6 / 15
ブティック『ニコル』
しおりを挟む
空には鉛色の雲が広がっている。
今にも雨が降りそうだ。
秋の夜長とはよく言ったもので、早朝起きると外は真っ暗だった。
この日はヴァレンティーナの職場、ブティック『ニコル』に行く日だった。
『ニコル』は王侯貴族御用達のお店。
勿論、親友のアナスタシアも来店する。
ちなみに、嫌な話、あの、エカテリーナも『ニコル』に買い物に来る。
決まって衣料品とピアスを何点かお買い上げしていく。
あの女にピアスは付き物。
ピアスが大好きなのだ。
ヴァレンティーナもピアスをしているが、エカテリーナほど大量にピアスを所持していない。
「おはようございます」
婚約破棄のちの出勤だ。
「おはよう。ヴァレンティーナ」
店長のマルガリータ・ハーバーだ。
ニコルは伯爵。神々の血は引いていない。
神々の血を引いているのは一部の侯爵以上だ。
神々の血は炎、水、土、風、雷、海、太陽、月、星、川、山、空の12の神々がいる。
マルガリータはジョージと婚約していたことを知っている。
婚約したことを話した時には「おめでとう」と言ってくれた。
やはり、隠し事は良くない。
それに、発覚するのも時間の問題。
ヴァレンティーナはジョージと婚約破棄したことを告白することにした。
「あの~~~」
「何かあったの、ヴァレンティーナ。それに、なんか今日ちょっと挙動不審よ」
やはり見透かされていた。
まさか態度に出てしまったとは。
ともなれば、なおさら隠してなどいられない。
「実はわたくし……」
「うんうん」
マルガリータは目線を合わせてきた。
「ジョージ様と婚約破棄しました」
「そうだったの。それは辛かったわね」
「はい。ジョージ様が他の女性に乗り換えてしまって」
「そうなのね。人ってわからないものね」
「兎に角わたくしは今日は仕事に全身全霊込めますわ」
「そうね。そうして頂戴」
と、その時。
依にも依ってエカテリーナの来店。
(婚約者を奪っておいて、よくぞノコノコと買い物にこれたものね)
エカテリーナは赤いドレスに釘付け。
「いらっしゃいませ」
それでも仕事だから、隠れるわけにもいかず……。
至って平静を装う。
でも、身体は震えている。
(完全に挙動不審)
エカテリーナはドレスを置き、ピアス売り場へと足を進めた。
そして、エメラルドのピアスを手に取った。
「これ、お願いします」
手は完全に震えていた。
「ありがとうございました」
精算を終え、エカテリーナは踵を返した。
「何か変だったわよ。どうしたの、話してちょうだい」
「はい。実はエカテリーナがジョージ様の婚約者なんです」
「そうだったの? 無理に接客することないわ。私に言って!」
「でも……」
「でもは無しよ。遠慮はいらないわ!」
「ありがとうございます。マルガリータ」
今にも雨が降りそうだ。
秋の夜長とはよく言ったもので、早朝起きると外は真っ暗だった。
この日はヴァレンティーナの職場、ブティック『ニコル』に行く日だった。
『ニコル』は王侯貴族御用達のお店。
勿論、親友のアナスタシアも来店する。
ちなみに、嫌な話、あの、エカテリーナも『ニコル』に買い物に来る。
決まって衣料品とピアスを何点かお買い上げしていく。
あの女にピアスは付き物。
ピアスが大好きなのだ。
ヴァレンティーナもピアスをしているが、エカテリーナほど大量にピアスを所持していない。
「おはようございます」
婚約破棄のちの出勤だ。
「おはよう。ヴァレンティーナ」
店長のマルガリータ・ハーバーだ。
ニコルは伯爵。神々の血は引いていない。
神々の血を引いているのは一部の侯爵以上だ。
神々の血は炎、水、土、風、雷、海、太陽、月、星、川、山、空の12の神々がいる。
マルガリータはジョージと婚約していたことを知っている。
婚約したことを話した時には「おめでとう」と言ってくれた。
やはり、隠し事は良くない。
それに、発覚するのも時間の問題。
ヴァレンティーナはジョージと婚約破棄したことを告白することにした。
「あの~~~」
「何かあったの、ヴァレンティーナ。それに、なんか今日ちょっと挙動不審よ」
やはり見透かされていた。
まさか態度に出てしまったとは。
ともなれば、なおさら隠してなどいられない。
「実はわたくし……」
「うんうん」
マルガリータは目線を合わせてきた。
「ジョージ様と婚約破棄しました」
「そうだったの。それは辛かったわね」
「はい。ジョージ様が他の女性に乗り換えてしまって」
「そうなのね。人ってわからないものね」
「兎に角わたくしは今日は仕事に全身全霊込めますわ」
「そうね。そうして頂戴」
と、その時。
依にも依ってエカテリーナの来店。
(婚約者を奪っておいて、よくぞノコノコと買い物にこれたものね)
エカテリーナは赤いドレスに釘付け。
「いらっしゃいませ」
それでも仕事だから、隠れるわけにもいかず……。
至って平静を装う。
でも、身体は震えている。
(完全に挙動不審)
エカテリーナはドレスを置き、ピアス売り場へと足を進めた。
そして、エメラルドのピアスを手に取った。
「これ、お願いします」
手は完全に震えていた。
「ありがとうございました」
精算を終え、エカテリーナは踵を返した。
「何か変だったわよ。どうしたの、話してちょうだい」
「はい。実はエカテリーナがジョージ様の婚約者なんです」
「そうだったの? 無理に接客することないわ。私に言って!」
「でも……」
「でもは無しよ。遠慮はいらないわ!」
「ありがとうございます。マルガリータ」
0
お気に入りに追加
237
あなたにおすすめの小説
私、侯爵令嬢ですが、家族から疎まれ、皇太子妃になる予定が、国難を救うとかの理由で、野蛮な他国に嫁ぐことになりました。でも、結果オーライです
もぐすけ
恋愛
カトリーヌは王国有数の貴族であるアードレー侯爵家の長女で、十七歳で学園を卒業したあと、皇太子妃になる予定だった。
ところが、幼少時にアードレー家の跡継ぎだった兄を自分のせいで事故死させてしまってから、運命が暗転する。両親から疎まれ、妹と使用人から虐められる日々を過ごすことになったのだ。
十二歳で全寮制の学園に入ってからは勉学に集中できる生活を過ごせるようになるが、カトリーヌは兄を事故死させた自分を許すことが出来ず、時間を惜しんで自己研磨を続ける。王妃になって世のため人のために尽くすことが、兄への一番の償いと信じていたためだった。
しかし、妹のシャルロットと王国の皇太子の策略で、カトリーヌは王国の皇太子妃ではなく、戦争好きの野蛮人の国の皇太子妃として嫁がされてしまう。
だが、野蛮だと思われていた国は、実は合理性を追求して日進月歩する文明国で、そこの皇太子のヒューイは、頭脳明晰で行動力がある超美形の男子だった。
カトリーヌはヒューイと出会い、兄の呪縛から少しずつ解き放され、遂にはヒューイを深く愛するようになる。
一方、妹のシャルロットは王国の王妃になるが、思い描いていた生活とは異なり、王国もアードレー家も力を失って行く……
妻と夫と元妻と
キムラましゅろう
恋愛
復縁を迫る元妻との戦いって……それって妻(わたし)の役割では?
わたし、アシュリ=スタングレイの夫は王宮魔術師だ。
数多くの魔術師の御多分に漏れず、夫のシグルドも魔術バカの変人である。
しかも二十一歳という若さで既にバツイチの身。
そんな事故物件のような夫にいつの間にか絆され絡めとられて結婚していたわたし。
まぁわたしの方にもそれなりに事情がある。
なので夫がバツイチでもとくに気にする事もなく、わたしの事が好き過ぎる夫とそれなりに穏やかで幸せな生活を営んでいた。
そんな中で、国王肝入りで魔術研究チームが組まれる事になったのだとか。そしてその編成されたチームメイトの中に、夫の別れた元妻がいて………
相も変わらずご都合主義、ノーリアリティなお話です。
不治の誤字脱字病患者の作品です。
作中に誤字脱字が有ったら「こうかな?」と脳内変換を余儀なくさせられる恐れが多々ある事をご了承下さいませ。
性描写はありませんがそれを連想させるワードが出てくる恐れがありますので、破廉恥がお嫌いな方はご自衛下さい。
小説家になろうさんでも投稿します。
婚約破棄されたおっとり令嬢は「実験成功」とほくそ笑む
柴野
恋愛
おっとりしている――つまり気の利かない頭の鈍い奴と有名な令嬢イダイア。
周囲からどれだけ罵られようとも笑顔でいる様を皆が怖がり、誰も寄り付かなくなっていたところ、彼女は婚約者であった王太子に「真実の愛を見つけたから気味の悪いお前のような女はもういらん!」と言われて婚約破棄されてしまう。
しかしそれを受けた彼女は悲しむでも困惑するでもなく、一人ほくそ笑んだ。
「実験成功、ですわねぇ」
イダイアは静かに呟き、そして哀れなる王太子に真実を教え始めるのだった。
※こちらの作品は小説家になろうにも重複投稿しています。
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~
浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。
本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。
※2024.8.5 番外編を2話追加しました!
悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。
三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。
何度も断罪を回避しようとしたのに!
では、こんな国など出ていきます!
完結 喪失の花嫁 見知らぬ家族に囲まれて
音爽(ネソウ)
恋愛
ある日、目を覚ますと見知らぬ部屋にいて見覚えがない家族がいた。彼らは「貴女は記憶を失った」と言う。
しかし、本人はしっかり己の事を把握していたし本当の家族のことも覚えていた。
一体どういうことかと彼女は震える……
断罪されて婚約破棄される予定のラスボス公爵令嬢ですけど、先手必勝で目にもの見せて差し上げましょう!
ありあんと
恋愛
ベアトリクスは突然自分が前世は日本人で、もうすぐ婚約破棄されて断罪される予定の悪役令嬢に生まれ変わっていることに気がついた。
気がついてしまったからには、自分の敵になる奴全部酷い目に合わせてやるしか無いでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる