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お便り
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朝。
鳥たちのさえずりが聞こえてきた。
窓の外では雨が降っている。
雨が降ると涼しい。
夏の終りを感じる。
「マドレーヌ様!」
ドアをノックする音が聞こえる。
張りのあるハイトーンボイスはシャーロットの声だ。
「シャーロットね。入って」
シャーロットは部屋に入ってきた。
何かを持っている。
「あの、マドレーヌ様。アリステル王国のジェームス王子殿下よりお便りがありました」
マドレーヌはシャーロットから手紙を受け取った。
確かに送り主はジェームスからのものだった。
ジェームス王子殿下……どういう事なのでしょう?
「そう言えばマドレーヌ様は仰っていましたよね。ジェームス王子殿下とあの晩の舞踏会で踊った事を」
「ええ」
そのことについてなのだろうか?
マドレーヌは恐る恐る手紙を開けてみた。
手紙にはこう書かれていた。
『親愛なるマドレーヌ様。先日は一緒に踊ってくれてありがとう。きみにはもう一度会いたい。もし良ければ近々晩餐会を開催する予定でいるので王宮に来てもらえますか? 待っています。ジェームス』
「ジェームス王子殿下に気に入られたみたいですわね」
「う……うん」
ジェームスはなぜ自分に好意を寄せているのか甚だ謎だった。
なぜなら、色々な女性に言い寄られているので、女性にはもういっぱいいっぱいのはずだ。
「たった一度踊っただけなのよ、シャーロット」
「一目惚れだったかもしれませんわよ」
一目惚れ……かぁ。
もしかして、これが女を選ぶ権利というやつ!?
ジェームス王子殿下は自国に気に入った女性がいないのだろうか?
しかし、それでもアリステル王国の貴族の女性は綺麗で有名。
でも、このままジェームスに気に入られてしまえば、ミハイルとの結婚は遠のくはず。
ミハイル王太子殿下なんかもう懲り懲りだわ。
人生やり直しが利くなら、ジェームス王子殿下についていった方が良いわ!!
「そうですわよね。だって、ミハイル王太子殿下についていったら、また処刑されてしまいますからね」
今回は運良くミハイルと出会う前に戻れたけれど、今度ばかりは次が無いような気がしていた。
そう。処刑されたらそこでおしまい。
人生は完全に終わる。
今はやり直しのチャンスがある。
しかも、舞踏会でミハイルと踊らずにジェームスと踊った事によって人生が変わるかもしれないのだ。
可哀想なマドレーヌ。
王太子妃になったは良いものの、ミハイルの不貞によってあらぬ罪を着せられ処刑される。
私は王妃殿下のワインに毒なんか入れていないわ!!
犯人は誰であれ、でっち上げは余りにも酷すぎる。
理不尽な処刑。
嫌なら嫌だって言ってくれれば良いのに、何も王妃殿下暗殺を企てていたなんてあんまりよ!!
確かに王妃殿下とは仲違いしていたわ。
だけど、殺すなんて考えてもみなかった。
「私ね、本当に王妃殿下を殺害しようなんてしていなかったわ」
「わかります。マドレーヌ様が人を殺すようには見えません」
「100歩譲って私は王妃殿下と仲違いしていたわ。でも、暗殺なんて考えてもみなかった」
「そうですよね。わかりますわ」
「私は王妃殿下とは仲違いしていたわ。でも、エリザベス王女とは仲良しだったもの。王室を滅茶苦茶にするような事なんて考えていなかったわ」
「私はマドレーヌ様を信じます。でも、これは明らかに人生のやり直し。分岐点は過ぎたのです」
そうそう。その通り。
「私はジェームス王子殿下についていくわ」
「そうですわね。私はマドレーヌ様が命を落としてしまうなんて考えたくもありません」
そう。シャーロットも悲しませないために。
恐らくあの世界では私の遺体はアルサ公爵に送られたかもしれない。
王妃殺害の容疑をかけられたのだから、王家の墓に入れるはずはない。
すると、やはりシャーロットを悲しませていたのかもしれない。
それを思うと涙が出る。
でも、私は何がどうなってこうなったのかわからないけれど、人生にやり直しが利くなら、もうミハイル王太子殿下とは関わりたくない。
王室とも関わりたくない。
「ねぇ、もう私、シャーロットや家族を悲しませたくないわ」
「はい。マドレーヌ様」
私が処刑されたとなれば、お父様は王室から解雇される……。
すると、アルサ家はどうなってしまうのだろう?
お父様にも迷惑をかけることになるわ。
職を失ったお父様はどうなってしまうのだろう?
新しく仕事を探さなければならない……。
すると、聖女だった母がまた職場復帰をしなければならない事態になる……。
そうなると、弟のフィルはどうなってしまうの?
フィルも裁判官を目指して勉強している……。
フィルは無事に裁判官になる事ができるのだろうか?
けれど、王室に泥を塗った事になっているから、王室に仕える事はできない……。
フィルはお父様の後継になる予定。
「ねぇ、シャーロット」
「はい、マドレーヌ様」
「このままだとお父様は職を失ってしまう……それにフィルも裁判官を諦めなければならなくなる」
「では、もうジェームス王子殿下についていく、の一択ですわね」
勿論、そうなる。
マドレーヌは便箋と筆を取り出し、ジェームスに手紙を書いた。
『親愛なるジェームス王子殿下 お便りありがとうございました。お言葉に甘えて王宮へ伺わせて頂きます。 マドレーヌ』
鳥たちのさえずりが聞こえてきた。
窓の外では雨が降っている。
雨が降ると涼しい。
夏の終りを感じる。
「マドレーヌ様!」
ドアをノックする音が聞こえる。
張りのあるハイトーンボイスはシャーロットの声だ。
「シャーロットね。入って」
シャーロットは部屋に入ってきた。
何かを持っている。
「あの、マドレーヌ様。アリステル王国のジェームス王子殿下よりお便りがありました」
マドレーヌはシャーロットから手紙を受け取った。
確かに送り主はジェームスからのものだった。
ジェームス王子殿下……どういう事なのでしょう?
「そう言えばマドレーヌ様は仰っていましたよね。ジェームス王子殿下とあの晩の舞踏会で踊った事を」
「ええ」
そのことについてなのだろうか?
マドレーヌは恐る恐る手紙を開けてみた。
手紙にはこう書かれていた。
『親愛なるマドレーヌ様。先日は一緒に踊ってくれてありがとう。きみにはもう一度会いたい。もし良ければ近々晩餐会を開催する予定でいるので王宮に来てもらえますか? 待っています。ジェームス』
「ジェームス王子殿下に気に入られたみたいですわね」
「う……うん」
ジェームスはなぜ自分に好意を寄せているのか甚だ謎だった。
なぜなら、色々な女性に言い寄られているので、女性にはもういっぱいいっぱいのはずだ。
「たった一度踊っただけなのよ、シャーロット」
「一目惚れだったかもしれませんわよ」
一目惚れ……かぁ。
もしかして、これが女を選ぶ権利というやつ!?
ジェームス王子殿下は自国に気に入った女性がいないのだろうか?
しかし、それでもアリステル王国の貴族の女性は綺麗で有名。
でも、このままジェームスに気に入られてしまえば、ミハイルとの結婚は遠のくはず。
ミハイル王太子殿下なんかもう懲り懲りだわ。
人生やり直しが利くなら、ジェームス王子殿下についていった方が良いわ!!
「そうですわよね。だって、ミハイル王太子殿下についていったら、また処刑されてしまいますからね」
今回は運良くミハイルと出会う前に戻れたけれど、今度ばかりは次が無いような気がしていた。
そう。処刑されたらそこでおしまい。
人生は完全に終わる。
今はやり直しのチャンスがある。
しかも、舞踏会でミハイルと踊らずにジェームスと踊った事によって人生が変わるかもしれないのだ。
可哀想なマドレーヌ。
王太子妃になったは良いものの、ミハイルの不貞によってあらぬ罪を着せられ処刑される。
私は王妃殿下のワインに毒なんか入れていないわ!!
犯人は誰であれ、でっち上げは余りにも酷すぎる。
理不尽な処刑。
嫌なら嫌だって言ってくれれば良いのに、何も王妃殿下暗殺を企てていたなんてあんまりよ!!
確かに王妃殿下とは仲違いしていたわ。
だけど、殺すなんて考えてもみなかった。
「私ね、本当に王妃殿下を殺害しようなんてしていなかったわ」
「わかります。マドレーヌ様が人を殺すようには見えません」
「100歩譲って私は王妃殿下と仲違いしていたわ。でも、暗殺なんて考えてもみなかった」
「そうですよね。わかりますわ」
「私は王妃殿下とは仲違いしていたわ。でも、エリザベス王女とは仲良しだったもの。王室を滅茶苦茶にするような事なんて考えていなかったわ」
「私はマドレーヌ様を信じます。でも、これは明らかに人生のやり直し。分岐点は過ぎたのです」
そうそう。その通り。
「私はジェームス王子殿下についていくわ」
「そうですわね。私はマドレーヌ様が命を落としてしまうなんて考えたくもありません」
そう。シャーロットも悲しませないために。
恐らくあの世界では私の遺体はアルサ公爵に送られたかもしれない。
王妃殺害の容疑をかけられたのだから、王家の墓に入れるはずはない。
すると、やはりシャーロットを悲しませていたのかもしれない。
それを思うと涙が出る。
でも、私は何がどうなってこうなったのかわからないけれど、人生にやり直しが利くなら、もうミハイル王太子殿下とは関わりたくない。
王室とも関わりたくない。
「ねぇ、もう私、シャーロットや家族を悲しませたくないわ」
「はい。マドレーヌ様」
私が処刑されたとなれば、お父様は王室から解雇される……。
すると、アルサ家はどうなってしまうのだろう?
お父様にも迷惑をかけることになるわ。
職を失ったお父様はどうなってしまうのだろう?
新しく仕事を探さなければならない……。
すると、聖女だった母がまた職場復帰をしなければならない事態になる……。
そうなると、弟のフィルはどうなってしまうの?
フィルも裁判官を目指して勉強している……。
フィルは無事に裁判官になる事ができるのだろうか?
けれど、王室に泥を塗った事になっているから、王室に仕える事はできない……。
フィルはお父様の後継になる予定。
「ねぇ、シャーロット」
「はい、マドレーヌ様」
「このままだとお父様は職を失ってしまう……それにフィルも裁判官を諦めなければならなくなる」
「では、もうジェームス王子殿下についていく、の一択ですわね」
勿論、そうなる。
マドレーヌは便箋と筆を取り出し、ジェームスに手紙を書いた。
『親愛なるジェームス王子殿下 お便りありがとうございました。お言葉に甘えて王宮へ伺わせて頂きます。 マドレーヌ』
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