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デート

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アントニーナはアレッサンドロとデートの約束をした。

「やあ、アントニーナ。お待たせしたなぁ」

アレッサンドロが頭を掻きながらやってきた。

「王太子殿下。こんにちは。お世話になります」

「なあに、そんなに畏まる必要なんかないよ。気楽に行こう」と言って続けた。

「お城の中庭で散歩でもしないか?」

「いいですよ」

アントニーナはあっさりOKをした。






城内に入り、中庭へと抜けた。

中庭はここぞとばかりに広かった。

沢山の木や花が植えられている。

散歩コースになるような道も整えられている。

中央にはベンチがあった。




「アントニーナに聞きたい事があるんだ」

「何ですか?」

「どうしてオイフィーアに来たんだ?」

「それは……聖女になるため、です」

すると、アレッサンドロは微笑んだ。


「なんだ。そんな事だったんだ」

そんな事?

「え!? 何かあるんですか?」

そう言えば、聖女の募集は王室からの求人だった。

「お安い御用。賢者になる事は難しいけど、聖女にならシレンをパスにしてもいいよ」

にわかには信じられなかった。

「なぜシレンをパスにできるのですか?」

「なあに。僕が見込んだんだ。きみなら聖女は務まる。僕から騎士団長に伝えておくよ」

「え!? でも」

そして、アレッサンドロはシレンの内容を教えてくれた。


シレンは魔法部門と騎士部門に分かれるという。


魔法部門では、山の至るところに仕掛けがしてあり、その仕掛けを魔法で破るというものらしい。


一方騎士部門は武器でその壁を乗り越えるという。


しかも、そのシレンは途中で辞める事もでき、無事に終わった人は数少ないらしい。


しかしながら、王太子の見込んだ人だけが、シレンをパスする事ができるらしい。


「王太子殿下、本当に良いのですか?」

「なあに。大丈夫だよ。賢者になるには厳しいサバイバルバトルが必須になるけど、聖女になる分には僕の一存で通るんだよ。そういうシステムだからさ」

と言って王太子はウインクした。


しかし、アントニーナは魔法が優秀では無かった。それが何よりものコンプレックスだった。


「あの。王太子殿下」

アントニーナは怖ず怖ずと聞いてみた。

「私……魔法そんな優秀ではないんです。それなのにシレンパスなんて良いのですか?」

しかし、王太子は笑顔を崩さない。


「なあに。そんなの大した事はないさ。だって、聖女への門戸はひろいんだからね」と言って続けた。「賢者になると言ったら話は別だけどね」

そういう事か、とアントニーナは思った。

せっかく免除にしてくれるというのたがら、お言葉に甘えてしまえ!


「王太子殿下。宜しくお願いしますわ」

「任せておきなさい」




そして、中庭を歩く二人。

途中に猫が通りかかった。

「あれ? 猫飼っているんですか?」

「ああ。保護猫なんだ。街中で捨てられてたから拾ってきたんだ」

「チャンミン」

と言うと猫は王太子の懐に飛び込んだ。

「チャンミンは僕がつけた名前なんだ」

そう言って猫を降ろした。


「あの日は凄い雨でね、その中に親とはぐれた猫がいたんだよ。それを僕が不憫に思い、連れてきてしまったんだ」

王太子ってやさしい! と思った。


そして歩くことベンチがあった。

ベンチの周りには色とりどりのバラが植えられている。

「お座り」

「ええ、ありがとうございます」

促されるまま、ベンチに座った。


「僕たち、不思議な出会いだね」

「そう……ですね」

確かに不思議な出会いだ。

お茶会で偶然にも知り合えたのだから。


「母国で革命があった事をどう思うかい?」

「そうねぇ。あの王族は確かに虚飾が激しくて贅沢三昧していたと思います」

「隣の国はさらに王太子に王太子妃まで囚われたと言うではないか。隣の国の王太子というのも恐ろしい人間だったのか?」

ドキっとした。

なんせその王太子に婚約破棄されたのだから。

何と説明すれば良いのか一瞬迷ってしまった。



「確かに虚飾の激しい人でした。宝飾品を沢山持っていたようでした」

あえて伝聞調で答える事にした。


「そうか。それなら国民の怒りを買って当然だな」と言って王太子は続けた。

「ジョルジョ6世になってから急に税金が上がったと」

「それからサラボナへの移住が増えたんですね?」

「そうなんだ」

税金の事はそういうことになっていたのか。

アントニーナは貴族だから、税金の話などあまり意識していなかった。


「あ。そんな話よりももっと楽しい話を聞こうね」

と王太子は急にご機嫌になった。


「まず、家族を聞いていなかったね」

「はい。家族は父と母と弟と妹の四人です。他にも側室の腹違いの兄弟もいるみたいですけど、接点がありません」

事実、側室のきょうだいとは一度も会った事が無かった。


「じゃあ僕も紹介するね。僕は父王と母王妃。弟二人に妹一人だ。僕も側室の腹違いの兄弟はいるけれど、一応重役についているから、接触はあるな」

お互い腹違いのきょうだいがいるという意味では共通している。


「なんか……アントニーナ。きみと話していると飽きないよ。またデートしないかい?」

アントニーナも王太子と一緒にいて楽しかった。

「ええ、いいわ」


「でも、最後に……」

「最後に?」

「手を握らせて」

アントニーナは王太子に手を差し出した。

王太子はきつく握ってきた。

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