寄ってね」
俺の笑顔にヒナタが観念したようにうなずく。俺は部屋に着くなりヒナタに洗いざらいしゃべらせた。
吉岡さんは中等部3年の交流会からずっとヒナタに執着していた。
「つまりずっと口説いていると」
ヒナタが顔を覆ってうつむく。耳まで真っ赤だ。
「だけど、チャラそうだと」
ヒナタがコクコクとうなずく。
「運命だって言われたって?」
ヒナタが机に突っ伏した。何だこのかわいい生き物は…。
「ヒナタは吉岡さんにそう言われてどう思ったの?」
「…怖いって思った」
俺は少し考えて
「それってさ。好きになるのが怖いって意味の怖いだろ。そこまで想像できるってもう好きなんじゃないか」
ヒナタが俺の顔をまじまじと見ている。
「明日も来るって言ってたよ。ちゃんと話し合えよ。俺もチャラいと思ったけど、ヒナタのこと好きなんだなってのは感じたよ」
ニヤリと笑ってヒナタを見ると、目元を赤くしたヒナタが可愛かった。
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