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手紙
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外は雪が積もっている。
空には鉛色の雲が広がっている。
アヴィーコ王国は盆地で冬は寒く夏場は猛暑になる。
寒い。
サリサが憤怒の表情をしてステファニーを見てくる。
「ステファニー・アルバラードさん。あなた、王太子殿下に何かしでかしたのですか?」
サリサは右手に手紙を持っている。
「いいえ、何もしていませんわ」
(心当たりはないわ)
「王太子殿下より手紙を賜りました。あなたあてよ、ステファニー・アルバラードさん」
「あ……はい」
ステファニーは手紙を受け取った。
そして、封を開けた。
手紙にはこう書かれていた。
『親愛なるステファニー・アルバラード様。先日の誕生会はお陰様で盛大に開催できた。きみの歌声に惚れた。もし、良ければ個人的に会わないか? ジェラールより』
え!?
と思った。
ジェラールとは夜会やお茶会などでも一緒に過ごした事はあるが、なぜここにきてステファニーが気になったのか?
「何と書いてあったんです?」
「個人的にお会いしたいと……」
「王太子殿下があなたのような人と直接お会いしたいなど言うわけがありませんわ。手紙を貸しなさい!!」
サリサは手紙をひったくり、読んだ。
「確かに書いてありますね」
喉を上下に揺らしている。
「ステファニー・アルバラード。あなたは魅了の魔法を王太子殿下に使ったわね?」
「ま……まさか」
魅了の魔法は禁断の魔法。
絶対に使ってはいけないのだ。
「魅了の魔法が使えるのなからば、わたくしは婚約破棄などしていませんわ」
「黙りなさい!! なぜ? なぜ王太子殿下があんたなんかに?」
「待って下さい、修道女長」
「どうしたの? ルーシー」
「魅了の魔法は禁断の魔法です。ステファニーが使うとは思いませんわ。私が保証します」
「ん~!! ルーシー! あなたもグルね?」
「それはありませんね」
同じ合唱団に所属するエリザベスだ。
「エリザベス・ブルーム。あなた……の言うことなら……信じますわ」
エリザベスは修道院の最古参。
ステファニーが生まれた頃には既に修道院にいたのだ。
エリザベスはブルーム男爵家令嬢。
エリザベスも婚約を破棄され、その後異性不信になり、修道院の門戸を叩いた。
意地悪5人組は直属の先輩。
エリザベスは別の部署の先輩だ。
「そう言うことで、ステファニーと王太子殿下が会う事を許可して頂きたいです」
「わかりました。エリザベス・ブルームがそう言うならば、ステファニー・アルバラード。あなたが王太子殿下に謁見する事を許します」
「ありがとうございます」
ステファニーは深々と頭を下げた。
空には鉛色の雲が広がっている。
アヴィーコ王国は盆地で冬は寒く夏場は猛暑になる。
寒い。
サリサが憤怒の表情をしてステファニーを見てくる。
「ステファニー・アルバラードさん。あなた、王太子殿下に何かしでかしたのですか?」
サリサは右手に手紙を持っている。
「いいえ、何もしていませんわ」
(心当たりはないわ)
「王太子殿下より手紙を賜りました。あなたあてよ、ステファニー・アルバラードさん」
「あ……はい」
ステファニーは手紙を受け取った。
そして、封を開けた。
手紙にはこう書かれていた。
『親愛なるステファニー・アルバラード様。先日の誕生会はお陰様で盛大に開催できた。きみの歌声に惚れた。もし、良ければ個人的に会わないか? ジェラールより』
え!?
と思った。
ジェラールとは夜会やお茶会などでも一緒に過ごした事はあるが、なぜここにきてステファニーが気になったのか?
「何と書いてあったんです?」
「個人的にお会いしたいと……」
「王太子殿下があなたのような人と直接お会いしたいなど言うわけがありませんわ。手紙を貸しなさい!!」
サリサは手紙をひったくり、読んだ。
「確かに書いてありますね」
喉を上下に揺らしている。
「ステファニー・アルバラード。あなたは魅了の魔法を王太子殿下に使ったわね?」
「ま……まさか」
魅了の魔法は禁断の魔法。
絶対に使ってはいけないのだ。
「魅了の魔法が使えるのなからば、わたくしは婚約破棄などしていませんわ」
「黙りなさい!! なぜ? なぜ王太子殿下があんたなんかに?」
「待って下さい、修道女長」
「どうしたの? ルーシー」
「魅了の魔法は禁断の魔法です。ステファニーが使うとは思いませんわ。私が保証します」
「ん~!! ルーシー! あなたもグルね?」
「それはありませんね」
同じ合唱団に所属するエリザベスだ。
「エリザベス・ブルーム。あなた……の言うことなら……信じますわ」
エリザベスは修道院の最古参。
ステファニーが生まれた頃には既に修道院にいたのだ。
エリザベスはブルーム男爵家令嬢。
エリザベスも婚約を破棄され、その後異性不信になり、修道院の門戸を叩いた。
意地悪5人組は直属の先輩。
エリザベスは別の部署の先輩だ。
「そう言うことで、ステファニーと王太子殿下が会う事を許可して頂きたいです」
「わかりました。エリザベス・ブルームがそう言うならば、ステファニー・アルバラード。あなたが王太子殿下に謁見する事を許します」
「ありがとうございます」
ステファニーは深々と頭を下げた。
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