Only yours

7.

「おいし～！たまきってばいつの間にこんないいお店見つけてたの～！？店も料理もおしゃれでかわいくて、気分上がる！またこよっ、ねっ、たまき！」
「おじょうさん、顔にお弁当付いてますよ」
「これはお土産です。タッパー持ってこなかったんでこれで持ち帰ります」

　正面にはチョコレートケーキを頬張るめぐみ。右にはめぐみを微笑ましく見つめるすぐる。
　大学の課題が一山越え、気晴らしにみんな大好きおしゃれカフェに足を運んだ先の光景は、由良の脳を右脳と左脳に真っ二つにされるようなものだった。なぜかというと。

「飯沼さんって由良と仲がいいんだね。やけるなぁ」

　由良の左、すぐるの正面に例の男がいるからだ。男の一言にめぐみが当たり前だと言わんばかりに顔を歪めた。

「長あーい付き合いがあるからね。あたしとたまきは一番の仲良しなの。ね、たまき、お兄」
「へぇ」

　じっとりと由良を見つめる男の視線は、夢で見たあの好奇と蔑みの混じったものによく似ていた。片側から汚泥を浴びているような気分だ。ケーキがいくら美味しくても、長居なんてしたくない。
　なによりも、すぐるが課題を手伝ってもらったとしても、なぜこの場に呼んだのか由良は理解できないでいた。