上 下
107 / 119
中級冒険者の章

第102話 想定外

しおりを挟む

 ギルとウサ吉に別れを告げたボクは、この街のトップであるシンシア様との面談の場へと足を運んだ。この古代エルフの街の仕来たりルールのため、新参者のボクは挨拶をしないとダメらしいのです。ギルのお陰で次回もこの街からスタート出来るし、街のトップと顔見知りになっておくのは悪い事じゃないだろう。

 立派なドアを入ると、そこには偉そうなちっこい褐色ロリエルフがボクを待ち構えていた。ギルの話だと床に臥せているって話だけど違ったのだろうか。

 でもまあ、そんな事よりも気になる事があるんだけどね。

「えっと、突然の事で混乱してるんですけど……ビアンカちゃんがどうしてここに居るんですか?」

「きゃはっ、ビアンカちゃん捕まっちゃったの。おにーちゃん助けてー」

 捕まったのに危機感が無いビアンカちゃんは全然困っているように見えなかった。むしろ楽しんでいるような……?

 ビアンカちゃんをよく見ると、いつものゴスロリドレスの上から樹木が絡みついて拘束されている。おっぱいがムギュっとなってエッチです。フローリングからニョキニョキと生える樹木、あれはシンシア様の魔法だろうか。

「にょほほほ、誰か知らぬが良いところに来たの。ちょうどこれからビアンカに罰を与えるところなのじゃ。お主も見て行くと良いぞ」

「罰ですか? ビアンカちゃんはちょっとワガママなところがありますけど悪い子じゃないんです。そんな拘束するなんて可哀想です。一体どんな悪い事をしたんですか?」

 ビアンカちゃんはサキュバスクイーンという生まれながらにして上位種族であり絶対強者である。欲しいモノは必ず手に入れるポリシーは譲れないと言っていたのを思い出した。一緒にお買い物に行った時も金に糸目を付けぬ豪胆なお買い物でしたよ。片っ端から買って行く感じです。

 でも根は優しい女の子なのだ。きっとシンシア様のお気に入りのプリンを食べちゃったとかそんな感じだろう。

「此奴はな、妾が初めて作った幸せの薬を盗んだのじゃ! 嫌がる妾を強引に押し倒し、縛り付け、見せつけるように奪って行きおった!」

「…………なるほど、これが自業自得ってやつですね!」

「ちょっ、おにーちゃん納得しちゃダメだよー! 盗んだんじゃなくてちょっと借りただけだし、冤罪だよぉ。愛しのビアンカちゃんをたーすーけーてー」

 ギルの言っていた犯人がボクの知人でした。というか身内です。まさかビアンカちゃんが盗みを働くなんて……。

 冤罪だと言いながらジタバタと暴れるビアンカちゃんにジロリと視線を向けるが、当の本人は反省した感じが見られなかった。

「てへっ。ギルドにいる夏子ちゃんと取引して幸せの薬が必要になったから借りちゃったの。盗んだんじゃなくて借りただけだよ? それにおにーちゃんはビアンカちゃんの事を責められないでしょ。だってルナのところからいっぱい盗んだじゃん? ほら、おにーちゃんの方が悪い事してるよね~」

「えぇぇぇ、ボクのは不可抗力だから違うんです。一緒にしないで下さい」

 こんなところで夏子さんの名前が出るなんて思ってもみなかった。そう言えば時魔法という名のおっぱいマッサージをしなくなってしばらくした日、夏子さんがピチピチのJKに若返っていたのを思い出した。若返りにあれだけ情熱を注いでいたのにどうしたのだろうと思っていたが、ビアンカちゃんが盗んだ幸せの薬で若返ったのか!

 つまり幸せの薬とは若返り薬って事か。シオンちゃんも若返りを狙っているのか……?

 ソファーから立ち上がったシンシア様がビアンカちゃんに近づいた。

「どうじゃビアンカ、罪を認めて反省する気になったかの?」

「はぁ~? このビアンカちゃんが反省なんてする訳ないでしょ。それよりもシンシア、私の事はビアンカでしょ? 先代ならまだしも、下の毛も生えてないようなお子ちゃまに呼び捨てにされる覚えはないわよ」

「ぐぬぬ……口が減らない女なのじゃ。それに妾はお子ちゃまなのではない、パイ〇ンなのじゃ!!」

 この褐色ロリっ子エルフはツルツルですか!?

「あはっ、そうだったの? 見た目もちっこいし、てっきりお子ちゃまなのかと思った~。でもまあ処女なんだしお子ちゃまなのは変わらないよね。あははっ」

「それを言うならビアンカなんて妾が生まれるずっと前から処女であろう。既に膜が硬くなり過ぎて貫通出来ぬかもしれんな! にょほほほ」

 どうやらシンシア様とビアンカちゃんは旧知の仲のようだ。ロリっ子同士が仲良くキャッキャウフフと戯れている姿はホッコリしますね。ここにルナ様が居たらロリっ子三人組のアイドルユニットが組めそうだ。U149っていうアイドルグループ結成しましょうか。身長149cm以下のロリロリアイドルです。

 そんなアホな事を考えていたら何故かこっちに火種が飛んできた。

「残念でした~! ビアンカちゃんの処女はそこにいるおにーちゃんに美味しく食べられちゃいました♡」

「な、なんじゃと……!? 永遠の処女と言われたビアンカが……? しかもこんなアホっぽい男にだと……?」

 シンシア様がボクの顔を見て『ば、バカな……!?』っていう感じで驚いていた。ちょっと驚き過ぎな気がする。そりゃあちょっとだけ背が低いかもしれないけど、女性をアンアンさせる立派な愛棒さんを標準装備してますからね。男の魅力は身長だけじゃないのです。

「えー、おにーちゃんはアホじゃなくて可愛い男の子だよ。それにカッコイイところだってあるんだからね。このサキュバスクイーンのビアンカちゃんが認めた唯一の男の子、それがこのおにーちゃんだよっ!」

「えへへ、照れちゃいますね。ビアンカちゃん大好きですよ」

「きゃはっ、相思相愛だねっ!」

 こんな状況じゃなければイチャラブエッチを開始したいところです。こんな事ならギルに大人の玩具をあげなければ良かったな。

「お主らは状況を理解していないようじゃの……。さて、反省する気の無いビアンカには罰を受けてもらうのじゃ。試しにオークの巣にでも放り込んで楽しい悲鳴でも聞いてみるかの? それとも愛しい男の前で嬲り殺されるのがいいか。にょほほほ、どうじゃ怖かろう!」

「あははっ、シンシア如きがこのビアンカちゃんを罰するっていうの~? 笑っちゃうねっ」

 真剣な顔をしたシンシア様の言葉を受けても平然とするビアンカちゃん。そういえば以前ビアンカちゃんが言っていたな。本体はサキュバスの館に居て、遊びに行くのは魔力で作ったお人形だって。ここでビアンカちゃんが何かされても痛くも痒くもないという事だろうか。




――シンシア様の言うような酷い事をされるビアンカちゃんを想像してしまった。

 いくら魔力で作ったお人形とはいえ、愛する女性が目の前で痛めつけられる姿は見たくなかった。ましてやオークの巣に連れて行かれたビアンカちゃんが本場の種付けプレスをされてしまう姿など絶対にダメだ。ボクがやっても体重が足りないから威力が弱いけど、オークパイセンの一撃を味わったらボクのアイデンティティが無くなっちゃうからね!

 ヘタレなボクだけど、こんな時くらいはカッコ良く漢を見せる時だ!

「待ってください、ビアンカちゃんの罪はボクが償います! ボクが出来る事なら何だってしますので、ビアンカちゃんを許してくださいーっ!」




 ボクはビアンカちゃんの前に飛び出し、シンシア様の顔を見つめながらビシィっと言った。シーンと静まり返るお部屋には、壁掛け時計のカチコチという時を刻む音だけが響いていた。二人とも思わぬ状況に固まってしまったようだ。ふふ、決まったな。愛する女性を守るイケメンにビアンカちゃんはキュンキュンし、シンシア様もボクの漢気にキュンキュンしている事だろう。

 つまりボクのイケメンさに免じて許してもらうハッピーエンドな流れです。めでたしめでたし。




「にょほほ、そこまで言うのなら仕方がないのぅ。お主が身代わりになる事でビアンカの件は水に流すとするのじゃ」

「…………あれぇ?」

 思っていたのと全然違った。ボクに免じて許してやるっていう流れだと思ったのだ。『こんな女のために身を投げ出すなんて心までイケメンか!? ……ビアンカよ、これからは心を入れ替えて生きるのじゃぞ』って言って一件落着じゃないの?

 放心するボクに手を向けるシンシア様が何か呪文を唱えた次の瞬間、床からウニョウニョとツタが生えて来た。そしてボクはビアンカちゃんと同じように立った状態で拘束されてしまったのでした。

「いい格好だのぉ。これからお主を徹底的にイジメてやるのじゃ。ビアンカは大人しくそこでみておるがいい。最愛の男が喘ぐ姿をな! にょほほほほ」

「くっ、シンシアの癖に生意気よ! ……けどね、おにーちゃんをそこら辺の男と一緒にしないでよね。おにーちゃんはね、どんな責めにも屈しないんだからっ!!」

「えええぇぇぇぇ……?」

 どうやら墓穴を掘ってしまったらしい。っていうかボク、何しにここへ来たんだっけ?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

始めのダンジョンをループし続けた俺が、いずれ世界最強へと至るまで~固有スキル「次元転移」のせいでレベルアップのインフレが止まらない~

Rough ranch
ファンタジー
 人生のどん底にいたこの物語の主人公こと清原祥佑。  しかしある日、突然ステータスやスキルの存在するファンタスティックな異世界に召喚されてしまう。  清原は固有スキル「次元転移」というスキルを手に入れ、文字通り世界の何処へでも行ける様になった!  始めに挑んだダンジョンで、地球でのクラスメートに殺されかけたことで、清原は地球での自分の生き方との決別を誓う!  空間を転移して仲間の元へ、世界をループして過去の自分にメッセージを、別の世界線の自分と協力してどんどん最強に!  勇者として召喚された地球のいじめっ子、自分を召喚して洗脳こようとする国王や宰相、世界を統べる管理者達と戦え! 「待ってろよ、世界の何処にお前が居たって、俺が必ず飛んで行くからな!」

分析スキルで美少女たちの恥ずかしい秘密が見えちゃう異世界生活

SenY
ファンタジー
"分析"スキルを持って異世界に転生した主人公は、相手の力量を正確に見極めて勝てる相手にだけ確実に勝つスタイルで短期間に一財を為すことに成功する。 クエスト報酬で豪邸を手に入れたはいいものの一人で暮らすには広すぎると悩んでいた主人公。そんな彼が友人の勧めで奴隷市場を訪れ、記憶喪失の美少女奴隷ルナを購入したことから、物語は動き始める。 これまで危ない敵から逃げたり弱そうな敵をボコるのにばかり"分析"を活用していた主人公が、そのスキルを美少女の恥ずかしい秘密を覗くことにも使い始めるちょっとエッチなハーレム系ラブコメ。

オンラインゲームしてたらいつの間にやら勇者になってました(笑)

こばやん2号
ファンタジー
どこにでもいそうなごくごく平凡な男「小橋 大和(こばし やまと)」が 唯一の趣味と言っていいバーチャルオンラインゲームをプレイしている最中に 突然別の世界に飛ばされてしまう いきなりのことに戸惑う男だったが 異世界転生ものの小説やマンガ・アニメの知識と やりこんできたRPGゲームの経験を活かし その世界で奮闘する大和と その世界で出会った仲間たちとともに 冒険をしていくうちに 気付けば【勇者】として崇められ 魔王討伐に向かわなければならない始末 そんな大和の活躍を描いた ちょっぴり楽しくちょっぴりエッチでちょっぴり愉快な 異世界冒険活劇である

☆男女逆転パラレルワールド

みさお
恋愛
この世界は、ちょっとおかしい。いつのまにか、僕は男女が逆転した世界に来てしまったのだ。 でも今では、だいぶ慣れてきた。スカートだってスースーするのが、気になって仕方なかったのに、今ではズボンより落ち着く。服や下着も、カワイイものに目がいくようになった。 今では、女子の学ランや男子のセーラー服がむしろ自然に感じるようになった。 女子が学ランを着ているとカッコイイし、男子のセーラー服もカワイイ。 可愛いミニスカの男子なんか、同性でも見取れてしまう。 タイトスカートにハイヒール。 この世界での社会人男性の一般的な姿だが、これも最近では違和感を感じなくなってきた。 ミニスカや、ワンピース水着の男性アイドルも、カワイイ。 ドラマ やCM も、カッコイイ女子とカワイイ男子の組み合わせがほとんどだ。 僕は身も心も、この逆転世界になじんでいく・・・

最弱の職業【弱体術師】となった俺は弱いと言う理由でクラスメイトに裏切られ大多数から笑われてしまったのでこの力を使いクラスメイトを見返します!

ルシェ(Twitter名はカイトGT)
ファンタジー
俺は高坂和希。 普通の高校生だ。 ある日ひょんなことから異世界に繋がるゲートが出来て俺はその中に巻き込まれてしまった。 そこで覚醒し得た職業がなんと【弱体術師】とかいう雑魚職だった。 それを見ていた当たり職業を引いた連中にボコボコにされた俺はダンジョンに置いていかれてしまう。 クラスメイト達も全員その当たり職業を引いた連中について行ってしまったので俺は1人で出口を探索するしかなくなった。 しかもその最中にゴブリンに襲われてしまい足を滑らせて地下の奥深くへと落ちてしまうのだった。

異世界帰りの底辺配信者のオッサンが、超人気配信者の美女達を助けたら、セレブ美女たちから大国の諜報機関まであらゆる人々から追われることになる話

kaizi
ファンタジー
※しばらくは毎日(17時)更新します。 ※この小説はカクヨム様、小説家になろう様にも掲載しております。 ※カクヨム週間総合ランキング2位、ジャンル別週間ランキング1位獲得 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 異世界帰りのオッサン冒険者。 二見敬三。 彼は異世界で英雄とまで言われた男であるが、数ヶ月前に現実世界に帰還した。 彼が異世界に行っている間に現実世界にも世界中にダンジョンが出現していた。 彼は、現実世界で生きていくために、ダンジョン配信をはじめるも、その配信は見た目が冴えないオッサンということもあり、全くバズらない。 そんなある日、超人気配信者のS級冒険者パーティを助けたことから、彼の生活は一変する。 S級冒険者の美女たちから迫られて、さらには大国の諜報機関まで彼の存在を危険視する始末……。 オッサンが無自覚に世界中を大騒ぎさせる!?

ダンジョン美食倶楽部

双葉 鳴|◉〻◉)
ファンタジー
長年レストランの下働きとして働いてきた本宝治洋一(30)は突如として現れた新オーナーの物言いにより、職を失った。 身寄りのない洋一は、飲み仲間の藤本要から「一緒にダンチューバーとして組まないか?」と誘われ、配信チャンネル【ダンジョン美食倶楽部】の料理担当兼荷物持ちを任される。 配信で明るみになる、洋一の隠された技能。 素材こそ低級モンスター、調味料も安物なのにその卓越した技術は見る者を虜にし、出来上がった料理はなんとも空腹感を促した。偶然居合わせた探索者に振る舞ったりしていくうちに【ダンジョン美食倶楽部】の名前は徐々に売れていく。 一方で洋一を追放したレストランは、SSSSランク探索者の轟美玲から「味が落ちた」と一蹴され、徐々に落ちぶれていった。 ※カクヨム様で先行公開中! ※2024年3月21で第一部完!

食いつなぎ探索者〜隠れてた【捕食】スキルが悪さして気付いたらエロスキルを獲得していたけど、純愛主義主の俺は抗います。

四季 訪
ファンタジー
【第一章完結】十年前に突如として現れたダンジョン。 そしてそれを生業とする探索者。 しかしダンジョンの魔物も探索者もギルドも全てがろくでもない! 失職を機に探索者へと転職した主人公、本堂幸隆がそんな気に食わない奴らをぶん殴って分からせる! こいつ新人の癖にやたらと強いぞ!? 美人な相棒、男装麗人、オタクに優しいギャルにロリっ娘に○○っ娘!? 色々とでたらめな幸隆が、勇名も悪名も掻き立てて、悪意蔓延るダンジョンへと殴り込む! え?食ったものが悪すぎて生えてきたのがエロスキル!? 純愛主義を掲げる幸隆は自分のエロスキルに抗いながら仲間と共にダンジョン深層を目指していく! 本堂 幸隆26歳。 純愛主義を引っ提げて渡る世間を鬼と行く。 エロスキルは1章後半になります。 日間ランキング掲載 週刊ランキング掲載 なろう、カクヨムにも掲載しております。

処理中です...