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神話編

魅了する者

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 ちょっとマジかよ!コイツッ‼︎ 浄化してやろうか‼︎

…浄化、浄化⁉︎ 呪い‼︎

「だぁーー!ちょい待ちっ!ちょい待ち!」

「カイリさんの所に送ってやるから!会わしてやる!」

ジジは都の言葉にピクリと眉を動かし、信じられないけれど何かある

のだろうか?そんな表情だった。

「まず、一つ!一つ教えてくれ…いいか?」

刺激したら最後だ!ここは穏便に、下手に下手にいかないと俺がやら

れる!

「なん…だ?何がお前に出来る…」

「ジジさんはさ、いくつなんだ?」

「もう数えていないが有に1500年以上は生きている。」

おぉう。これは間違いなく呪い的な感じじゃないか?

「それって、呪いだったりします?だったら話が早いんだけど」

「…まさか、呪いを解くとか考えてないよな?」

「え…?」

あれ?望んで無い⁉︎ 地雷踏んだか⁉︎

「え?じゃねぇよ。」

「俺はこの世界でカイリと供に生きたいんだ」

オーーマイガーー‼︎ もっと言い回しがあったよなーー‼︎

「う、で、でも‼︎ カイリさんが戻ってきてもさ、寿命があるんだぜ?」

「ジジさんまた置いてきぼりじゃ無いか‼︎ お、俺は、嫌だなっ!」
う、うん!ジジさんとカイリさんには幸せになって欲しいし!」

ジジは結界に背を預けズルズルと座り込んだ。

「俺が死んでも…カイリの元へは行けない」

「なんで?」

「彼は天帝の正妃だったんだ。同じ世界には行けっこない…」

「…俺が連れて行ってやる、こう見えても俺はこの世界の主神なんだ」

ジジは振り返ると小馬鹿にした笑みで都を見上げた。

「あぁ、そうかい。あんたが神ならとんだ間抜けな神様が主神になったもんだな…」

カッチーーン‼︎偶々です!この姿は仮の姿なんですぅ、本当は俺超

可愛いし‼︎マジ前世なら超モテモテだし!馬鹿にすんなよな!

「なら、賭けるか?」

「あ?賭けだと?」

「そうだよ。もし、カイリさんの側に行ける手立てがあると分かれば解放しろよ!」

「と言う事は今は無いんだな?」

「いや、ある。あるけどこの身体じゃ無理だ、俺の身体に戻れたら術はある」

「へー、どうするんだよ?」

「俺の権能に浄化と信仰ってのがあるんだ、浄化で呪いを解いて信仰で俺の信徒として天界に受け入れてもらう。八百万の神々に連なれば神の一柱として天界に行ける…そうなれば俺の世界の天帝?みたいな存在の大国主にカイリさんと会えるように頼んでやるよ。元々カイリさんだって俺と同じ世界の人間だったんだ。奇遇だっ俺と同じ両性だし!日本人だったからな、カイリさんとも繋ぎは取れる筈だ!ハハッ」

「…嘘じゃ無いだろうな」

「分かった。じゃあこの体のまま結界を解いてくれ。使徒のラファエラと連絡を取る」

「やり取りも聞かせてやるよ」

ジジは暫く考えていた。

そりゃ悩むよな…もしも、手立てがあったとしても死んでしまえば万が

一カイリさんに会えなくても俺に文句の一つも言えない。簡単じゃ無い

筈だ…。

「俺は逃げない、もし納得出来なきゃ身体は返す。良いだろ?」

「…分かった。」

ジジは立ち上がると結界を壊して都の手を取った。

「ありがとう、俺も手を尽くすから…諦めないでくれよ。」

「…頼む、カイリに会わせてくれ。カイリに会いたいんだ、もうこれ以上待てない…希望がもう無いんだ」

縋るようにカイリの身体を抱きしめるジジを都も抱きしめた。

「分かってる。俺にだって愛してる人達がいるから、止めたいんだよ…この世界の崩壊を…」

「崩壊?」

「あぁ。テュルケットはこの世界を崩壊させて終わらせたがっている…既に帝都の泉は分解出来ない白魔粒子が溢れて、大地は枯れ始めているし…地殻には地上に出れずに溜まって澱んだ黒魔粒子が爆発寸前だ。結界の護りの神核が後世に残らないように婚姻すら使って阻んでる」

「あぁ…テュルケットらしいな、どうせ愛し子が思い通りに動かなくて飽きたんだろ…この世界おもちゃに」

「だから俺はこの世界を守る神として転生したんだ」

「…そうか。難儀だな」

「全くだよ、なんであんな奴が神様になれるんだろうな?笑っちまうよ」




「都様‼︎無事だべか⁉︎」

ソレスがゴロゴロと前転しながら窓をぶち破って飛び込んできて、

後ろからグレースもゴロゴロと前転して入ってくる。

「都様ー!どこだべ⁉︎オラが助けにきたぞ!」

可愛い!ソレス、ホント堪らん‼︎短い手足でポーズ決めてる‼︎

ぎゃー‼︎構い倒したい‼︎

「ソレス‼︎ 俺だよ‼︎俺が都だ!」

ソレスは都を見るとボンッ‼︎と真っ赤になってその場に棒立ちになり、

グレースも挙動不審な動きで部屋中をウロウロし始めた。

「な、なんだよ?ソレス、グレース、大丈夫かよ!ってか、グレース!お前来ちゃだめだろ!」

慌てて二人の腕を掴んで近付くと二人はバタンと倒れてしまった。

「え?どしたの…死んだ⁉︎」

ジジが二人の瞳孔を確認して、鑑定眼で二人の状態を探る。

「まさか、お前…」

ジジは腹立たしさを含んだ眼差しを都に向ける。

「な、なんだよ…俺何にもしてないだろ」

「魅了持ちか?」

「え?なにそれ」

「魅了持ちは側にいる者を骨抜きにしてしまう。コイツらはお前の為なら何でもするようになる…俺はカイリへの想いを捨てない制約を付けているから全く効かないが…他はヤバいぞ…」

「え?そんな事今まで無かったよ」

「この身体に権能は無い、ただの肉の塊に過ぎないがカイリは持っていたんだ、魅了の力を。もしかしたら、その記憶があるのかもしれない…。その力が発揮されたと言う事はお前持ってるんだよ、でも魂…お前の魂は何処だ」

「本体にあるよ」

「……コイツか?」

グレースを指差しジジが鑑定する、グレースの形を模した四聖獣の中に

は七色の魂がはっきりとあった。

「お前と繋がってるな…この魂。どうする?身体に入れるか?」

「出し入れ出来んのかい!どうしよう…俺グレースと一緒に居たいし」

「この身体には魂が一つ…それに、これは分身みたいだな、本体じゃ無さそうだ。体の安定の為にカイリの身体に入れておけ。どうせ使徒がいるならなんとでもなるんだろう?」

「え…なんかさ、何でもアリ過ぎない?誰だよこのグレースの真似してる奴…」

「‼︎ 四聖獣…⁉︎カイリの護衛騎士をしていた四聖獣か⁉︎」

「おい、本当にこの世界ヤバいのかよ…神殿の結界守が集まってる…とりあえずお前カイリの身体使っとけ。コイツ等の力は強すぎる、仮の身体が壊れるぞ」

「あ、あぁ…分かったよ。魂入れてくれ…大丈夫かよ…何がどうなってるんだ」

ジジは本棚から、呪法や制約など千年以上を掛けて調べた物を纏めた

分厚い本を取り出し陣を描くと、カイリの身体と都の魂を繋いだ。

思わぬ事態でグレースと都はついに離れてしまったのである。



グレース…どうしよう。また戻れるのかな…怖い。怖すぎる…

また、俺は一人でこの世界に放り出されちまうのかよ。



——— 超はーーれむだからー‼︎

——— はーれむだからー

——— はーれむ…



項垂れる都は突然転生時の神々の声を思い出し、絶句し頭を抱えた。

まさか…まさか!

「ガッデム‼︎ 要らん加護付けやがって!ってかこの身体に入るのも折込済か⁉︎鬼子母神‼︎クソッ‼︎分かってたなアイツら‼︎」

「全部分かってたのか…タチが悪いぞ…」

「ジジさん。大丈夫だ…高確率でカイリさんに会えるよ…」

「天帝ってまさか大国主か⁉︎古事記にそんな記載無いだろ‼︎無いだけで天界ではそうなの⁉︎ 嘘だろぉ‼︎テュルケットへの罰に俺使ったのか?なんて奴等だ‼︎」

「おいっ!本当か⁉︎会えるのか、カイリに…」

「あぁ、多分な。なんか色々段取り良過ぎると思ったんだよ…チートでご都合主義だと思ってた、思ってたけれども!クソっ!弄ばれてるぞ俺の神様ライフ‼︎だったら全部教えておけよ、俺…死ぬ事も考えて…苦しんだのに…」

「予言書…エルザード…。エルザード、お前もか!」

最初から全部、全部、全部‼︎八百万の手の平の上だったのか⁉︎

いや、そうは思いたくない…思いたくないけど…やけにこっちの世界の

事情に詳しいと思ってたんだ…。神様が人を騙しちゃダメだろう‼︎

あー…嘘だと言って…。

都はビクトラと会ってもしもこんな事になったらと考えた。

そうなったらビクトラの気持ちが魅了による嘘の感情でも、拒む自信は

無い、諦めた想いにまた火が付いてまたゴタゴタする事はゴメンだと

大きなため息を吐いて天を仰いだ。
























































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