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中級冒険者の章

第99 ギルの悩み

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【緊急クエスト:マジカルバイアグーラと感度3000倍チェリーをゲットせよ!】



 皮被りなイケメンエルフのギルから伝えられた緊急クエストは意味不明だった。もしかしたら自動翻訳のミスかもしれないな。

「えっと、マジカルバイアグーラと感度3000倍チェリーって聞こえたんですけど……ボクの聞き間違えですか?」

「いやそれで間違いない。性獣様は森の恵みを下さる有り難い御方、ユウタならきっと伝える事が出来るはずだ。頼む、性獣様に森の恵みへ案内して頂きたいのだ!」

「……あ、はい」

 このイケメンエルフがドッキリを仕掛けている可能性は否定出来ないが、その真剣な眼差しは嘘に思えなかった。でもマジカルバイアグーラとか感度3000倍チェリーとか、どう考えてもエッチ系なアイテムだよね。

 ハローバイブの袋で遊んでいるウサ吉を見た。イケメンエルフの話ではボクの言葉はウサ吉に伝わるらしい。そう言えばウサ吉はボクの呼び掛けに応えるけど、イケメンエルフの言葉を無視しているな。

「ギルはウサ吉にお願い出来ないんですか? 聖獣だし、エルフだったら会話くらい出来そうだけど」

「ああ、お前のような子供ならそれも可能だろうが、残念ながら今は古代エルフに適合する子供が居なくてな、お前のような子供が居てくれて助かったぞユウタ」

「……んん?」

 ギルの話を要約すると、ウサ吉に言葉を伝えるには子供じゃないとダメという縛りがあるらしい。でもおかしいぞ、ボクは成人男性です。しかも非童貞のね!

 はは~ん、さてはエルフ基準で20歳は子供っていうオチだな。物語でも良くあるよね、エルフは200歳で成人とかそんな感じの設定。

「ふふ、ギルはおかしな事を言いますね。これでもボク、立派な成人男性なんですよ? それに毎日彼女とエッチしてるんです」

「な、なんだと!? ユウタが成人男性……だと?」

 顎が外れそうなくらい口を開けて驚くイケメンエルフさん。童顔なボクがイチャラブエッチをしていてビックリしたのだろう。それに毎日エッチしているっていうのは本当です。七海さんは最近おねショタエッチがお気に召しております。何故かTシャツ短パンに着替えさせられたボクが近所に住む七海お姉ちゃんにエッチを教えて貰うというシチュエーションプレイですよ。制服姿の七海お姉ちゃんが『ユウ君今日も来てくれたんだ。じゃあおねーちゃんとエッチなお勉強しよっか』って言ってイチャラブエッチのスタートです。甘やかされるエッチは大好物なユウタなのでした。

「つまり……あれか、ユウタは成人男性だが性獣様と心を通わせることが出来る……そういう事なのだな?」

「もう、さっきからそう言ってるじゃないですかー。ウサ吉と心を通わせることが出来るピュアなハートを持っているんですよー」

「スマン、こんな事は初めてでな。性獣様に気持ちを伝えるには条件がある。一般的に賢さというステータスが一桁である事が条件と言われているのだ。大抵の子供はすぐに賢さのステータスが一桁を超えてしまうからな、ユウタのような大人は貴重なのだ。だが……賢さが一桁か」

「ガーン……!」

 ギルから衝撃の事実を伝えられてしまった。

 賢さのステータスというのが何なのかイマイチ理解出来ないが、勉強が出来る出来ないを示す数値じゃないというのは理解出来る。だってボク、現役の大学生ですから! だけどさ、エルフの子供にも劣る賢さって何なのだろう……。

 以前、七海さんにボクのステータスについて相談した事がある。








――アルバイトが終わり、お土産にプリンを買って帰った時の事である。


『ただいま帰りましたー! えへへ、七海さんの大好きなプリン買ってきましたよ~』

『おかえりユウ君、プリンありがとう』

 お家に帰ったら手洗いうがいをして、七海さんの胸に飛び込んでギュッとするのがルールになりました。おっぱいをクンカクンカしちゃいますよー。

 この日も一生懸命バイトして来ました。ダンジョンからアイテムを持って帰れるのでお金に困ってないけど、働かないとヒモって言われそうなのでしっかりとバイトしてます。

 プリンを仲良く食べながら最近の冒険について話していた時、この美人な七海さんの彼氏にふさわしい男になるためには魅力以外のステータスを上げた方がいいんじゃないかと思い、相談してみることにしたのだ。

 これまでの人生を運だけで乗り切って来ただけのショタに七海さんのような美女の相手は相応しいのだろうか。インテリなイケメンやお金持ちのイケメンがお似合いなんじゃないかなと不安になった。せっかくレベルアップという恩恵が得られるのだ、七海さんに見合う男になりたかった。

『次のレベルアップからは賢さに全振りしてみようかと思うんです。ボクってちょっとインテリ系だと思いますし、極めて見るのがいいかなーって。どう思いますか?』

 だから聞いてみた。今からでも七海さんに相応しい男になるため、魅力以外のステータスを上げたらどうかなって。特に賢さね! ムキムキマッチョはギルマスみたいだから遠慮しておきます。

 そうしたら七海さんは笑顔でこんな事を言って来たのだ。

『ユウ君は今のままがいいと思う。だって、賢さのステータスを上げたら今のような純粋な気持ちが無くなっちゃうかもしれないよ? それにユウ君はもっと魅力を伸ばすべきだと思うなぁ』

『純粋な気持ち……ですか?』

 七海さんの言う賢さと純粋な気持ちの関係が理解出来ないのは賢さが低いからだろうか……?

 頭を捻って考えていたら七海さんが何故か服を脱ぎ出した。セーターを脱ぎ捨てブラを外し、プルンと大きなお胸を見せてくれました。唖然とするボクをよそにツンツンなお胸を持ち上げて強調している。そしてスプーンでプリンを掬い、ツンツンなおっぱいの上に乗っけてしまったのだ。これがかの有名なおっぱいプリンか!

『賢さを上げちゃったらこういう事は出来なくなっちゃうんだよ? ほら、ユウ君の好きなおっぱいプリンだよ~』

 プルンと揺れるおっぱいにプリンを乗せた贅沢な一品。まさに男の夢を詰め込んだと言っても過言ではないが……。

『くっ……でもでも、おっぱいプリンと賢さは関係ないと思いますー!』

『そっか、ユウ君が要らないなら自分で食べちゃお……あんっ』

 ぷっくりと膨らんだおっぱいの先端を自分でペロペロしてプリンを食べちゃいました。これ見よがしにチュパチュパしている。ずるいぞー!

『あーっ! それはボクが食べるんですー!』

『ああんっ、ユウ君落ち着いて、おっぱいもプリンもいっぱいあるから、ねっ?』

 そこからの記憶は定かではない。おっぱいプリンを満足するまで味わったのは覚えているけどね。

 つまり何が言いたいかと言うと、賢さを上げるとおっぱいプリンを味わえなくなってしまうのだ。そういう事ですよね、七海さん?








 何でこんな回想したんだっけ? 賢さの低いボクは思い出せなかった。そうだ、エルフの子供より賢さが低いって言われたんだった。プンスコ!

 ボクの賢さが低いのは今更だ。この数値で今まで不自由なく生きて来たのだ。エルフの子供より低いとか忘れよう。だってエルフってゲームでも魔法使い系のキャラだったりするもんね。生まれ持って賢さが高い種族に違いない。

 今はクエストを進めるのだ。

「ねぇウサ吉、マジカルバイアグーラと感度3000倍チェリーが欲しいんだけど、どこにあるか知ってる?」

「キュキュ? キューン!!」

 ボクの言葉が通じたのか、後ろ脚で器用に立ち上がったウサ吉さんが誇らしげに頷いた。どうやら知っているらしい。

 そしてウサ吉が案内してくれたのは……ハローバイブの袋だった。

「キュ!」

「ええっ、もしかしてあの毒キノコの事なの!?」

 袋から取り出した怪しげな毒々しいキノコをギルに見せた。

「お、おおお!! これは正しくマジカルバイアグーラだ!」

 ギルが嬉しそうにキノコを見つめている。まるで高級なマツタケをゲットしたみたいだった。でもそれ、怪しい色をした毒キノコですよ?

「そのキノコが凄いんですか? そう言えばさっき言ってましたね、妻を倒すって」

 もしかして毒殺ですか……?

「ああ、俺の妻は性欲が強いのだ……。それに情けない事に俺は早漏でな、妻を満足させてやることが出来ないのだ……」

「ギルぅ……」

 ギルの悲痛な告白はボクの心にズキューンと刺さった。イケメンエルフで皮被りで早漏という情けない男だけど、ボクは彼の事を笑えなかった。だってボクもイケメンだし、恥ずかしがり屋な愛棒さんは早漏だからね!

「古代エルフの男は普通のエルフと違い、性欲が乏しいという事は無い。何だったら毎日子作りをする事だって可能なのだ。だけどな、防御力は紙装甲なのだ」

「分かる、分かるよギル! ボクも敏感だからね」

 古代エルフと普通のエルフっていう違いが分からないが今はいいだろう。

 もしかしたらボクが古代エルフの森に導かれたのはギルに会うためだったのかもしれない。この情けない早漏野郎のクエストを達成し、彼の自信を取り戻すためにボクはここへ来たのだ。ちなみに、ボクは同じ早漏だけどルナ様とトレーニングで強くなる予定なので心配無用です。あと、ボクを早漏ってイジメて来るのはビアンカちゃんです。七海さんとはイチャラブエッチばかりなのでご安心下さい。

「このマジカルバイアグーラは強力な精力剤になるのだ。これさえあればどんな男だろうと一晩中戦える強い戦士になれる。そしてもう一つのアイテム……」

「感度3000倍チェリー……ですね?」

「ああ。あれを食べたら感度が3000倍になる。コッソリと妻に食べさせて今度は俺が倒すんだ!」

「ギル……!!」

 イケメンのくせにクズな発言をする彼の事は嫌いになれなかった。きっと彼はお嫁さんを満足させてあげたいのだ。ボクはその気持ちが良く分かるぞ。男たるもの、女性をアヘアヘにするのは義務だよな!

 だけど少し違和感を覚えた。ギルは妻を倒すと言っていた。普通なら満足させてあげたいとか言うと思う……。

 そんなボクの疑問が顔に出ていたのだろう、ギルが教えてくれました。

「妻は俺を悶えさせるのが大好きでな、言葉責めや寸止めといったプレイばかりなのだ。昨日なんて騎乗位セックスをしたまま時計を持ち出し、『動かないであげるから、このまま何秒持つかチャレンジするわよ』と言って俺の弄んだ……。妻はテクニックも凄いのだ。動かないでもウネウネと自在に動き俺のキノコを刺激する。悔しい、悔しいけど感じてしまうのだ!! だが俺は男として妻をイカせたい、ビクンビクンと体を震わせ絶頂を味合わせたい、もうらめぇって言わせたいんだ! ユウタには分かるまい……この俺の気持ちが……」

「……っ!!」

 シリアスな場面だけど、エッチな本でしか見た事のない『悔しい、でも感じちゃう! ビクンビクン』というセリフをイケメンエルフの口から聞いた時は噴き出してしまいそうになったが頑張って耐えました。セーフ。

 悔しそうに体を震わせるギルは少し泣いていた。ああ、そうか。ギルもボクと同じ悔しい思いをしていたのだ……!

「だから俺は性獣様を頼る事にした。言葉は通じないだろうけど、お願いしてみようと思ったのだ。そしてマジカルバイアグーラでドーピングし、妻を感度3000倍にして一晩中悶えさせてやろうとな!! ははっ、笑うなら笑え……最低な男だってな……」

 彼の悲痛な胸の内を知った。

 ギルの話は痛いほど分かった。ボクだって似たようなところはある。七海さんはスローペースなイチャラブエッチを好むからそこまでじゃないけど、ビアンカちゃんは容赦なくボクをイジメて楽しんでくるのだ。『あはっ、おにーちゃん出ちゃう? ピュッピュしちゃうのぉ? え~、はやーい♡』とかメスガキっぽい感じで言われるとちょっとキュンとするのだ。なあ、愛棒?

 ボクと同じ悩みを持つギルは仲間だと思った。いや、親友だな。彼のためにボクが出来る事なら何だってしてあげたい、力になってあげたい、そう思ったのだ。

「ギルの悩みはボクの悩みだよ。だってボク達、ズッ友でしょ?」

「ユウタっ!!!」

 美しい花が咲き誇る花畑の中で男と抱き合うのはちょっと気持ち悪いけど、これはそういうんじゃなくて友情なのです。誤解しないでくださいね。でもギルはいい匂いがします。

 こうなったら何が何でも感度3000倍チェリーをゲットするしかないな!

「頼むぞウサ吉、ギルのために感度3000倍チェリーを探してくれっ!!」

「キュ……」

 アホなボク達を見たウサ吉が不満そうな声を上げた。少年漫画のような展開だし、そこは空気読んで元気に頷くところだろう? 

 やはりウサ吉は賢さの低い獣なのだとボクは思った。
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