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幼少期
5歳
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日は巡りリリアは5歳になった。
一般的な5歳児よりは遅いものの、家の中でなら歩けるまでに成長した。
それでも少しの短い時間だけだったが、家族からしたら大きな一歩だったのは言うまでもない。
「リリア今日は調子が良いみたいだね」
「ええ、お兄様このまま続けば良いのだけど」
「少しずつで良いのよリリア」
「分かってますお母様」
「久しぶりに家族が揃ったのだから食事にしよう。準備してくれ」
「失礼いたします」
続々とテーブルに食事が並んでいった。
ベットで過ごすことの多いリリアと家族にとって家族での食事は大切なものだった。
そしてリリアの体調を考えて今日まで先延ばしになっていた王家の方たちの訪問が近づいてきた。
王家の紋章のついた馬車が家の前にとまった。家族皆で迎えた。
「ようこそいらっしゃいました」
「ご苦労」
「ありがとう。あなたがリリアね」
「はい、私がリリアです。本日はお越しくださいましてありがとうございます」
「まぁ、礼儀正しい可愛い子ね」
「恐れ入ります」
王子たちは王と王妃に続いて馬車から降り、リリアを見て固まっていた。
「「……可愛すぎる」」
ぼそりと言った王子たちの声に王妃は目を開いてあらあらとこぼした。王子たちは王族としての教育が関係しているのか周りにあまり興味を持たない良く言えば落ち着いた、変に大人びた子供だったのだ。久しぶりにみた子供たちのその顔に王妃は
「リリアは誰のお嫁さんになるのかしら?」と満面の笑みで質問した。
!!!!!王子たちはアルバートの方を一斉に見た。
「王妃様まだ決めておりません。体調もまだ芳しくなく、元気になってからと考えております」
「そう……。ふふ、でもまだチャンスはあるわね」
「「母上!」」
王子たちの目が輝いていた。王妃はリリアならばとアルバートに話を進める。
「お、王妃様何を?お父様?」
リリアは困り果ててあたふたしている。家から出たことがなく、免疫のない同年代の男の人、それだけで一杯なのに話がどんどん進んでしまっていたから…。
「まぁ、可愛いわね。ふふふ。リリア安心してこの子たちは良い子よ」
「え、いや、そういうことでは」
許容範囲を超えそうなリリアに救いの手を差し伸べるようにラレルがそろそろ家に入らないかと提案してくれた。
「あぁ、そうだな。リリアすまなかったな」
「いえ」
そして、談話室に場所を移し、再度話し始めたが、リリアの体力は限界。椅子で少しぐったりしているリリアにラレルが心配して声をかけた。
「大丈夫か?」
「申し訳ございません。お兄様……」王家の前で倒れるような失態は犯したくなかったので救いとばかりに部屋に戻りたいと伝える。ラレルはすぐに動いてくれる。
「お父様、リリアが限界のようです。私が部屋に送ってきます」
「!!気づいてやれずすまなかった」
「いえ、王家の皆様お先に失礼いたします」
「いこうか」
「はい」
リリアとラレルは退出していった。無事に部屋に戻ったことを確認して部屋に残った人たちはリリアの話を続ける。
「リリアは相変わらずか?」
「そうだな。少しづつ良くはなっているようだが……」その顔は暗い。
「そうか……」しんみりとした空気を打ち消すようにアルバートは12歳が楽しみなのだと続ける。12歳は重要な意味のある年齢で、ステータスが授けられる歳だ。
「きっと、理由があるはずだ。今の状態の理由が……」
それはアルバートの希望でもあった。あの子を神は絶対見捨てない…。
そしてラレルが戻ってきたタイミングで話が切り替わった。リリアの周りの状況について。
「「アルバート!」」
王子たちは同時に声をあげた。これを機にリリアともっと仲良くなりたかったのだ。
「「この家に度々訪ねることを許してくれ」」
切実な頼みと、リリアのためを想いアルバートは許可することにした。同年代との関わりはリリアにとってもよい刺激となるだろうと。
「これでまた何か変わると良い……」それは思わずでた誰の耳にも入らない本音。
アルバートはどんどん盛り上がる王妃たちの会話についていけなくなって「あの、フェリア?」
「何ですか?リリア次第でしょう?ふふふ」
アルバートは少し後悔した。可愛いリリアが誰かに取られるかも知れないと不安になったのだ。
「アル、いつかは来ることよ。それにリリアにとっても良いことだわ」
「そうだよな、そうなんだよな……」
どこの時代も女性は強かった。王妃とマリアの話は驚くほど弾み、進んでいく。
蚊帳の外に出された王と、アルバートは苦笑いを浮かべていた。
「リリアが嫁にきてくれたらこっちは嬉しいがな」
「やめてくれ、まだその気にはなれない」
「まぁ、考えといてくれ。王妃たちもその気だしな」
思わぬ発展にため息が溢れる。
時間は一瞬で過ぎていき、城に帰る時間になった。見送りには失礼にならないようにリリアも出てきた。
「またいらしてくださいね」
「「絶対くる!待っていてくれ」」
「ふふ、はい」
食い気味の王子2人に思わず笑顔が溢れる。その笑顔に王子たちはますます惹かれていった。
「今日は有意義な時間だった」
「本日はお越しくださいましてありがとうございました」
「それでは。あと、………考えといてくれ」
「うぅ。………時間があったらな」
王家の方々を見送って家族は家に入った。
「今日は楽しかったです。初めて同年代の方とお話しましたわ」
「それは、良かった」
「疲れただろ、もう休みなさい」
「はい、失礼いたします」
「ああ」
「リリア、しっかり休むのよ」
「分かってますわ、お母様」
「お兄様もおやすみなさい」
「おやすみリリア」
願わくば夜だけでも一時の安らぎを……。
一般的な5歳児よりは遅いものの、家の中でなら歩けるまでに成長した。
それでも少しの短い時間だけだったが、家族からしたら大きな一歩だったのは言うまでもない。
「リリア今日は調子が良いみたいだね」
「ええ、お兄様このまま続けば良いのだけど」
「少しずつで良いのよリリア」
「分かってますお母様」
「久しぶりに家族が揃ったのだから食事にしよう。準備してくれ」
「失礼いたします」
続々とテーブルに食事が並んでいった。
ベットで過ごすことの多いリリアと家族にとって家族での食事は大切なものだった。
そしてリリアの体調を考えて今日まで先延ばしになっていた王家の方たちの訪問が近づいてきた。
王家の紋章のついた馬車が家の前にとまった。家族皆で迎えた。
「ようこそいらっしゃいました」
「ご苦労」
「ありがとう。あなたがリリアね」
「はい、私がリリアです。本日はお越しくださいましてありがとうございます」
「まぁ、礼儀正しい可愛い子ね」
「恐れ入ります」
王子たちは王と王妃に続いて馬車から降り、リリアを見て固まっていた。
「「……可愛すぎる」」
ぼそりと言った王子たちの声に王妃は目を開いてあらあらとこぼした。王子たちは王族としての教育が関係しているのか周りにあまり興味を持たない良く言えば落ち着いた、変に大人びた子供だったのだ。久しぶりにみた子供たちのその顔に王妃は
「リリアは誰のお嫁さんになるのかしら?」と満面の笑みで質問した。
!!!!!王子たちはアルバートの方を一斉に見た。
「王妃様まだ決めておりません。体調もまだ芳しくなく、元気になってからと考えております」
「そう……。ふふ、でもまだチャンスはあるわね」
「「母上!」」
王子たちの目が輝いていた。王妃はリリアならばとアルバートに話を進める。
「お、王妃様何を?お父様?」
リリアは困り果ててあたふたしている。家から出たことがなく、免疫のない同年代の男の人、それだけで一杯なのに話がどんどん進んでしまっていたから…。
「まぁ、可愛いわね。ふふふ。リリア安心してこの子たちは良い子よ」
「え、いや、そういうことでは」
許容範囲を超えそうなリリアに救いの手を差し伸べるようにラレルがそろそろ家に入らないかと提案してくれた。
「あぁ、そうだな。リリアすまなかったな」
「いえ」
そして、談話室に場所を移し、再度話し始めたが、リリアの体力は限界。椅子で少しぐったりしているリリアにラレルが心配して声をかけた。
「大丈夫か?」
「申し訳ございません。お兄様……」王家の前で倒れるような失態は犯したくなかったので救いとばかりに部屋に戻りたいと伝える。ラレルはすぐに動いてくれる。
「お父様、リリアが限界のようです。私が部屋に送ってきます」
「!!気づいてやれずすまなかった」
「いえ、王家の皆様お先に失礼いたします」
「いこうか」
「はい」
リリアとラレルは退出していった。無事に部屋に戻ったことを確認して部屋に残った人たちはリリアの話を続ける。
「リリアは相変わらずか?」
「そうだな。少しづつ良くはなっているようだが……」その顔は暗い。
「そうか……」しんみりとした空気を打ち消すようにアルバートは12歳が楽しみなのだと続ける。12歳は重要な意味のある年齢で、ステータスが授けられる歳だ。
「きっと、理由があるはずだ。今の状態の理由が……」
それはアルバートの希望でもあった。あの子を神は絶対見捨てない…。
そしてラレルが戻ってきたタイミングで話が切り替わった。リリアの周りの状況について。
「「アルバート!」」
王子たちは同時に声をあげた。これを機にリリアともっと仲良くなりたかったのだ。
「「この家に度々訪ねることを許してくれ」」
切実な頼みと、リリアのためを想いアルバートは許可することにした。同年代との関わりはリリアにとってもよい刺激となるだろうと。
「これでまた何か変わると良い……」それは思わずでた誰の耳にも入らない本音。
アルバートはどんどん盛り上がる王妃たちの会話についていけなくなって「あの、フェリア?」
「何ですか?リリア次第でしょう?ふふふ」
アルバートは少し後悔した。可愛いリリアが誰かに取られるかも知れないと不安になったのだ。
「アル、いつかは来ることよ。それにリリアにとっても良いことだわ」
「そうだよな、そうなんだよな……」
どこの時代も女性は強かった。王妃とマリアの話は驚くほど弾み、進んでいく。
蚊帳の外に出された王と、アルバートは苦笑いを浮かべていた。
「リリアが嫁にきてくれたらこっちは嬉しいがな」
「やめてくれ、まだその気にはなれない」
「まぁ、考えといてくれ。王妃たちもその気だしな」
思わぬ発展にため息が溢れる。
時間は一瞬で過ぎていき、城に帰る時間になった。見送りには失礼にならないようにリリアも出てきた。
「またいらしてくださいね」
「「絶対くる!待っていてくれ」」
「ふふ、はい」
食い気味の王子2人に思わず笑顔が溢れる。その笑顔に王子たちはますます惹かれていった。
「今日は有意義な時間だった」
「本日はお越しくださいましてありがとうございました」
「それでは。あと、………考えといてくれ」
「うぅ。………時間があったらな」
王家の方々を見送って家族は家に入った。
「今日は楽しかったです。初めて同年代の方とお話しましたわ」
「それは、良かった」
「疲れただろ、もう休みなさい」
「はい、失礼いたします」
「ああ」
「リリア、しっかり休むのよ」
「分かってますわ、お母様」
「お兄様もおやすみなさい」
「おやすみリリア」
願わくば夜だけでも一時の安らぎを……。
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