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神話編
ヤルダの企み
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「やってくれたものだ!あの穢れた男!」
オルポーツは離宮の四阿で、叔父のロンベルトとヤルダと共に
ロンベルト子飼いの影から報告を聞いていた。その報告に怒りを隠す
事なく龍の尾でテーブル、彫像などをオルポーツは次々に叩き壊して
いく。
「見ろ!アイツに掛けた呪法は跳ね返され俺の首に枷を付けやがった!しかも一度しか使えぬ権能を使って澱みに落としたというのに、どうやってもどってきた!白使いの隷属まで全て切られ、全て台無しだ!」
禍々しい魂縛の呪法がオルポーツの首を締め上げるかの様に、ぐるぐる
と巻きつき魔粒子を壊していく。その為、オルポーツは眠る間でさえ、
魔粒子を大量に吸収しなくては命を繋いでいられぬ身体となっていた。
「俺はまともに眠る事すらできなくなったのだぞ⁉︎クソったれめ!」
「オルポーツ、まだ布石はあるんだから、落ち着きなさい。」
ロンベルトはヤルダの肩を抱き寄せながら荒れるオルポーツを見上げ、
ニヤリと笑った。
「煩い!本当ならとっくの昔にあの身体を手に入れ私が神となれていたのだ!」
「出来損ないの半端者が持って良い物ではない!完璧な者が持つべき器なのだあれは!」
ヤルダがベレイカに火を付け深く煙を吸い込んだ。
「あの身体にそんな価値が本当にありますかな?杭を打たれ、魔粒子核も回路もなく男を誑し込むだけの穢れた魂の器ですぞ。」
思い出すだけでも吐き気がする。我がライディ家の当主を篭絡し、隷属
までするとは!
我が家の恥でしかないわ!
あの、人を馬鹿にした傲慢な態度。あぁ、腹がって仕方がない。
「お前達は知らぬのだ、あの身体の価値を。」
オルポーツ様はあの者の身体にやけに執着なさる。
あの様な不完全な肉体に一体どんな使い道があると言うのか。
「ほぉ、ではその価値を教えてくださいませ。」
正直オルポーツ様ではテュルケット様、エルザード様には程遠い。
しかし、この愚かな元皇帝も、テュルケット様復活の良き贄にはなる
だろう。
「お前らに聞こう。何故我々は完全変態が必須なんだ?」
ロンベルトとヤルダは何を今更?という顔でオルポーツを見上げ溜息
混じりに返答した。
「魔粒子を獣体で使う為だ。」
「それ以外に何がある?」
オルポーツは人体に戻ると唯一残る尾に触れ忌々しく吐き捨てた。
「祖たる者が獣なぞと番った結果完全変態が必要となった。」
「しかし、祖たる者以外に獣の血を持たぬ人間はおらぬのに何故我々は
人体化出来る?それは人体が何世代経とうとも変化せぬ完全なる形故だ。それに比べて獣体はどうだ?世代を経る毎に変質し、形を変える。その変質により完全変態できぬ者もいる。あの宵闇は獣の血を持たぬ完全なる人なのだ。そして、始まりの人類の母と同じ性器を持っていた。」
ロンベルトとヤルダは互いに顔を見合わせて驚いた。
「あの穢れた男がか?」
ヤルダは更に嫌悪を滲ませた顔でオルポーツを見た。
あの穢れた男さえ子を孕めるというのに、私の体は子を孕む事も
孕ませる事も出来ぬ不完全な体だなんて、口惜しい。
もしも子が産めたのなら、ロンベルトはオルポーツ様なんぞの下で
使われる様な生き方をしなくても良かったのだ。
しかし、エルザード様はロンベルトには私が必要だと仰った。
故に私は彼の側に居れるが、予言がなければ私はビクトラの元で
下僕の様な人生しか生きられ無かっただろう。
完全な体、私が最も求める物をあの穢れた男が持っているとは。
だが、あの男にロンベルトの子を産ませれば?
その子が皇帝となれるのではないか⁉︎
オルポーツにあの男を捕らえさせた後、オルポーツを殺す。
そしてロンベルトの子を産ませれば良い、その子は神であり皇帝でも
あるのだ。ならば次の一手は慎重にせねば。
ヤルダの思考が手にとる様に分かってしまったロンベルトは
ヤルダの肩に回した手に力をいれた。
「ヤルダ、馬鹿な事を考えて先走るんじゃないよ?」
ロンベルトはヤルダの耳に口を寄せ囁いた。
「はっ。何を私が考えているのか、お前には分かると言うのか?」
「何年君を見てきたと思うんだ。分かるさ、君の考える事なんてな。」
この男も、大概哀れだ。
そう、ヤルダは自身の指に嵌めた指輪を眺めて呟いた。
「本教会と西の泉は繋がった。調和をすれば最後、あの身体から魂は抜ける。それが最後のチャンスですよ。オルポーツ様」
ヤルダは凍てつく様に冷めた瞳でオルポーツを見上げ、ニヤリと笑った。
「分かっている。それまではアイツらの思うままにさせておく。お前らも準備は抜かるなよ。」
こうして三人の魂は信仰を棄てた。
オルポーツは離宮の四阿で、叔父のロンベルトとヤルダと共に
ロンベルト子飼いの影から報告を聞いていた。その報告に怒りを隠す
事なく龍の尾でテーブル、彫像などをオルポーツは次々に叩き壊して
いく。
「見ろ!アイツに掛けた呪法は跳ね返され俺の首に枷を付けやがった!しかも一度しか使えぬ権能を使って澱みに落としたというのに、どうやってもどってきた!白使いの隷属まで全て切られ、全て台無しだ!」
禍々しい魂縛の呪法がオルポーツの首を締め上げるかの様に、ぐるぐる
と巻きつき魔粒子を壊していく。その為、オルポーツは眠る間でさえ、
魔粒子を大量に吸収しなくては命を繋いでいられぬ身体となっていた。
「俺はまともに眠る事すらできなくなったのだぞ⁉︎クソったれめ!」
「オルポーツ、まだ布石はあるんだから、落ち着きなさい。」
ロンベルトはヤルダの肩を抱き寄せながら荒れるオルポーツを見上げ、
ニヤリと笑った。
「煩い!本当ならとっくの昔にあの身体を手に入れ私が神となれていたのだ!」
「出来損ないの半端者が持って良い物ではない!完璧な者が持つべき器なのだあれは!」
ヤルダがベレイカに火を付け深く煙を吸い込んだ。
「あの身体にそんな価値が本当にありますかな?杭を打たれ、魔粒子核も回路もなく男を誑し込むだけの穢れた魂の器ですぞ。」
思い出すだけでも吐き気がする。我がライディ家の当主を篭絡し、隷属
までするとは!
我が家の恥でしかないわ!
あの、人を馬鹿にした傲慢な態度。あぁ、腹がって仕方がない。
「お前達は知らぬのだ、あの身体の価値を。」
オルポーツ様はあの者の身体にやけに執着なさる。
あの様な不完全な肉体に一体どんな使い道があると言うのか。
「ほぉ、ではその価値を教えてくださいませ。」
正直オルポーツ様ではテュルケット様、エルザード様には程遠い。
しかし、この愚かな元皇帝も、テュルケット様復活の良き贄にはなる
だろう。
「お前らに聞こう。何故我々は完全変態が必須なんだ?」
ロンベルトとヤルダは何を今更?という顔でオルポーツを見上げ溜息
混じりに返答した。
「魔粒子を獣体で使う為だ。」
「それ以外に何がある?」
オルポーツは人体に戻ると唯一残る尾に触れ忌々しく吐き捨てた。
「祖たる者が獣なぞと番った結果完全変態が必要となった。」
「しかし、祖たる者以外に獣の血を持たぬ人間はおらぬのに何故我々は
人体化出来る?それは人体が何世代経とうとも変化せぬ完全なる形故だ。それに比べて獣体はどうだ?世代を経る毎に変質し、形を変える。その変質により完全変態できぬ者もいる。あの宵闇は獣の血を持たぬ完全なる人なのだ。そして、始まりの人類の母と同じ性器を持っていた。」
ロンベルトとヤルダは互いに顔を見合わせて驚いた。
「あの穢れた男がか?」
ヤルダは更に嫌悪を滲ませた顔でオルポーツを見た。
あの穢れた男さえ子を孕めるというのに、私の体は子を孕む事も
孕ませる事も出来ぬ不完全な体だなんて、口惜しい。
もしも子が産めたのなら、ロンベルトはオルポーツ様なんぞの下で
使われる様な生き方をしなくても良かったのだ。
しかし、エルザード様はロンベルトには私が必要だと仰った。
故に私は彼の側に居れるが、予言がなければ私はビクトラの元で
下僕の様な人生しか生きられ無かっただろう。
完全な体、私が最も求める物をあの穢れた男が持っているとは。
だが、あの男にロンベルトの子を産ませれば?
その子が皇帝となれるのではないか⁉︎
オルポーツにあの男を捕らえさせた後、オルポーツを殺す。
そしてロンベルトの子を産ませれば良い、その子は神であり皇帝でも
あるのだ。ならば次の一手は慎重にせねば。
ヤルダの思考が手にとる様に分かってしまったロンベルトは
ヤルダの肩に回した手に力をいれた。
「ヤルダ、馬鹿な事を考えて先走るんじゃないよ?」
ロンベルトはヤルダの耳に口を寄せ囁いた。
「はっ。何を私が考えているのか、お前には分かると言うのか?」
「何年君を見てきたと思うんだ。分かるさ、君の考える事なんてな。」
この男も、大概哀れだ。
そう、ヤルダは自身の指に嵌めた指輪を眺めて呟いた。
「本教会と西の泉は繋がった。調和をすれば最後、あの身体から魂は抜ける。それが最後のチャンスですよ。オルポーツ様」
ヤルダは凍てつく様に冷めた瞳でオルポーツを見上げ、ニヤリと笑った。
「分かっている。それまではアイツらの思うままにさせておく。お前らも準備は抜かるなよ。」
こうして三人の魂は信仰を棄てた。
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