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結婚式 ※クルト目線

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俺様はついにこの日を迎える事になった。


ヴィヴィアンのウエディングドレス姿はなんて可愛いのだろう。

そうさ。あのクソ女にはウエディングドレスなど似合わない。

生涯独身がお似合いだな。


わはははは。


結婚式は聖ダレガルド寺院で行われた。

ここ、聖ダレガルド寺院は王侯貴族の結婚式や戴冠式に使われる。


俺様は誇らしくて仕方がない。

そうさ。俺様は筆頭公爵の次期当主になるのだからな。


会場にはカーネギー夫妻の姿は無い。

わはははは。

怖気づいたか。


そうだよ。あんな女と結婚しなくて正解だった。

生まれながらにして婚約者がいる事自体おかしい。

恋愛結婚でなければ夫婦円満はないだろうよ、バーカ。


ヴィヴィアンはヴェールを被っている。

それでも、ヴィヴィアンは可愛い♡


「ヴィヴィアン。可愛いよ」

「ありがとう」


空は俺様たちを祝うかのような青空だ。

秋雨前線はどこへやら。

やはり、俺様は間違っていなかったんだ。



「やあ、エリカ」

俺様の妹なのだ。

王太子妃殿下などという敬称などつける必要も無い。


それに。王太子は俺様の学園の1つ上の先輩。


だから、色々なものを奢ってもらっちゃったんだもんねー。

そうだよ。エリカをもらうって言うんだから、俺様は義理の兄にあたる。


先輩だけど、俺様の義理の弟になる。

兄には絶対服従なのだ。


ああ、これは俺様が決めたルールだ。

王太子はそれで良いって言ったんだ。


まー、流石に国王陛下と王妃殿下には敬称をつけるけどな。


それと、アンドレア王女も敬称無し。

俺様は偉いのだ。


そうさ。学園時代はずっと成績優秀だった。

1番だった。

運動もできた。

音楽もできた。

俺様の苦手は強いて言うなれば虫を触ることができない事だ。


まー。それだけ俺様は立派な人間という事だ。

わははは。


「お兄様」

「エリカ!」

エリカは散々「私に敬称つけて」と言ってきたけれど、最近諦めがついたようだ。


「お兄様。私は祝福しませんわ」

「なぜだ!? これは俺様が臨んだ結婚だ。アンジェラとの結婚なんて望んでなかったんだよ。その位わかるだろ?」

「やはり、カーネギー伯爵夫妻は不参加か」


「お……王太子殿下」

王太子殿下本人の前では流石に敬称を使う。

なぜかなのだろう。

王太子の前だとあがってしまう。

吃ってしまう。


俺様ってこんなビビリだったっけな?


「カーネギー伯爵夫妻も勿論招待したんだよな?」


「は……はい」

「やはり、不参加という事はクルトとヴィヴィアンの結婚は認めないという事なんだな」

「私だって本当は参加したくありませんでしたわ。私はお兄様はアンジェラと結婚するはずだったんだもの」

「ヴィヴィアンのお腹、大きくなったな」

「あ……はい」

「おめでとうは言えないわ」

「エリカ……なぜだ?」


「酒場で出会った女性に手を出すだなんて」


確かにヴィヴィアンとは『バドの酒場』で出会った。

そうさ。俺様は『バドの酒場』では人気者だったんだ。

そうよ。行けば必ずハーレムなんだからな。


この世には魅了をさせる魔法がある。

その魔法は禁じられた魔法。

俺様はそんな魔法を使わなくても女が寄ってくる。

随時魔法を使っているようなものなんだよな、わははは。


「まさか、魅了の魔法を使ったのではあるまいな?」

「まさか……ですよ」

「古文書かなんか漁っていたらしいしな」

古文書?

そんなの心当たりない。

俺様が読む書物は医学書しかない。


「あの。わたしですね。読む書物は医学書のみですよ。古文書など読みませんよ。それにわたしは魔法に興味ありませんからね」

事実そうだ。

俺様は魔法に興味は無い。


もし、この俺様が魅了の魔法を使ったら、お年寄りから子供まで寄ってくるからな。


ちなみに俺様は王太子の前の一人称は「わたし」だ。

俺様はそのとおり、一人称を人によって使い分けているわけだ。


え?

人妻と浮気をしたことはあるかって?


ここだけの話。

俺様は人妻からもモテた。


人妻とも一緒に酒を交わしたこともある。

ある侯爵夫人も俺様の好みだった。


向こうは家庭ある身だけれど、やはり俺様は常時魅了の魔法がかかっていますから~。

人妻でもコロリと虜にする事ができるわけだ。


まー、それだけ旦那に魅力が無いと言っちゃあそれまでなんだけどな。


「私は聞いているぞ。カノン夫人とも浮気をしていたともな」

「あ。それ、気の所為ですよ、王太子殿下。流石の私も人の道をはずすような事はしていませんって」

カノン夫人。

まさしく彼女こそ俺様が浮気をしていた侯爵夫人だ。


そう言えばカノンの姿も無い。

「カノン夫人もお怒りのようね」

カノンも俺様と再婚できると思っていた。

俺様がアンジェラに冷めた事を伝えたからな。


そうさ。

独身のアンジェラよりも人妻のカノンの方が数億倍、いや、数京倍も魅力があった。


頭が良いだけでは魅力にはならない。

やっぱり、女には女の色気が無いとな。


そうだよ。

アンジェラはお洒落には無頓着だったらな。

このお洒落な俺様と並べば美醜の差に驚くだろうな。


化粧も下手だし、アクセサリーをあまり好まない。加えて地味な服。

あんな女のどこを褒めろと?

冗談じゃない。

とても俺様と一緒になれる女じゃない。

しかも、酒が飲めないのは致命的。

何でも? 酒を飲んで記憶を無くしたら怖いだと?

そんな事恐れて酒を飲まないなど愚の骨頂だ。


記憶を無くすほど呑むなど余程の事が無い限り皆無に等しい。


要するに酒から逃げたいだけだ。


「カノンと私は不倫などしていません」

しかし、王太子殿下は顔の表情を変えない。


「ほ、ほ、ほ……本当ですとも」

なぜ吃るんだ。しっかりしろ、クルト!!


「きみは多くの女性を魅了した。火のないところから煙は立たないという言葉を知っているか?」

知らないわけがない。

「も……勿論ですとも」


「本当は私もエリカ同様、結婚式に参列したくなかった。しかし、王太子という立場上、そしてクルトの義理の弟という立場上参加せざるを得ないのだ」

そんな事わかってるよ。


「祝えないだけだ」

祝いたくなければ、無理に祝う必要はない。

無理してまで祝われたくはない。


俺様は逃げるようにヴィヴィアンの元へと行った。




結婚式は厳かに執り行われた。

俺様は神様の前でヴィヴィアンとの永遠の愛を誓った。

アンジェラとの永遠の愛は誓えないが、ヴィヴィアンとの永遠の愛は誓える。
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