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婚約破棄
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エレオノーレはサウルの部屋に呼び出された。
何でも、大切な話があるというのだ。
エレオノーレはサウルと婚約していた。
サウルはグラントラル王国の王太子。
王位継承権第一位だ。
一応、姉のカタリーナがいるが、グラントラルは男系男子にのみ王位継承権が与えられる。
これは建国以来の伝統なので、変えることはできない。
勿論、例外も無い。
サウルは一体、何の用件なのだろうか?
トントン。
執務室をノックした。
「あいよ!!」
中から甘ったるい声がする。
と、そこで我が目を疑う光景を目にする。
肩まである金髪にうぐいす色の瞳。鷲鼻に尖った耳。彼が王太子のサウルだ。
そして。その横にはオレンジ色の髪に赤い瞳。
サウルはなんと、ジブラルタル伯爵令嬢のヴィルジニアと一緒にいるのだ。
どういう風の吹き回しなのだろう?
問い詰める必要がある。
「王太子殿下。なぜヴィルジニアと一緒にいるんですの? わたくしたち、婚約したではありませんか」
サウルはほくそ笑んでいた。
「わはははは。今頃気づいたか」
いや、今頃気づいたか……ではない。
確かに今まで怪しいことはあった。
サウルはヴィルジニアを度々王宮に招き入れていたことは近衛騎士から聞いていた。
「やはり」というのが正直な答えだった。
「薄々気づいてきましたわ。王太子殿下がちょくちょくヴィルジニアを王宮に招いたことを近衛騎士の口から聞きましたので」
「ふっ。そうか」
「でも……」エレオノーレは婚約指輪をこれみよがしにサウルとヴィルジニアに見せつけた。
すると、負けじとしてヴィルジニアも指輪を見せつけてきた。
「どういうことなんですの?」
「お前に嫌気が差してきたんだ」
と言ってサウルは立ち上がった。そして続けた。
「貴様。会う度に太ってきているな。丸々じゃないか。どうしたら、そんな豚みたいに太るんだ?」
『豚』を強く発言してきた。
「そうね。豚みたいね」
その言葉が心に刺さった。
ヴィルジニアとは親友。
学園時代の3人仲良しグループの1人だった。
裏切り……。
「ヴィルジニア」
「なあに? 豚さん」
もはや豚呼ばわり。
「豚はないでしょ? それはともかくも、私達、親友じゃない。それに、私が王太子殿下と婚約したとき、お祝いの言葉をくれたじゃない。それは真意ではなかったの?」
「もう遅いわ、エレオノーレ。私達はもう親友ではないわ。私は人間の友達を持っているの。豚という畜生の友達を持った覚えはないわ」
「なっ……」
「そういうことだ!! わかったか!!」
部屋中に声が響き渡った。
「知りませんわ!」
「知らねえじゃねえ!!」
これ以上一緒にいても不毛な言い争いをするだけ。
(逃げた方が賢明かも?)
エレオノーレは一歩後ずさった。
「良いですわ、王太子殿下。婚約は破棄いたしましょう。でも、先人の御金言がありますわ。『因果応報』という言葉が。せいぜいその通りにならないよう、お祈りしていますわ」
そう吐き捨て、執務室を出た。
悔しかった。
婚約は破棄され、親友に裏切られ。
何より……ダイエットしても痩せないこの体質が憎かった。
何でも、大切な話があるというのだ。
エレオノーレはサウルと婚約していた。
サウルはグラントラル王国の王太子。
王位継承権第一位だ。
一応、姉のカタリーナがいるが、グラントラルは男系男子にのみ王位継承権が与えられる。
これは建国以来の伝統なので、変えることはできない。
勿論、例外も無い。
サウルは一体、何の用件なのだろうか?
トントン。
執務室をノックした。
「あいよ!!」
中から甘ったるい声がする。
と、そこで我が目を疑う光景を目にする。
肩まである金髪にうぐいす色の瞳。鷲鼻に尖った耳。彼が王太子のサウルだ。
そして。その横にはオレンジ色の髪に赤い瞳。
サウルはなんと、ジブラルタル伯爵令嬢のヴィルジニアと一緒にいるのだ。
どういう風の吹き回しなのだろう?
問い詰める必要がある。
「王太子殿下。なぜヴィルジニアと一緒にいるんですの? わたくしたち、婚約したではありませんか」
サウルはほくそ笑んでいた。
「わはははは。今頃気づいたか」
いや、今頃気づいたか……ではない。
確かに今まで怪しいことはあった。
サウルはヴィルジニアを度々王宮に招き入れていたことは近衛騎士から聞いていた。
「やはり」というのが正直な答えだった。
「薄々気づいてきましたわ。王太子殿下がちょくちょくヴィルジニアを王宮に招いたことを近衛騎士の口から聞きましたので」
「ふっ。そうか」
「でも……」エレオノーレは婚約指輪をこれみよがしにサウルとヴィルジニアに見せつけた。
すると、負けじとしてヴィルジニアも指輪を見せつけてきた。
「どういうことなんですの?」
「お前に嫌気が差してきたんだ」
と言ってサウルは立ち上がった。そして続けた。
「貴様。会う度に太ってきているな。丸々じゃないか。どうしたら、そんな豚みたいに太るんだ?」
『豚』を強く発言してきた。
「そうね。豚みたいね」
その言葉が心に刺さった。
ヴィルジニアとは親友。
学園時代の3人仲良しグループの1人だった。
裏切り……。
「ヴィルジニア」
「なあに? 豚さん」
もはや豚呼ばわり。
「豚はないでしょ? それはともかくも、私達、親友じゃない。それに、私が王太子殿下と婚約したとき、お祝いの言葉をくれたじゃない。それは真意ではなかったの?」
「もう遅いわ、エレオノーレ。私達はもう親友ではないわ。私は人間の友達を持っているの。豚という畜生の友達を持った覚えはないわ」
「なっ……」
「そういうことだ!! わかったか!!」
部屋中に声が響き渡った。
「知りませんわ!」
「知らねえじゃねえ!!」
これ以上一緒にいても不毛な言い争いをするだけ。
(逃げた方が賢明かも?)
エレオノーレは一歩後ずさった。
「良いですわ、王太子殿下。婚約は破棄いたしましょう。でも、先人の御金言がありますわ。『因果応報』という言葉が。せいぜいその通りにならないよう、お祈りしていますわ」
そう吐き捨て、執務室を出た。
悔しかった。
婚約は破棄され、親友に裏切られ。
何より……ダイエットしても痩せないこの体質が憎かった。
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