異世界探訪記

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本の中の記憶

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 趣味は読書だった。本と名の付くものなら何でも良いから読みたいと思うほどに。その中でも現代ファンタジーと呼ばれるジャンルが好みだったのだけど、それは本題からずれてしまうので置いておこう。

 兎にも角にも、私は本が好きなのだ。だから、この世界に来て図書館都市と呼ばれる街がある事を聞いた時、胸が高鳴ってしまったのは仕方のない事なのだろう。其処に向こうの世界の本が無いのは残念だけど、代わりになる本があるのだから。
 だから、この世界に慣れてきて真っ先に向かったのが其処だった。けれど、当時の私は大事な事を失念していた。私がこの世界の文字を読めないのだという事を。



 再びこの地に来たのは、私が漸くこの世界の文字を読める様になってきてからだ。その間、この図書館都市の事は常に気に留めていた。だから、此処が当初の想像以上に凄い場所なのだと理解している。
 この図書館都市は二万年以上も前に作られて、それからずっと世界中の本を集め続けているのだという。其処にはあらゆる種族、あらゆる時代の本が詰め込まれている。そして、其処を管理している者は、作られた当初からずっと居て蔵書の全て把握していると言われていた。もし仮に、それが真実なのだとしたら、この広大な都市中に広がる無数の本がその管理者のものだというのも頷けた。
 けれど、流石にこの広い都市中の本を把握しているという事は無いのだろう。そんな風に思っていた。

 この世界には長命種だけでなく、不死の術を会得した者も居るのだと聞いていた。その一人がこの図書館都市の管理者たる彼女なのだという。〝魔女〟と呼ばれる彼女は、記憶の一部を本にして収納する事が出来るらしい。
 だからあらゆる本の内容を記憶して、記憶を本に変え保管しているそうだ。彼女の記憶の本を集めた区画も存在するのだという。私はそれを聞き、その行為に意味があるのか疑問に思ったものだけど、それをする為に図書館都市が維持されているのならばきっと意味はあるのだろう。



 図書館都市から出たのは、入ってから半月は経っていた。本は時間を忘れさせる魅力があるのだと思う。特に面白いと思ったのは管理者の記憶が本になったもので、不思議と惹きつけられてしまった。
 だから、ふと私の記憶も本にしたら面白いのでは? なんて考えてしまったのだろう。数日分の私の記憶は、本の形となって私の手に収まっていた。
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