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王都編

虎は自ら首輪を着ける(2)

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 ビクトラと朱雀は互いに引かず闘い続けた。
朱雀も神獣だが、顕現したばかりで力が思う様に使えず苦戦している。
だが、やはり神獣。ビクトラに比べると力は数段上であり、ビクトラに負けるとは考えられなかった。

「其方程度ではまだまだだ白虎には程遠いな。」

ビクトラは何故この男が祖である白虎を知っているのかと訝しんだが、それを聞く余裕はなかった。
朱雀はニヤリと笑いビクトラの氷と風魔法を一払する。
ビクトラも格の違いは本能で感じたが、換装を解き剣技で朱雀の焔を斬り、そのまま朱雀に斬りかかった。

「まだだ。」

ビクトラはそう言うと剣を握る右手を離し、着ていたシャツの胸元を破いて鳩尾みぞおちに手を当てる。
すると、そこから白金の刀が現れた。

「お前、その刀、、そうか。神核を持っていたのか。」

翼と剣が絡み合う隙間から、朱雀はビクトラと刀を見下ろすと翼を下ろした。ビクトラも不意に敵意を失った朱雀に、これ以上闘う意志の無い事を感じ、白金の刀を鳩尾みぞおちに押し込んだ。

「これは、我家に代々受け継がれてきた力。何故知ってんだ。神核とはなんだ、、、?」

朱雀は溜息を吐いてビクトラに背を向け手を貸す様命令した。

「主人が寝ている。休ませる場所を用意しろ。今すぐだ。」

朱雀は人の姿になると、グレースを抱き上げその額に口付けを落とした。ビクトラはその光景に怒りを感じたが、横たわるその姿に我に返って、近くの小屋を案内することにした。

 グレースをベットに休ませ、朱雀は白虎に向かい合った。
ビクトラも朱雀と目を合わせ睨み合う。

「主人は予言によるこの世界の崩壊を止めるべく神々によりこの世界に送られた尊きお方だ。」

朱雀は静かに語り始めた。
ビクトラも視線をグレースへ向けたまま耳を傾け頷いた。

「予言は嘘だったのか?」

ビクトラは常々感じていた予言の嘘臭さに辟易していた事もあり、朱雀の言葉を受け入れる事に抵抗はなかった。

「嘘、ではない。ただ、その予言の先にある最善と最悪の結末を、予言した者は利用している。」

「そうか。だか、何故この方はこの世界の為に、、」

ビクトラは眉間に皺を寄せた。

「主人の世界を守るため、降臨なさった。」

「この方の世界?こことは違うのか?」

「この事は主人のこれからにさわりある。故に教えられぬ。」

それは、天界という事なんだろう。神々の住まう世界にも影響を与える様な何かが起きるという事なのだろうか?
俺には何ができるだろうか。俺に出来るのは闘い護る事、その為なら使える金と権力と武力を以て力になろう。

「そうか。俺も、この世界に生きる者。俺に与えられた権限でこの方を御守りしたい。」

ビクトラは朱雀の目を見つめた。
朱雀も、ビクトラの瞳の中にある物を見定める様に目を合わせた。

「……この国で、主人が自由に動ける事が重要だ。主人が目覚め、受け入れられたなら着いてくるといい。」

ビクトラは真一文字に結んだ口元と、蒼い炎を宿した鋭い眼を緩め、眠るグレースの姿を見つめて微笑んだ。

「そうか、わかった。嫌でも受け入れて頂くさ。早速だが、アンタの名を聞いてもいいか?」

穏やかな顔つきから打って変わり、悪戯な笑みを朱雀へ向けた。

「朱雀だ。」

「改めて。俺はビクトラ•ライディだ。真名は許せ。」

朱雀、なるほどなとビクトラは思った。だが、セカンドネームである魂の名はこいつには言わない。主人だけに呼んで貰いてーからな。

ライディは四神の一柱、朱雀がそこにいる男だと分かると、故に縁があったのだろうと得心した。ふっ、と一息吐いてビクトラは挨拶代わりに、剣の鍔を親指で押して柄から剣の刃を見せて、また柄に戻した。

キィーーーーーーン

澄み渡る剣の声が部屋に響いた。
しかし、挨拶は不要とばかりに朱雀はグレースの枕元に立ち、呟いた。

「ビクトラよ、お前の忠誠どこまで信じられる。」
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