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太陽の国 獣語
※三が日の過ち※
しおりを挟む異国で出会った時枝靖三郎の家でその息子、孝臣の部屋で寝る事になったファルファータは初めて床に敷かれた布団で眠った。穏やかな眠りの中で、ファルファータは靖三郎を想っていた。
「おや、ここはどこだろうね」
色とりどりの遊具の集まる公園のベンチに座るファルファータは、隣接した藤棚と芝生、それを囲む花々を見た。
「こんにちは」
背後から声を掛けられ、振り返ると若い男が立っていた。
「君は誰だい?」
「遊びませんか?一緒に」
「何をして?」
「なんでもいいんですよ。夢だから」
「そうかい…夢だからね。なんでもいいのか」
黒髪に白い清潔感のあるシャツと、青いズボンを履いた男は
ファルファータの手を取り歩き出した。
「私はどこへ行くんだろうね?」
「思うままに」
「うん、そうだね」
ファルファータが気がつくと、何やら暗い建物の中を歩いていた。
「ここは水族館。海に生きる動物が見れますよ」
「水族館?」
暗い通路の両サイドには、壁に嵌め込まれた水槽の中を泳ぐ魚や動物達がファルファータを見ていた。
「静かな所だね」
「ええ…静かですね」
「君は、誰だい?」
「私は時枝靖三郎と言います。貴方は?」
「靖三郎かい?若い君は可愛いね、惚れ直したよ」
「そうですか?貴方の好みの様で何より」
「ファルと呼んでおくれ」
「えぇ、ファル」
「靖三郎、私が側に居るのは嫌かい?」
「どうしてです?」
「この国では、女と番うものなのだろう?」
「そうですね」
「でも、私は君に惚れたんだ。私を側に置いておくれよ」
「でも、帰るべき場所があるのでしょう?」
「そうだ、君もザーナンドにアキコと一緒に来るといい!」
「いえ、行けません」
ファルファータは、靖三郎の言葉に思いの外ショックを受けて繋いだ手を見つめた。
「私が嫌いかい?」
「いえ、好きですよ」
「なら!」
「私は自分のすべき事を見失う訳にはいかないんです。ファルさん」
「すべき事?」
「えぇ…妻を大切にして…息子に子供が出来たら孫の面倒をみる。生徒を指導して、自分の剣道を磨く…自分の人生をちゃんと生きる。これが私のすべき事」
「私が居てはできないのかい?」
「貴方のすべき事を捨ててまで、私に執着すべきではありませんよ」
「つれないね」
「でも、ここは私の夢なんだろ?だったら夢の中だけでも愛しておくれよ」
ファルファータは、靖三郎に向き合うと抱きしめてキスをした。夢に現れた靖三郎の手は硬く、ファルファータの頬を包む掌の上からファルファータは手を重ねた。
繰り返しキスをしても、微動だにしない靖三郎の瞳を見てファルファータは泣きたくなった。
「本当、嫌な男だね。私がこんなに惚れているのに」
「ファル、君を本当に愛している人が君を待っているよ」
「愛した人に愛されなきゃ意味はないだろ?靖三郎は私を待っていてはくれないのかい?」
「ほら、あそこで貴方を待っている人がいますよ」
水槽に挟まれた通路の奥の暗闇を指差す靖三郎はファルファータの背を押した。ファルファータは振り返り、靖三郎に足を絡めて抱きつくと、舌を捻じ込み無理矢理押し倒した。
「なんでさ!アキコだって良いって言ったじゃないか」
床に倒れた靖三郎は悲しげな顔をしていたが、ファルファータは無視をして服を脱ぎ捨てた。
「私の夢なんだ、好きにさせてもらうよ?」
ファルファータの白い肌が、水槽から差し込む青白い光に照らされ、キラキラと輝いていた。髪を解き、靖三郎の服のボタンをその鋭い爪で弾き飛ばし、ガッチリとした胸板に肌を重ねる。
「靖三郎、私から逃れられた人間も、獣もいないんだ。諦めてね」
それでも微動だにしない靖三郎の身体を愛撫しながら、股下に顔を埋めズボンを脱がすと靖三郎の物を口に含む。
次第に立ち上がる靖三郎の半身を、夢中で舐めては飲み込み頭をひたすら動かした。
「靖三郎、気持ちよくしてあげる」
鋭い爪を引っ込めると、指を舐めたファルファータは靖三郎の窄みに指を差し入れながら、屹立した靖三郎を一気に喉奥まで飲み込み、喉を締めた。トントンと指で中を刺激された靖三郎は腰をファルファータの喉に叩きつけ、迫り上がる快感を吐き出している。
「いいね、沢山出たよ?次は私の中で出すと良い」
指を入れたまま、まだ硬い靖三郎の半身を臀部に擦り付けゆるゆると飲み込んだ。ファルファータは真っ白い尾と耳を立ち上がらせ、自身の子宮近くまで靖三郎を迎え入れ、ひたすら動き続けた。
「あぁ、なんて良いんだろうね?愛する男を気持ち良く出来るのは愛している者の特権さ、靖三郎…これが私の君への愛さ」
靖三郎も下からファルファータを突き上げ、嬌声をあげるファルファータを押し倒すと左足を持ち上げ、ぐいっとファルファータの頭近くまで押し付けながら、抽送をし続けた。
靖三郎がファルファータの中でビクビクと吐精するのと同時にファルファータも果ててしまったが、引き抜かれた靖三郎の半身を掴むと手で扱き、牙で軽く刺激しながら口に含み続けた。
「ファルファータ!お前の男はそいつじゃない!俺の元へ帰ってこい」
聞き覚えのある声がファルファータを呼んだ。
「うるさいね、私は靖三郎に夢中なんだ。邪魔しないでおくれ」
「ファルファータ!ファルファータ!」
「良い所なんだ!邪魔するんじゃないっ!」
「靖三郎、私は君に愛されたいんだ」
ファルファータが靖三郎にキスをした時、初めて靖三郎の腕が動きファルファータを押し返した。
「ファルファータさん‼︎ 起きて下さい!俺は孝臣です!」
その声でファルファータを目を覚ました。
「靖三郎‼︎」
気がつくと、ファルファータに組み敷かれた孝臣が涙目でファルファータから顔を背け、身体を押していた。
「おや?おはよう孝臣」
「~っ!退いて下さい!」
「靖三郎は?」
「とっくに出かけましたよ!」
ファルファータは孝臣をまじまじと見ると、夢の中で抱いた
靖三郎によく似ていた。
「おや、私が抱いたのは君だったか」
「なっ‼︎なんて初夢見てんですか!」
「靖三郎を物に出来たと思ったんだけどね。失敗したね」
孝臣は顔を赤くして怒りに興奮していた。
「孝臣?」
「どけよ!変態!」
「変態?」
「男とキスとかマジねーわ!」
「なんでだい?君だって二度も私の中で果てたじゃないか」
「はぁっ⁉︎」
孝臣が布団を捲ると、自身の上に跨るファルファータの中に
ずっぽりと半身が埋まっていた。
「ぬぁぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
「まぁ、いいさ。私もまだ治らないしね」
「うぇっ!嘘だろっ!」
ファルファータはよく分からなくなっていた。靖三郎を愛しているのに、孝臣の匂いと声に下腹が疼く。
おや、こんな世界にいても発情はするんだね?
抑制剤も飲んでないし、靖三郎の子は望めないだろうからね。孝臣の子を靖三郎と思って育てるのも良い。ならしっかり妊娠しようかな。
「ファルファータさん、止めろ!」
ファルファータは孝臣に覆いかぶさり、耳元で囁いた。
「私はもうすぐ国へ帰るんだ。外聞も恥も、気にしなくていいんだよ?今はただ気持ちよくなりなさい」
ファルファータはその燃える様な赤い瞳で孝臣を捉えると、魔力を込め囁いた。
「私が欲しいだろ?孝臣、私との子が欲しいと思ってごらん?君は私を愛しているはずだ」
洗脳された様に孝臣はファルファータの瞳を見つめ、喉を鳴らし呟いた。
「あんたが…ほし…い」
「そうだ、良い子だね。私は孝臣の物だよ?沢山抱いていいよ」
「あ…あぁ、ファルファータさん、ファルファータさん!」
孝臣は起き上がり、ファルファータを抱き抱えると壁に押し付け背後から抱いた。
昼頃になり、未だ降りてこないファルファータを心配したナナセは孝臣の部屋をノックした。
「ファルファータさん、孝臣君。もうお昼だよ?まだ寝ているのかい?」
孝臣は未だ腰を振り続け、ファルファータの口を指で塞ぎながら返事をした。
「はいっ!先生っ…はっ、ん…昨日の稽古がっ響いて…後少しっ寝ますっ!」
「そう、ファルファータさんもまだ寝ているのかな?」
「はいっ…明け方までっ話をっ…していたので」
「分かった。私は少し出てきます。ファルファータさんを頼むね?」
「えぇ!ちゃんとっイカせますっ」
「ん?何処かへ行く予定立てたの?」
「あっ、先生のっ所に後で行かせますから!」
「そう、なら私は墓参りにいくから、戻ったらまた声を掛けますね」
「はいっ」
ナナセの階段を降りる音を聞き、家を出た音で孝臣はファルファータの口を塞いでいた手を離した。
「まだ、大丈夫だよね。俺のファルファータ」
「あぁ、孝臣。こんなにして…私が帰ったら…もう女は抱けないね」
「なら、俺も連れて行ってよ」
「ファルファータの男は俺だろ」
「可愛い私の孝臣、連れては行けないかも知れない」
「ふざけんなよ…ファルファータを離さないよ」
「あぁ、これこそ私の求めた靖三郎の愛さ」
「親父の名前を出すなよっ!萎えるだろ」
「おや、ごめんよ?ほら、おいで」
「ファルファータっ!クソっ!あぁっ!噛みてぇ!」
その言葉に、ファルファータは心臓が掴まれた様に痛み、無意識に髪を掻き上げ、既に噛み跡の付いた頸を孝臣に晒した。
「ここだよっ!ここを噛むんだ孝臣っ!」
「はぁっ!はぁっ!あぁっ!誰のだよ!この噛み跡っ!」
「良いから!今噛んで!」
「クソっ!」
さらりと揺れるファルファータの髪を掴み、頭を引き上げると孝臣は力任せに噛み付いた。
「あぁぁぁぁぁぁっ‼︎」
ファルファータの身体は硬直し、ビクンビンクと痙攣すると
仰け反り孝臣の肩に頭を乗せたまま気絶した。孝臣はそれでも噛み付いたまま、締め付けられた半身に熱が集まるのを感じ腰を振った。
二時ごろ、靖三郎達が戻って来た音で孝臣とファルファータは目覚めた。違いに繋がったまま抱き合い、目覚めのキスをして微笑んだ。
「孝臣、私が好きかい?」
「ファルファータさん…なんで俺、あんたを嫌ってたんだろ?離したくないよ。このまま、またやろうよ」
「でも、靖三郎やナナセが帰ってきたからね。起きないと」
「あぁ、なんで俺気付かなかったんだろ…俺はあんたが好きだよ」
「大丈夫…明日には忘れているよ」
「忘れないよ?好きな気持ちは簡単には冷めないよ」
「いや、忘れるんだよ。孝臣…」
ファルファータは、下腹に手を当てて魔力を流した。
うん、ちゃんと宿ったね。
孝臣、靖三郎とは違うけど、ちゃんと愛しているよ。
私がロードルーに帰ったらちゃんと君の子供は育てるからね?心配要らないよ。
ファルファータは孝臣にキスをすると目を見て呪文を唱えた。
「イレーズリターナイレーズオール」
「ファルファータ?何その言葉」
「え?」
ファルファータは、何度もその呪文を唱えたが一向に記憶消去の魔法がかかった気配が無く、愕然とした。
嘘だっ!呪文が効か無い?
なんて事だろうね…水魔法は使えるのに、何で…記憶消去は効か無いんだい?
ファルファータは自身の過ちに気付き、自己嫌悪に陥った。
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