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ざまあなエピソード ※エイドリアン視点

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エイドリアンはシェリーにキスをした。

「エイドリアン様。私はエイドリアン様しかいませんわ」


二人は永遠の愛としあわせを約束した。


しかし……。



「エイドリアン様、大変です」

「なっ……何だよバロン」

「なんと! ゴンザレス公爵より財産没収と追放が言い渡されています」

「何!?」


「エイドリアン様。昨晩酒場で殴り合いの喧嘩をしましたね?」

「記憶に無いな」

「そうなんです。エイドリアン様が殴ったのはこの国の宰相の二男なのです」

「だから、記憶に無いって。今すぐ撤回を頼む」


「エイドリアン様、昨日は酒場にいたのです?」

「酒場に行ったのは確かだ。しかし、殴った覚えはないな」

しかし、二日酔いしているのは確かだ。


(俺は記憶を失うほど飲んでいたのか。そうだな。帰路を覚えていないのだからな)

殴った。

頭のストッパーが外れたのだろう。


(しかし、俺は余程の事が無い限り手をあげない)

「とにかく、ゴンザレス公爵の元へ」


「ああ、わかった」


エイドリアンはゴンザレス公爵の元へと向かった。

嵌められているのかもしれない。


もしかしたら、ハーマイオニー関係の人間の仕業かもしれない。

今頃復讐か。

(俺様も恨まれたものだな)


エイドリアンは応接間へと向かった。


トントン

「失礼します」

エイドリアンは応接間の中へと入った。

臭い。


目の前でゴンザレス公爵がパイプをふかしている。


「父上。参りました」

「エイドリアン。来たか」





「この馬鹿者!! 昨晩酒場で何をやらかした?」

「記憶にございません」

「記憶に無い? ふざけるな!!」

ふざけるも何もない。

清廉潔白だ。


「私は潔白ですよ、父上」

「何が潔白だ。酒場でアドルフを殴ったそうではないか」

「殴ってなんかいません! 余程でも無い限り、人を殴るなど非道な行いは……」

「黙れ!」ゴンザレス公爵が遮った。

「アドルフは骨折をしたそうだ。人を怪我させるなど言語道断だ。貴族としてはあるまじき行為なのだぞ!! 恥ずかしい。お前はゴンザレス家の恥。出ていってもらおう」

「そっ……そんな」






★☆★☆







酒場での記憶を思い出せぬまま、エイドリアンはシェリーと共に馬車で貧民の街とも知られるバナンまで送られた。

バナンのスラム街だ。


「よりによって治安の悪いところに送られたな」

二人は馬車を降りた。

御者は無言で去っていった。


「くそっ。シェリー、すまない。お前まで巻き込んで」

「いやですわ。こうなるなんて想定外でしたわ」

「シェリー。今夜は野宿だ。食べ物にありつけるかもわからない」

「何でこうなるの?」
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