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東のガーライドナイト領

欲望、嫌悪、面倒事のオンパレード

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 倒れこんだ都は視線の遠く先に、立ち竦む少年を見た。

肌も髪も白く、遠くからでは顔をみる事は出来なかったが生きている

ようには見えず、後ろから都を支えるルーナの腕をつかんだ。

「ルーナ。あそこにいる人…死んでいるの?」

ルーナは目を細くして中を見ると、中にあるそれは人には見えず巨大な

球体の様に見えた。


どうしよう。人がいると言われて見てみたけど、どうみても球体が

転がっている様にしか見えない。

都や朱雀にはあれが人に見えているって事なのかな?どう伝えたら

良いのだろう。

「都、俺にはあれが球体に…見えているんだ。人には見えない。」


え、ルーナ。何言っているの?どうみてもあれは人の形をしている

よね。頭も体も、手足もある。私と朱雀さんだけなの?人の形に

見えているのは。


「なん、で?どうみても人の形してるよ?」

ぞろぞろと後ろから人が集まり、中を覗き始めた。

「なんだ?あの球体は。魔石でも魔導石でもなさそうだが」

「あぁ、なんというか魔粒子の塊。もしくは神力の塊…?」

サリザンドの言葉にピッヒは顔色を変えて叫んだ。

「わ、我が領地で出現した物ですよね!我らが管理致しますから、
み、皆さまは今日の所はお部屋にお戻りになられた方が良い!」


そんなお宝が我が領地から発見されたとなれば、サムオールが

黙っていないはずだ。急いで調査して確保しなくては!

ピッヒは連れてきていた白使いを中に押しやり確認に向かわせようと
した。

「おい!白使いよ、中に入って確認してこい!持ってこれるなら持ってこい!」

この言葉に都はムッとした。

そもそもこの領地は皇帝領地でピッヒさんは領主代行なはずでしょ?

信じられない!強欲にも程があるよ。

そんな都の感情がビクトラにも伝わったのか、ビクトラが前に出て

制止した。

「ピッヒ領主代行、勝手な行動は困る。全員こちらで待機を願おう。」

全く、嫌になるぜ。自治領じゃない領地で勝手な資源開発も採集も

出来ない事は管理者なら誰でも分かっている事だろ?強欲な奴だ。

「いや、ビクトラ殿!この領地の管理は私が行っているのだ、調査を我々が行って何が悪いのだ!?」

さっき持ち出せって言ってたじゃねーか。あれが何かもわかんねー

のに。はぁ。こういう奴の相手は本当に面倒だ。

「ただの白使いにあれの調査が出来るとも思えませんが?あれを持ち出したことで何かが起きた時、どう責任を取られるのですか。もしこの山の様な代物が崩れて周囲の自然や建物を破壊したら?この中に取り込まれている神殿跡は我々の調査対象建造物だ。あれが倒壊したら、帝国全土の調和が出来なくなる。あれはこの世界を救う要の一つなのですよ。」

ビクトラに脅されピッヒは固まりグルッと唸った。

そんなピッヒの肩をサリザンドが叩き、うそぶく。

「あれは、貴方が想像する様な良い代物ではありませんよ。見えないかもしれませんが呪法がとぐろを巻いています。触ればきっとあなたの白使い達は死ぬでしょうね。無暗に珍しい物に手を出さない方が良い。ここは私達にお任せなさい。」

帝国随一の鑑定士に脅されて、ピッヒは諦めるしかなくなった。

「わかりました。ですが、調査が終え問題ない場合はこちらの領地に管理権を移してください。良いですね?」

「それは、我々が決める事ではない。サリューン皇帝陛下の裁可をお待ちになってください。」

最後まで粘るつもりなのだろうが、そもそもここの領主はサリューン

陛下だ。ここまで食い下がる貪欲さ、他にも私物化している物が

ありそうだな。宰相補佐に報告をあげておこう。

「ビクトラさん、ありがとう。助かりました。あの、私が先に行っても良いですか?なんだかザワザワして落ち着かなくて。まるで呼ばれている様な気がするのです。」

胸元の服を握りしめ、ビクトラを見上げる瞳に思わず抱き寄せ唇を奪い

そうになるビクトラだが、あまりにも真剣な眼差しに理性が働いた。

「ぐっ!!わ、わかりました。では、私とサリザンド、ルーナ、朱雀、マルスで参りましょう。鑑定はサリザンドに任せて、体調に変化があればすぐにルーナを頼ってください。宜しいですね?マルス神官長は神官の持つ白魔粒子に変化があればすぐに報告してくれ。」

ビクトラの人選に拒絶の表情を見せたマルスだが、ビクトラの

「なんの為に帯同している」という視線に目を閉じ黙ってうなずいた。

マルスとビクトラの一瞬の火花と、警告を受けながらも虎視眈々と

利益の一部だけでも手中に収めようと舌なめずりする狼、それに一番の

問題であるこの鉱石と人影。この全体を覆う不穏な空気に都は逃げ

出したい気持ちになって目を瞑り、これからどう対応するか考え

項垂れた。


都様は本当にいろんな問題にすぐ巻き込まれてしまう。

その渦中に飛び込んでいるのだから仕方がないのかもしれないが、

万全を以てお守りしなくては。まさかのマルスが抵抗するとは、骨の

ある奴だとは思うがグレースとの相性は最悪だな。まぁ神官がいなく

ても問題は無いと俺は思うが、神々より神官は帯同すべしとの命だ。

受け入れる他ないのだが、マルスは本当に厄介だ。

「では、入りましょう。」

一行はビクトラと朱雀を先頭にして、念の為にと結界を張って中に入る

事にした。







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